陸上・駅伝

特集:第99回箱根駅伝

ヴィンセント、鈴木芽吹の復調は? 箱根駅伝を前に「監督トークバトル」で探り合い

出走が注目される東京国際大のヴィンセント(左)と駒澤大の鈴木芽吹(撮影・朝日新聞社)

12月10日に第99回箱根駅伝のチームエントリーと記者発表会があり、その後には恒例の「監督トークバトル」がオンラインで開催された。前回大会で5位以内に入った青山学院大学、順天堂大学、駒澤大学、東洋大学、東京国際大学の5監督が参加した。

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青山学院大・原監督「ピース大作戦」

トークバトルの冒頭ではまず、各監督が今大会への意気込みを語った。

箱根連覇がかかる青山学院大。原晋監督は出雲駅伝の「パチパチ大作戦」、全日本大学駅伝の「プライド大作戦」に続き、今大会は「ピース大作戦」を掲げた。「コロナまだま収束しておりません。ロシアウクライナ問題もまだまだ収束しておりません。平和だからこそスポーツも箱根駅伝もできます。平和である以上、Vを目指します。『ピース大作戦』で頑張っていきたいと思います」とピースサインをしながら宣言した。

順天堂大の長門俊介監督は「前回大会準優勝で、狙うところは一つしかないと思っています」と優勝狙いを宣言。監督自身は箱根駅伝で4年連続で出走、4年時には11回目の総合優勝に貢献し、その後は頂点に立てていない。「そろそろ私自身、最後の優勝メンバーを卒業できたら」と加えた。

出雲駅伝、全日本大学駅伝の二冠を達成している駒澤大。大八木弘明監督は「今年の目標は『三冠』と選手たちから言ってきた。私もそういう気持ちにさせられました。4年生が中心に頑張って、それが若い選手たちにもいい刺激になったなという感じがします」とコメントした。

「ピース大作戦」を掲げ、カメラに向かってVサインをする青山学院大の原晋監督(撮影・井上翔太)

前回4位の東洋大・酒井俊幸監督は「前回大会の経験者が多く、あきらめない走りを目指したい」と意気込みを語った。エースの松山和希(3年、学法石川)がチームエントリーされていないことに話が及ぶと、「出雲、全日本とエース抜きでここまでやってきている。そういうときこそチーム力が問われています」。前回5位の東京国際大・大志田秀次監督は「4年生6人は昨年も走っているので、経験という面ではいい」。箱根で2区と3区の区間記録を持ちながら、今季は出雲にも全日本にも出場していないイェゴン・ヴィンセント(4年、チェビルベレク)については「なかなかお見せすることができていないけど、『やっぱりきたな』という走りを見せられることを期待しています」と話した。

駒澤大・大八木監督「指導者も強気でいかないと」

目標順位を尋ねられると、青山学院大の原監督と駒澤大の大八木監督が、往路、復路、総合の3項目すべてで「優勝」「1位」と明かした。例年、大八木監督は「3位」を目標にすることも多いが、「(3大駅伝)全部取りに行かないと、選手たちに申し訳ないと思います。選手たちが三冠を狙っているので、指導者も強気でいかないとダメでしょう。私としては珍しいんですけど、今回は優勝を狙っていかないといけないと思っています」。この姿勢に原監督は、「大八木さんの顔つやが非常にいいので、負けないように付いていきたいと思います。大八木さんがおっしゃるように、指揮官が強気でいかないと、学生もついてこない。相当自信があるんだなと、ちょっとびびってます」と応えた。

その後は、チームエントリーの話題に進んだ。

まずは東京国際大。下級生の頃から経験している4年生が多くエントリーされ、今回はヴィンセントだけでなく山谷昌也(4年、水城)もエントリーメンバーに戻ってきた。大志田監督は「今年は2年生も多く入ってきたので、(上級生に)絡めるかな」。とはいえ他校が気になるのは、ヴィンセントがどこまで復調しているのかだ。コーディネーター役の上田誠仁・関東学生陸上競技連盟駅伝対策委員長から、この点を問われると、大志田監督は言葉を濁した。

東洋大は前述の通り、松山が外れた。往路は「(他校に)食らいついていきたい」と目標順位を設定しなかった酒井監督は「(前回1区の)児玉(悠輔、4年、東北)と今回は石田(洸介、2年、東農大二)が元気にしているので、彼らをどの区間に起用しようか」。また8月の北海道マラソンで日本選手トップの2位に入った柏優吾(4年、豊川)は「スタミナ系の選手ですので、復路を中心に考えたい」と話した。

今年の「監督トークバトル」もオンラインで行われた(撮影・井上翔太)

鈴木芽吹は「7割」復調 三浦龍司は「1、3区が怖い」

監督同士の掛け合いが見られたのは、またも駒澤大学のチームエントリーが発表されたときだった。「下級生も力はありますし、1年生にも使ってみたい選手が多い」と大八木監督が語った直後、出雲駅伝でアンカーを務めて復帰を印象づけたが、全日本は走らなかった鈴木芽吹(3年、佐久長聖)の話題になった。

原監督が「何割ぐらい戻ってきているんですか?」と、大八木監督に尋ねたところ「7割ぐらいかな」。原監督は「怖いなあ」と警戒していた。

その青山学院大は、4年生の顔ぶれが充実したチームエントリーとなった。主将の宮坂大器(4年、埼玉栄)が外れたものの、近藤幸太郎(豊川工)、岸本大紀(三条)、中村唯翔(流通経済大柏)、目片将大(須磨学園)、横田俊吾(学法石川)らがエントリー。原監督は「4年生が4年間、しっかりと成長してくれました。岸本が1年生のときに2区で快走したのが、大きかった世代なのかなと思います。近藤も大きな故障なく4年間やってくれたことで、成長してくれている。目片、横田も出雲、全日本と力を付けているので、今年は4年生を中心としたチーム」

最上級生の充実ぶりでは、順天堂大も負けていない。長門監督は「往路優勝」を掲げ、平駿介(4年、白石)、伊豫田達弥(4年、舟入)、四釜峻佑(4年、山形中央)といった前回も往路を経験したメンバーたちを今年も並べそうだ。加えて注目は、3000m障害で昨年の東京オリンピック入賞するなど、世界の舞台で結果を残している三浦龍司(3年、洛南)の配置。長門監督が「皆さん、どこ(に置かれるの)が嫌ですかね?」と投げかけると、原監督は「下り基調の3区は怖いですね」、大八木監督は「1区で抜けられてしまうと、要注意」。長門監督は「参考にしたいと思います」と応じた。

三浦龍司がどの区間を走るのか、監督たちも気になっている(撮影・長島一浩)

前回、大会記録を大幅に更新した青山学院大が連覇を果たすか。今年の出雲、全日本を制した駒澤が「三冠」を達成するのか。はたまたそれを止める大学は。第99回大会も、注目度の高いレースとなりそうだ。

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