5連覇狙う関西学院大学「4TD、完封で日本一に」 18日、早稲田と甲子園ボウル
アメリカンフットボール全日本大学選手権決勝・甲子園ボウル
12月18日@阪神甲子園球場
関西学院大(関西) vs 早稲田大(関東)
アメフトの学生日本一を決める甲子園ボウルが12月18日にキックオフを迎える。7年連続の出場で大会最多タイの5連覇を狙う関西学院大ファイターズと、3年ぶり7度目の出場で悲願の初優勝を目指す早稲田大ビッグベアーズの対戦。15日は関学の大村和輝監督(51)と5人の選手が阪神甲子園球場内で記者会見に臨んだ。その後、選手たちはフィールドに出て、芝の感触を確かめながら練習した。
大村監督「チャンスで点が取れるか」
寒さには弱い大村監督は完全防備のまま記者会見の会場にやってきた。甲子園ボウルの勝敗を分けるポイントについて「チャンスでちゃんと点が取れるかどうかじゃないですか」と話した。ゴール前でチャンスをもらいながら攻めあぐねた関西学生リーグ最終戦の立命館大学戦を念頭に置いた言葉だ。「ちゃんとプレーを理解して遂行すれば、点が取れるように考えてある。要するにちゃんとやろうということです」。相手の印象については「キープレーヤーは特にいない。全員でやってるから、崩れそうで崩れない。オフェンスはラインがしっかりしてて、RBはキレというより強い走りをする。しっかりタックルできるかどうかが大事になってくるでしょうね」と話した。
シーズン終盤の大事な戦いで思い通りにプレーできていないQB鎌田陽大(3年、追手門学院)が頭を丸めたことについては「僕が『やれ』言うたんちゃいますよ」と報道陣を笑わせ、「前とはたたずまいがずいぶん変わった。地に足がついてきた感じがする。QB、WRはいいプレーのできる準備ができてきてます」と前向きに語った。鎌田の心の動きについては、こう推測した。「星野が夏ごろから本格的に練習を始めて、調子がいいのも分かってくる。それをプレッシャーに感じて、がむしゃらにやるんじゃなく、『うまいことやらなあかん』と思ってパフォーマンスが狂ってきた。やっと本人がきちんと自分に向き合ったから、ちょっと落ち着いてきた」
甲子園ボウルに勝てば、4年生は学生相手の公式戦では1年のときにリーグ戦の立命戦に負けた1敗だけで終わる。大村監督は「よく踏ん張れてるなと思います」と語った。「負けたあとに勝とうと思うのは簡単なんです。やり返そうと思えば簡単にモチベーションが高くなる。でも勝ち続ける中で、ある程度高いレベルの練習をやり続けるのは難しい。4年生の頑張りのおかげで、チームとしてギリギリ踏ん張れてると思います」
主将のOL占部「どうしたいねん」と問い続ける
主将でOLの占部雄軌(4年、関西学院)は「自分たちのやりたいことがまったくできてない試合が続いてて、『このまま終わって誰が納得いくねん』『どうしたいねん』とチームに問い続けて、最後の1週間に入ってます」と話した。オフェンスは準備してきたプレーを通して4TD。ディフェンスは完封。これが早大戦で「やりたい」フットボールだ。
高校までラグビーに没頭し、大学からアメフトに転向した占部。OLとしての試合出場が難しい中、大村監督に「キャプテンやってみたら?」と寝耳に水の打診を受けて主将となった。「いまどき占部ほど感情を表に出せるヤツはいない」と監督に見込まれ、引き受けてここまでやってきた。占部は「苦しい部分も結構あったんですけど、それよりチームがちょっとずつでも成長していくことが何よりもうれしかったですし、こうやって甲子園に来られたことがすごくうれしく思います」と振り返った。
副将のWR糸川「終わった瞬間の思いが集大成」
入学してすぐからずっと試合に出てきた副将のWR糸川幹人(4年、箕面自由学園)にとっても、これが学生ラストゲームだ。「いろんな寄り道もしたと思うんですけど、自分らの代のときに甲子園ボウルで日本一になるってところを思い描いて入学したので、まあいろんなことがあったんですけど、最後の形としては、いま一番いい形で迎えられてると思います。監督やコーチにもいろんなことを言ってきたんですけど、最後の甲子園ボウルが終わった瞬間の思いが、この4年間の集大成だと思います」と、早口ながら少しだけ感慨深げに話した。
昨年から一緒にやってきたQB鎌田がここへ来て苦しんでいる。「鎌田にいろいろ背負わせてしまってるのは僕らのせいなんですけど、あいつもそれなりに覚悟を持ってやってきた今シーズンだと思います。あいつが出ることがあったら、全力でやってもらって、そのケツは僕らでふきます」と語った。
3年の鎌田と1年の星野、高め合うQB
そのQB鎌田は甲子園ボウル出場が決まったあと、「関学4回生WR三銃士」の異名を取る糸川、梅津一馬(佼成学園)、河原林佑太(関西学院)にお願いして、バリカンで頭を刈ってもらった。このタイミングで頭を丸めたことについて「ボウズにしたら、外から見たら『覚悟が決まってるな』と簡単に見えると思うんですけど、僕自身、ボウズにするのが嫌とかいうことじゃなくて、内面から変わっていきたいと思っていたので、ボウズっていうのは最終手段というか。自分の中でボウズがいまの自分の状況を変えるためには最善の方法と感じたのでやりました」と説明した。
QBには4年生がおらず、自分が背負うべき責任が大きくなることは分かっていた。しかしその大きな責任とうまく向き合えず、ミスをしたときの気持ちの切り替えもうまくできなかったのが、いまの状況につながったと考えている。「もう向き合えるようになってきたので、最高のオフェンスをして、きっちりパス、ランとも通して、『やっぱり関学やな』と思われる試合がしたいです。4回生には最高のレシーバーがそろってるのに、迷惑をかけてきました。調子を落としたときも支えてくれたのが4回生なので、しっかりパスを通して、先輩たちが活躍できるようにしたいと思います」と語った。
立命戦に先発出場した1年生QBの星野秀太(足立学園)は「甲子園ボウルはずっとあこがれてきて、たくさんお客さんも入ってくれると思うので、楽しんでプレーしたいです」と満面の笑みで話した。自分の強みについては「何があっても動じないメンタルとプレーが崩れたあとのスクランブル」と即答。「カッコつけてプレーせず、いつも通り丁寧にプレーして日本一になりたいと思います」と語った。悩める先輩の鎌田について問われると、「鎌田さんの悩みはほんとに僕も分かります。鎌田さんからスクランブルについての相談を受けるし、僕はパスについて聞きますし、切磋琢磨してやってきました。このチームでできる最後の試合なので、4回生のみなさんと一緒に、そしてQBとして鎌田さんと2人で頑張っていきたいです」と話した。
DLトゥロター「1対1で亀井さんに勝つ」
好調の関学ディフェンスを引っ張る存在がDLトゥロターショーン礼(3年、関西学院)だ。「おそらく向こうのベストラインであるキャプテンの亀井(理陽)選手とやることになるので、1対1でしっかり勝ってランを止めるのが僕の役割になると思います。力が強いので、1回つかまると動きを止められてしまう。しっかり自分から攻めたプレーをするのが大事になってくるとおもいます」と話した。関西学生リーグの最優秀選手に選ばれたことについては「DLが選ばれるとは思ってなかったので、正直ビックリしました」と話した。昨年まではけがで苦しみ、今シーズンも先発出場はリーグ4戦目から。「割のいいMVPですねと」問われ、「最後に追い上げた感じです」と笑った。
規定により、甲子園ボウルで勝てば、関西MVPのトゥロターが年間最優秀選手(チャック・ミルズ杯)となる。「リーグ戦が始まったころは考えもしなかったんですけど、チャンスがあるってことで、しっかり活躍してチームとして勝って、チャック・ミルズ杯も取れたらいいなと思います」。甲子園ボウルの思い出については2018年、高2のときに観戦した試合で、関学のDL三笠大輔(現・早大コーチ)が早稲田のパスをインターセプトしたプレーを挙げた。「DLがビンゴしたのが衝撃的で、僕も狙っていきたいです」と不敵に笑った。