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特集:第74回全日本大学バスケ選手権

「颯太さんのために」 王座奪還を期す東海大、優勝6度の土壌に育つ深い絆

タフなショットを決めた東海大の元田(左から2人目)を出迎える仲間たち(すべて撮影・小俣勇貴)

第74回全日本大学バスケ選手権 男子決勝トーナメント準々決勝

12月9日@ 国立代々木競技場 第二体育館(東京)
東海大学 70ー65 中央大学

あの人のために、勝ちたいーー。

東海大学男子バスケットボール部シーガルスのインカレでの戦いぶりからは、そんな利他の心を感じる。

引き締まった好ゲームとなった中央大学との一戦。5月の関東大学選手権で敗れた相手に、シーガルスのメンバーたちが守備の強度を落とすことはなかった。

2点差に追い上げられた最終盤、ハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア(2年、福岡第一)が相手コートでボールを奪ってそのまま得点。「後ろの4人でも、相手の5人を守ることがある。そういう信頼があるから、ギャンブルだけど、思い切って前にボールを取りに行けた」。その後もみなが相手に体を当ててことごとくリバウンドを取り、接戦を勝ち切った。

【陸川章監督コラム】流れ変えたある選手の姿勢 東海大バスケ部の成長(朝日新聞デジタル)
最終盤、相手を突き放すゴールを決め、ガッツポーズをする東海大のハーパー・ジャン・ローレンス・ジュニア

チームを離れても支え合える仲間がいる

自分たちの目標のためだけに戦っていたわけではない。

主将の松崎裕樹(4年、福岡第一)の頭には、一つ上の先輩の存在があった。

現在、B1千葉ジェッツの大倉颯太だ。昨年のインカレで右ひざの大けがから戻ってきたシーガルスの元大黒柱は、この12月、レバンガ北海道との一戦で今度は左ひざに大けがを負ってしまった。

面倒見がよく、後輩への助言を欠かさなかった。「僕自身、彼に選手として何個も引き上げてもらった」と松崎は振り返る。最近も卒業後の進路の相談に乗ってもらっていた。だから、大倉のけがの一報をツイッターで見つけた時はショックだった。でも、リーダーとしてすぐ目の前の戦いに気持ちを切り替えた。

「颯太が前十字靱帯(じんたい)断裂のけがから復帰して、(昨年の)インカレに戻ってきてくれて。その舞台で勝ち切れなかったことは彼自身、悔しかったと思う。その思いを背負って、僕らが今年優勝することで、今度のけがからも復活する活力になってもらえれば。個人的にはそう思っています」

試合後、中央大の選手たちと健闘をたたえあう東海大の松崎

「いい伝統」となったフラットな関係性

高校、大学と同じ進路を歩んできた元田大陽(3年、北陸学院)にとっても、大倉は大切な人間だ。

「高校からずっと一緒で、颯太さんは自分のメンターみたいな存在です。バスケットでも私生活でも本当に頼りになる。今もほぼ、毎日連絡を取っています」

高校を卒業した後も、試合や練習の動画を見て、丁寧に助言をくれた。元田が東海大に進学することを決めたのも、大倉が声をかけてくれたから。バスケットが大好きで、舞台が変わっても一緒に戦った仲間のことをいつも気にかけてくれる人だから。

「僕だけじゃない。本当に色々な人に対して、颯太さんはそういうことをやっているんです」

高校時代から大倉と同じ進路を歩んできた元田

松崎は、一つ上の尊敬する先輩のことを「颯太」と自然に呼ぶ。東海大で濃密な時間をともに過ごした河村勇輝(横浜ビー・コルセアーズ)もそうだ。

年齢の垣根なく、何でも話し合える。そんなフラットな関係がインカレ優勝6度のシーガルスの土壌にある。

松崎は言う。

「先輩、後輩(の厳しい上下関係は)は自分たちにはない。コート内外でいつでもコミュニケーションをとれて、聞きたいことを聞ける環境を、僕は1年生のころから作ってもらったし、自分も4年生としてそうしたい。そうやって、いい伝統が受け継がれていくんだと思う」

けがをした仲間を思い、戦う。王座奪還を期すシーガルスの強さの一つに、人間同士の途切れることのない深い絆がある。

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