アメフト

特集:第77回甲子園ボウル

関西学院大が最多タイの甲子園ボウル5連覇、先発奪われたQB鎌田陽大が流れを変えた

関学の選手たちにとって、ようやく心から喜べるゲームになった(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボール全日本大学選手権決勝・甲子園ボウル

12月18日@阪神甲子園球場
関西学院大(関西) 34-17 早稲田大(関東)

アメリカンフットボールの大学日本一を決める第77回甲子園ボウルが12月18日、阪神甲子園球場で1万6千人の観衆を集めて開催され、関西学院大学ファイターズ(関西)が34-17で早稲田大学ビッグベアーズ(関東)を下して5年連続33度目の優勝を飾った。5連覇は連続優勝の最多タイ記録。3年ぶり7度目の出場だった早稲田の初優勝はならなかった。甲子園ボウルの最優秀選手には三つのタッチダウン(TD)を決めた関学RB前島仁(3年、関西学院)、敢闘選手には早稲田のDL山田琳太郎(4年、県立川和)、年間最優秀選手にあたるミルズ杯には関学のDLトゥロターショーン礼(3年、関西学院)が選ばれた。

この日も二つのQBサックを決めた関学DLトゥロター

ディフェンスが光ったリーグ戦、最後にオフェンス陣が意地

関学の先発QBは立命館大学戦と同じく、1年生の星野秀太(足立学園)。12月4日の西南学院大戦で信頼を取り戻せなかった鎌田陽大(3年、追手門学院)はベンチスタートになった。前半はともにオフェンスにミスが出て攻めきれず、フィールドゴール(FG)だけの得点で、関学が6-3とリードして折り返した。立命館大戦で24ydと32ydのFGに失敗した関学のK福井柊羽(4年、関西学院)は、急きょOBで名キッカーだった大西史恭さんにキックを見てもらった。その後も動画を送ってはアドバイスしてもらい、復調してきた。

関学は後半の2シリーズ目から、QBを星野から鎌田にチェンジ。鎌田は短いパスを決め、相手の反則にも助けられてゴール前へ。RB伊丹翔栄(2年、追手門学院)が4ydを持ち込み、この日初のTDを奪った。次のシリーズも鎌田がオフェンスを率い、途中星野を入れてリズムを変えながら前進。最後はRB前島が4ydを持ち込んでTD。このプレーでは右から左へプルアウトしてきたTE安藤柊太(2年、関西学院)とOL森永大為(2年、関西学院)のナイスブロックがあった。関学が20-3とリードを広げた。

甲子園ボウル最優秀選手に輝いた前島。父の純さんは3年のときにミルズ杯。少し近づけた
意地を見せた鎌田。「ボウズにしてよかった」と報道陣を笑わせた

ここから早稲田が意地を見せる。QB國元孝凱(3年、早大学院)とQB石原勇志(3年、足立学園)が、エースWR佐久間優毅(4年、早稲田実業)へ2本のパスを決めてゴール前へ。RB花宮圭一郎(3年、足立学園)の5ydTDランにつながった。試合残り8分弱で20-10。
しかし関学オフェンスが止まらない。「4年生のレシーバーを活躍させたい」と話していた鎌田がWR糸川幹人(4年、箕面自由学園)へ21ydのパスを通し、鎌田からのショベルパスを受けたTE小林陸(4年、大産大附)が相手のタックルを飛んでかわしてゴール前へ。最後はRB前島が仕上げた。残り5分を切って27-10。早稲田は再びWR佐久間へ長いパスを決め、RB花宮のランでTD。残り57秒で27-17とした。

早稲田のオンサイドキックが失敗に終わり、関学はこれまで出番のなかった4年生を投入。主将の占部雄軌(4年、関西学院)も今シーズン初めて本職のOLで出場。関学側のサイドラインは大いに盛り上がった。2プレー目に前島の30ydTDランが飛び出し、残り38秒で34-17に。関学は続くディフェンスにも控えの4年生を大量投入し、歓喜の瞬間を迎えた。

関西学院大・大村和輝監督
「後半だけ見れば、いいゲームでした。ディフェンスは前半も踏ん張ってくれたんですけどね。オフェンスは相手のディフェンスにアジャストできなかった。凝ったプレーをせずに、球離れをよくしてパスを投げれば通ると分かったので、後半から鎌田を入れました。西南学院との試合で全然ダメでしたけど、そのあとしっかり自分と向き合って、地に足をつけてプレーできるようになってきた。今日は自信を持って送り出しました。5連覇と言われますけど、ほんとに気にしてないんです。その年のチームで勝つことだけ考えてますから。来年に向けては、オフェンスは一からやり直しです。OLの細かいところの積み上げが落ちてきてるので。あとはDBの育成にしっかり目を向けてやっていかないと」

「後半だけなら満足できるゲーム」と関学の大村監督

関西学院大・占部雄軌主将
「久々にOLで出られて、ほんとにうれしかったです。出る前は同期にも後輩にもバシバシたたかれました。ビデオを見てみないと分かりませんけど、僕がクッと相手を入れ込んだおかげでタッチダウンまでいったと思います。オフェンスとして目標にしていた4TDを取れて日本一になって、ようやく腹から笑えました。この2カ月は夜もなかなか寝られないし、朝も早い時間に目が覚めて『何かやらんと』ってなってました。高校時代はラグビー部のキャプテンで試合も出てて、結構プライドが高い方でした。でもこの1年でそんなのは全部なくなった。地べたにはいつくばってもチームを勝たせようと。ほんまに泥臭くやりきれたと思ってます。もうアメフトはやらないです。来週末にラグビーの練習に呼ばれてるんですけど、たぶん行かないんじゃないかと思います」

早稲田大・高岡勝監督

二つのタッチダウンを決めた早稲田のRB花宮

「15分クオーターでスタミナを削られて、第4クオーターは厳しい戦いになりました。選手たちは最後まで諦めずにやってくれたんで、点差どうこうでなく、この3年間の取り組みが出てたなと。最後インターセプトされちゃいましたけど、ほめてあげたいと思います。後半から鎌田君が出てくるんだろうなとは思ってました。パスラッシュが届かなくて決められてしまったのはありますけど、それより前島君のインサイドのランが要所で出ていたので、それを最後まで止められなかったってことだと思います。関学のフロントは大きくて、なかなかこじ開けられなかったですね。LBのスピードも関東とは違うし、DBも若いメンバーだけど寄りが思った以上に速くて、非常に鍛えられてるなと。学生スポーツなので毎年選手は代わっていくんですけども、先輩たちが築いた文化をしっかりとつなげていって、また一からやり直したいと思います」

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