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千葉の天才中学生ゴルファー香川友「感謝の気持ちは大会で勝つことで表したい」

マスターズ優勝という大きな目標を持つ香川友

香川友(とも)選手は、男子ゴルフ界期待のスーパー中学生だ。14歳にして平均飛距離はプロ並みの280ヤードを誇る。昨年4月、年齢制限がない関西オープン選手権で初日を好スコアで回り、アマチュア最年少予選通過記録更新への期待を集めた。大目標はマスターズで優勝すること。実現に向かって、幼い頃から応援してもらっている地元・千葉に感謝しながら、大好きなゴルフと向き合っている。

小6で最年少優勝、もっと自分を高めたい

小学生の頃から自分よりもレベルが上の選手と一緒に練習をしている。プロともラウンドし、その技を間近で見てきた。父親同士が知り合いの笹生優花プロ(2021年全米女子オープン優勝)と練習を行うこともある。目線は高く、明治安田生命「地元アスリート応援プログラム」に応募したのも、自分をもっと高めたいと思ったからだ。知人を通じてプログラムを知り、応募を決めたという。

「応援してもらえたら、お金がかかる遠征試合の費用に使って、アメリカの大会にも参加したいです。海外の選手は、日本の選手とはプレーが違うので、すごく勉強になります」

香川選手は、ただひたすらに自分の成長を追い求めている。小学6年生だった2020年のATPゴルフツアーでは、プロと同スコアの5アンダー67でホールアウトし、最年少優勝を飾った。昨年は年齢が問われない関西オープン選手権に出場。惜しくも予選落ちしてしまったが、初日には予選突破にぐっと近づき、「アマチュアの最年少予選通過記録更新か」と、話題をさらった。

現在の最大飛距離は350ヤードで、平均飛距離もプロとそん色ない280ヤード。焼き肉を食べに行けば500gを平らげる育ち盛りの夢は大きく、マスターズ優勝を大目標に掲げる。

その意欲の源になっているのが、“ゴルフが大好き”という気持ちだ。「遠くへ飛ばすことも好きですし、ウェッジを使って短い距離を刻むのも、グリーン回りでの寄せも好きです」と、ゴルフの奥深さにも魅了されている様子だ。

中学生にして貫禄さえ感じる

ゴルフ以外にサーフィンやスケートボードも

生まれ育った千葉県野田市は、ゴルフ場も多く、練習環境に恵まれている。「ご厚意で小学生は回れないコースでも、プレーさせてもらっていました」と話す父・正宏さんは、市内でゴルフの練習場を営んでいる。

自身の記憶はないものの、1歳からこの練習場でクラブを握り、お客さんに混じりながら、ゴルフに親しんできた。正宏さんが熱心に仕込んだのではなく、遊びの延長で上達していったという。6歳の時は、2004年のマスターズで、メジャー大会初優勝を果たしたフィル・ミケルソン選手のDVDに夢中に。後にゴルフの本場・アメリカに連れて行ってもらい、そのショットを目の前でも見ている。フィル・ミケルソンはいまも憧れのプレーヤーだ。

小学低学年の頃は、「よくお客さんに、どういう打ち方をしたらいいのか、教えてもらっていました」という。それが小学高学年になり、日本での最年少賞金王に輝いた石川遼選手の元キャディーや、マスターズ優勝を果たした松山英樹選手のキャディーからアドバイスを受ける機会を得るようになると、「僕が打ち方を聞かれることもありました」

小さい頃からゴルフクラブに接してきたので、14歳ながら、用具に対する知識が豊富で、意識も高い。繊細なショット感覚が求められるウェッジは、自分で機械を使って削り、穴を開けているという。

学校から帰ると、長い時は夕方5時から4時間もクラブを握り、500球ほど打つことも。今年も元日からコースを回った。ただ、ゴルフ一辺倒ではなく、釣り、サーフィン、スケートボードと、様々な「趣味」を楽しむ一面も。これは正宏さんの考えでもある。「ゴルフだけになると、どうしても視野が狭くなりますからね。いろいろな世界を見て、いろいろな人がいると知ってほしいのです」

一方で、他競技の練習をゴルフの向上につなげている。正宏さんが親方と一緒にゴルフをしている縁で、昨年末も大相撲の立浪部屋の稽古に参加。力士たちと一緒に、足腰を鍛えるトレーニングをさせてもらったという。現在、身長が171cmで体重は97kg。下半身もどっしりしており、ぶれないショットを生む土台になっている。

正宏さんの方針もあり、香川選手は自分で考えることを大事にしている。「コースで練習する時は、練習場でやっていることを試しながら、打ち方のバリエーションを増やしています」。これは試合で起きうる様々な状況に対応するためだという。

明治安田生命が開催したゴルフ大会に参加した

応援してくれる地元・千葉の人たちに恩返しを

千葉県最北端の市である野田市は、自然が豊かなところだ。「大会から帰ってくると空気がおいしいと感じます」。地理的には利根川、江戸川、そして利根運河と、河川で三方が囲まれている。それぞれの堤防にはサイクリングロードもあり、幼い頃から江戸川沿いで、心地よい風を感じながら、自転車を走らせていた。「川でつながっている(約30km離れた)東京の葛飾まで、父とペダルをこいだこともあります」。地元にはフィールドアスレチックも楽しめる広大な清水公園もあり、そこでもよく遊んだという。

野田市は古くからしょうゆ造りが盛んな地としても知られる。現在もしょうゆ会社が数社あり、大きなしょうゆ工場がシンボル的な存在になっている。企業の施設でしょうゆの作り方を見学したこともある。

注目されるようになってからは「『頑張ってね』と声をかけてもらうことが増えました」と笑顔を見せる香川選手。プログラムを通じて地元に貢献したい、という思いもある。昨春には、地元・千葉で明治安田生命柏支社が開催したゴルフ大会でゲストを務めた。参加者のために各組の1番ホールでドライバーショットを披露。豪快なスイングから空に吸い込まれそうな弾道を放つと、「さすが、スーパー中学生」と喝采を浴びた。

「うれしかったです。あらためて地元の方に応援してもらっていると感じました。感謝の気持ちは大会で勝つことで表したいと思っています」

「TOMO KAGAWA」が世界で活躍する日は遠くないかもしれない

将来的には自分を育ててくれた地元への恩返しとして、幅広い層のプレーヤーが参加できる大会を開きたいと考えている。「小さい頃からお世話になっているゴルフコースの方や、ジュニア年代の選手やプロの選手、あるいは父の練習場に来てくれるお客さんにも参加してほしいです」

今年は5大会くらいに出場する予定だという。2、3年後にツアーで優勝するための、足がかりとなる成績を残すつもりだ。「友」という名前は、世界のどこに行っても発音しやすいと、グローバルな視点からつけられた。「TOMO」が世界のメジャーな舞台で活躍するのもそう遠くないかもしれない。

【profile】
かがわ・とも/2008年7月31日生まれ。千葉県出身。1歳の時から父・正宏氏が経営している関宿ゴルフセンターでクラブを握る。小学低学年で全国大会優勝を経験すると、小学6年時にはオープントーナメントのアマチュア選手権で史上最年少の予選通過を果たす。中学2年で出場した2022年の関西オープンゴルフ選手権はアマ予選をトップ通過しプレーした。憧れはフィル・ミケルソン。将来の夢はマスターズ優勝。趣味は海釣り、サーフィン、スケートボード。身長171cm/体重97kg。

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