陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

三冠目指す駒澤大「優勝しか見ていない」 強固にまとまった大八木弘明監督と選手たち

「学生駅伝三冠」を目標に戦ってきた駒澤大学の選手たち(すべて提供・駒澤大学)

「学生駅伝三冠」を目標に掲げ、今季戦ってきた駒澤大学。ここまで出雲駅伝、全日本大学駅伝で優勝し、三冠に王手をかけた。三冠を達成すれば駒澤大史上初。箱根駅伝まで半月ほどとなった15日、大八木弘明監督と選手たちがオンラインで取材に応じた。

選手たちから「勝ちたい」「三冠したい」

大八木監督は箱根駅伝に向けての意気込みとして、「4月に4年生が『三冠を目指したい』と言ってきましたので、私もそういう気持ちで今年1年やらなきゃいけないなという思いでやってきました。今年は去年以上にスピード力、持久力、すべてにおいてレベルアップしました。今年は箱根駅伝をしっかり勝って、三冠目指して頑張っていきたいので、応援をよろしくお願いできればと思います」と力強く話した。

昨年は主力にけが人も何名かおり、不安がある状態で箱根を迎えていた。しかし今年は違う。「選手たちがいい練習もしてくれているので。今年の方が去年に比べて準備もしっかりできています」。優勝するためには、やはり往路優勝できるかどうかが鍵となると大八木監督は話す。「往路を勝たないと楽な展開になりませんから。3区ぐらいからはトップに立ちたいですね」

選手たちから「勝ちたい」「三冠したい」と言われたことは、大八木監督にとっても大きかった。「選手たちから、勝たなきゃいけないという気持ちにさせられました」。選手たちの思いに応えるために、昨年以上にレベルを上げなければいけないという思いがあった。10000mの上位10人の平均タイムは、エントリー21チームのうちでトップ。前回はスタミナが足りない部分もあったという反省から、夏に持久走をしっかりと取り入れるなど、スタミナ強化にも取り組んだ。「勝たせるための工夫をいろんな部分で考えながらやってきたから、今があるのかなと思います」とこれまでの準備、秋の駅伝の結果を経て監督自身も手応えを感じていることを伺わせた。

集団で走る駒澤大学の選手たち

主将・山野 最後はあこがれの5区を希望

今年、主将としてチームを引っ張ってきた山野力(4年、宇部鴻城)。1月に新チームがスタートした時に、上級生がしっかりとチームを引っ張っていこうと話し合ったという。昨年は学年間のコミュニケーションが少なかったと感じたため、3、4年生から下級生に対して積極的にコミュニケーションを取るように務めた。「今までの駒澤にはない、仲のいいチームづくりができてるのかなと思います」と話す。

勝つためにはなにが必要だと思いますか? と問われると、「どの大学も同じような練習をしてきていると思うし、同じように調子のいい選手、悪い選手がいて、大差ないと思います。その中で差がつくところは気持ちだと思います。優勝したい気持ちが強いチームが勝つと思います」。自分たちは優勝以外は見ていない。しっかり戦っていきたいときっぱりと言い切る。

主将としてチームをひっぱってきた山野

個人としては希望するのは5区。テレビで2代目山の神・柏原竜二(東洋大→富士通)が走っているのを見てあこがれて、陸上の道に進んだという経緯がある。「やはり最後はあこがれの5区を走りたいなと思います」と希望の理由について教えてくれた。

エース田澤、適性のある3区を走りたい

この4年間、駒澤のエースとしてチームの核となってきた田澤廉(4年、青森山田)。最後の箱根では「エースとして他を寄せ付けない走りをしたい」といつもの田澤らしく意気込みを語る。3区で区間新記録を作りたいといい、その理由は「2区より3区の方が適性があると思うから」。2年時、3年時と2区を走り、2年時は区間7位、昨年は区間賞の実績がある。自身は上りがあまり得意ではないという意識があり、権太坂と戸塚中継所手前に急坂のある2区に対しては決していいイメージがあるとは言えない。それよりも下り基調から平坦となる3区の方が、自分の力を発揮できると考えている。

チームの核となってきた田澤

とはいえ、チームのエースとして2区を走ることを求められるのでは? とたずねると、「今年は去年と違って、強い選手がいるので。2区を任せられる選手がいるのではないかと思っているので、今年こそは3区を走らせていただきたいなと思います」。1年の時は3区を走り、区間新記録で区間3位だった。区間新ということは、東京国際大のイェゴン・ヴィンセント(4年、チェビルベルク)が持つ59分25秒の区間記録の更新を狙いますか? と重ねてたずねると「ヴィンセントの記録は……厳しいかなと思うけど」と苦笑し、「でもそれに近づきたいとは思います」と口にした。

リベンジに意欲を見せる鈴木芽吹

前回の箱根駅伝8区で左大腿骨(だいたいこつ)を骨折、区間18位と苦しい走りになった鈴木芽吹(3年、佐久長聖)。「自分の至らなさでチームに迷惑をかけてしまっているので、その借りを返せるような走りをしたいです」と話す。希望区間は2区と4区。2区は1年生の時から走ってみたい区間だったといい、4区は地元が近いことが理由だ。

「気持ちのこもった走りをしたい」と鈴木

鈴木は出雲駅伝のアンカーを走った1週間ほど後に、練習時に右ふくらはぎに違和感を感じた。そこからは練習を控え、治療などを行なった。大事をとって全日本大学駅伝への出場は回避。全日本が終わって1〜2週間してからは練習ができ始めてきて、箱根駅伝に向けた準備も始めたと大八木監督は明かす。「今はもうだいぶ良くなってきたと思います。距離走もインターバルもしていますから、うまく仕上げて試合に間に合えばなというところではあります」と期待。鈴木自身も「気持ちのこもった走りをしたい」とリベンジに燃えている。

ルーキー佐藤圭汰の箱根デビューにも注目

スーパールーキーの佐藤圭汰(1年、洛南)は箱根駅伝デビューにあたり、希望するのは田澤と同じ3区だ。最初からハイペースで突っ込める走りを得意としており、下り基調の3区は佐藤の能力を生かせるコースでもあると考えている。夏合宿は大学に入って距離走の距離が伸び、こなすだけでいっぱいいっぱいだったが、確実にスタミナはついた。スピード練習も以前よりも余裕を持ってこなせるようになり、自身の成長を感じている。

「絶対に負けない」ルーキー佐藤

出雲駅伝では2区区間賞、全日本大学駅伝では区間トップと1秒差での区間2位。意識しているのは洛南高校の先輩・三浦龍司(順天堂大3年)だ。「高校の時から同じような練習をしていて、レベルが違うなと感じていました。今季、トラックでは負けてるけど駅伝では勝っているので、次も絶対に負けないぞと意識してやっています」。世界で活躍する先輩の姿は、佐藤にとって大いに刺激になっている。「同じような練習もやってきたし、三浦さんができるんだったら自分も絶対できるんだと思っています」とさらなる活躍を誓う。

「やるべきことはやってきましたので、とにかく『勝つ』という気持ちを持つこと。あとは体調管理やけがに対して慎重になって、そのあたりがクリアできたら三冠も近づくと思います」と大八木監督。監督も選手たちも優勝を見据えて、強い気持ちで箱根駅伝に臨む。

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