アメフト

パナソニックRB立川玄明 立命館大時代も知らない日本一、ライスボウルで見るために

今季パナソニックエースRBの一角として頭角を現した立川は、存在感のある体格と走りが持ち味(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの社会人選手権決勝・ライスボウルが1月3日にある。今年は昨年と同じ富士通とパナソニックが対戦することになった。前回大会で富士通に敗れ、雪辱に燃える選手がパナソニックにいる。RBの立川玄明(たつかわ・ひろあき、立命館大学)だ。立川はルーキーイヤーだった昨年は出場機会がほとんどなかったが、今季はチームのランを支える中核選手として成長。パワフルなランでチームの勝利に貢献してきた。ライスボウルは必勝を誓い、試合に臨む。

同じチーム内にいるライバル

昨年とは違う。10月9日のアサヒビールシルバースター戦では、雨の中タックラーを6人弾き飛ばしてエンドゾーンまで駆け抜けた。その姿がツイッターで「バケモノRB」として話題になった。立川はパナソニックインパルスのエースRBとして東京ドームでも暴れ回り、「チームを勝たせる」と意気込む。

立命館大4年生のときは主将を務めた。全日本選手権への出場をかけた関西決勝、関西学院大学戦では141yd1タッチダウン(TD)を獲得する激走を見せたが、疲労が蓄積したゲーム終盤の勝負所で自分のランを出せず、2点差で逆転負けを喫した。思うような結果を得られなかったが、大柄で勢いよく進む立川のランは学生界ではずっと脅威だった。

2020年の関学戦。終盤に疲労から足がつってしまい、勝負所でボールをキャリーできなかったことが心残りだ

「高校でも大学でも日本一になれなかったので」。立川は早くから社会人でも競技を続けることを決めていた。いくつかのチームから声がかかり、出身である大阪を本拠にするパナソニックへ。初年度はほぼ出番がなかった。チームはライスボウルに出場したが、自身は「キッキングでちょろっと出ただけ」で、RBとして試合に出ることができなかった。

「高校からアメフトをしてきて、去年ははじめての日本一をかけた戦いでした。ライスボウルで富士通に負けてチームとして落ち込んだ雰囲気はありましたが、自分は試合にほとんど出てなかったので、悔しいとか以前にチームにもっと貢献できるようにならんとアカンなと。フィールドにRBとして立てなかったことが、とにかく悔しかったです」

自分の力のなさが一番心に残っていて、今年は自分がやるという気持ちで1年間取り組んできた。「でもまだビクター(ミッチェル・ビクタージャモー)には勝ててないというのが正直なところです。彼のプレーを見ていてすごいと思うこともあるが、そう思ってしまうことが悔しいです」。ビクターは2020年3月、アメリカテキサス州ダラスで開催されたTSL選抜対日本代表でもRBとして活躍。立川は「彼と同じじゃアカンので、それ以上に活躍することを意識しています」と負けん気を口にする。

今年はビクターと2人で試合に出るようになって、勉強になる部分も刺激になる部分も、両方あるという。「彼が良いプレーをするとうれしい気持ちもあるけど、やっぱり個人としては悔しい。素直に喜べない部分がある。ただ、そこを認めてしまったら1選手として終わりだと思っているんで、そこは2人で切磋琢磨していきたい」と立川。プレーについてビクターに言いたいことは言うし、彼も言ってくれる。他の選手も含めてRBパート全体として良い雰囲気がある。「スカウトの1プレーであっても『俺が行く、行かせろ』みたいな感じがあります」。日々熾烈(しれつ)なポジション争いがある。

RBとして出場機会がなかった昨季からうってかわり、エース格へ。ライスボウル出場を決め笑顔が弾ける

エース格の今季、求められる成長

12月11日にあった準決勝のオービックシーガルズ戦。第3クオーター序盤に敵陣24yd、3rdダウン10のシチュエーションで立川のランプレーがコールされた。その時点のスコアは10-10、勝ち越すためにダウンを取り切らないといけないいけないシーンで、立川にかけられた信頼が伺われる。このプレーについて荒木監督は、「本人は『ここでそのプレー?』と思ったと思うんですが、自信を持ってプレーコールした」と言う。結果は12ydゲインでダウンを更新し、ビクターの勝ち越しTDにつなげた。立川は「あれはビクターやったらTD行ってたと思うんで、まだまだ実力不足やなと思います」と振り返った。

3rdダウン10で12ydのゲイン。「タックルされてからのエフォートが良い」と荒木監督も太鼓判

今季から主力RBとしてビクターとイーブンローテーションを組んでいる立川は、チームのエース格と目されている。一皮剥(む)けた感のある立川について荒木監督は、評価しながらもさらなる成長を求めている。

「立川はもっとできると思っている。今年もある程度活躍してくれたけど、こんなもんじゃない。もうひとつふたつ新たな武器を身につければ、ビクターを上回るRBになれると思っている」。新たな武器としては瞬間的な加速力を上げた。100kg近い体重にこの武器が加われば、守備にとって非常に悩ましい選手になるに違いない。自信をつけた立川の、さらなるバージョンアップに期待が掛かる。

12月11日のオービック戦は、ゲームリーダーを任された。試合後は観客への挨拶を担当

「なんか起こしてくれるワクワク感」を目指す

「社会人になって色々勉強して、上手い人もいっぱいいるので吸収できることもある。今までと同じようにやってても試合に出られないので、変えるとこは変えて、変化して成長できていると感じています」。学生とは「全然違う」というタックラーとの間合いにもアジャストし、トレーニングを重ねながらフィットするためにフィジカルとスキルを磨いてきた。「もまれて、もまれて、という感じですね」とこの1年を振り返る。

そして「自分でチームの流れを変えられる選手になりたい。(ランが)出た、出てないも大事だが、プレーメーカーとして『なんか起こしてくれるワクワク感』みたいなのが欲しい」と目指すRB像についてアツく語る。

守備を引きずりydを稼ぐ。瞬間的な加速力が加われば、さらに無双するだろう

立川はライスボウルを見据えてこう話す。「日本一の気持ちがどんな気分で、どんな景色なのかまだわからない。単純にワクワクしますね」。高校と大学でも日本一を目指してきたが、その舞台には立てなかった。12月11日に開催された関西高校の決勝戦では、母校の大産大附属高が11年ぶりに優勝し、全国決勝・クリスマスボウル出場も決めた。「僕らの頃は負けてしまったんで、うれしいですね」。後輩の活躍にも大いに刺激を受け、自然と笑顔があふれた。

「今年のライスボウルは東京ドームに勝ちにいく。『ライスに行ってOK』というのはまったくなく、今年は勝つ。そこで勝たんと意味がない」

富士通の強力守備を自分のランでこじ開け、エンドゾーンへ。ライスボウルは立川玄明のスーパーなランに注目だ。

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