クライミング

世界めざす石井未来、地元・愛知の応援が原動力「東郷町の魅力が注目される機会に」

スポーツクライミングで世界をめざす石井未来

スポーツクライミングで世界をめざす石井未来選手にとって、何より大きな原動力となっているのは、生まれ育った大好きな街に、応援してくれるたくさんの人がいることだ。「明治安田生命・地元アスリート応援プログラム2022」の募集を知ったときにも迷うことなく応募。「自分が活躍することで、愛知県東郷町の魅力が注目される機会が増えたらうれしい」とほほえむ。プログラム参加以降の心境の変化、そして地元への思いを語ってくれた。

競技に興味を持ってもらえるように

スポーツクライミングの石井未来選手は、地元・愛知県にある練習拠点「クライミングジム LUNA」で世界をめざし練習に励んでいる。

「スポーツクライミングは金銭的自己負担が大きい競技ですが、プログラムに参加したことで、昨年は例年以上に充実した練習ができました」

開口一番、石井選手が笑顔で報告してくれたのは、プログラムに参加したことによって練習量を増やせたこと。「2022年はリードクライミングの日本代表になることができたのですが、愛知県内にはリードの壁がある練習施設がないので、滋賀や静岡など県外のジムでの練習が必須でした。そのため、金銭的な面でも多くの方にサポートしていただけたことはとてもありがたかったし、おかげで2021年と比べて練習の質も上げることができました」

加えて、行く先々で地元の人たちから声をかけてもらえるようになったことも、ポジティブな変化だった。

「A-portや新聞に記事が出てから、『見たよ』『がんばっているね』と声をかけてもらえることが多くなりました。これまで周りの人たちには、スポーツクライミングの競技者であることは話したことがなかったので、『こんなに応援してくれる人がいたんだ!』と気づくきっかけにもなったし、私の活躍を通してスポーツクライミングに興味を持ってもらえるんだとわかってうれしかったです」

応援してくれた人たちに感謝の気持ちを語った

子どもたちが夢を持つきっかけを

日ごろから、子どもたちが夢や目標を持つきっかけを与えたい思いが強いという石井選手。プログラム参加をきっかけに人とのつながりが強まったなかでも、とりわけ子どもたちと触れ合う機会が増えたことが、自分にとっての大きなメリットとなっていると明かす。

「登れるようになって喜んでいる姿を見ることができたらうれしいのはもちろん、どう伝えたら伝わりやすいかを考えることによって、感覚的にしか説明できなかったことを言語化できるようになったことは、自分にとって大きな収穫でした」。また、言語化しようとすることは自分の動きを客観視することにもつながるため、結果的に自分自身のスキルの研鑽(けんさん)にも結び付いていくという。

「実は、2022年は思うような成績が出せていない1年ではあったのですが、リードクライミングでは日本代表になれたし、まだまだ伸びしろがあると自負しています。2023年はリードクライミングでもボルダリングでも日本代表の座を勝ち取りたいし、そのために一つひとつの大会ごとに目標を決めて、しっかりクリアしていきたいです」

子どもたちが夢や目標を持つきっかけを与えたいという思いがある

地元とのつながり、ありがたさを実感

両方の部門での日本代表選出という目標は、井俣憲治・東郷町長を表敬訪問した際にも宣言。「私が世界で活躍する選手になることで、東郷町の子どもたちに夢を持ってもらいたいです」と語る石井選手に対して、井俣町長は、2019年に茨城県で開催された「いきいき茨城ゆめ国体」に出場した当時の石井選手の様子を振り返りながら、「がんばっている姿を見守っているよ」と声をかけてくれたという。

また、同じく2022年に愛知県東海市で開催された明治安田生命主催のウォーキングイベントでは、イベント開始前に参加者らに簡単なストレッチを教えた。

「みなさんがいきいきと身体を動かしている様子を目の当たりにすることで私まで元気をもらえましたし、普段のウォーミングアップを紹介することで役に立てたこともうれしかったです。表敬訪問でもイベントでも同様に、地元の人たちとのつながりを感じることができて、『私も今まで以上に地元に貢献したい』『私ががんばることで地元がもっと元気になってくれたらいいな』という気持ちが高まりました」と笑顔で話した。

地元・愛知県東郷町にも大切な思いも持っている

大好きな東郷町の魅力を発信

今後もこうしたイベントには積極的に参加していきたいという石井選手。主に地元の人が参加するものはもちろん、県外の人も多く集う場で、東郷町のよさを発信していくつもりだ。「東郷町はすごく栄えているわけでもないんですけど、すごく田舎でもないことから、“ちょうど級タウン東郷町”というキャッチコピーがついているんです。名古屋にも関西にも近いし、高速道路へのアクセスもいい一方、豊かな自然も残されていて、街全体がコンパクト。すごく暮らしやすい街だし、個人的にお気に入りの場所もたくさんあります」

なかでも心のよりどころとなっているのが、長い歴史を持つ春日神社。大会前の祈願、大会後のお礼参りを欠かさないだけでなく、年始のあいさつに訪れる場所も決まってここだ。

また、3代続く「石川農園」の直売所は、毎年イチジクの季節が訪れるたびに買い物に行くお気に入りのスポット。「新鮮なイチジクはとてもおいしいので、毎年時期がくるのが楽しみなんです。午前中には売り切れてしまうことが多いので、東郷町を訪れる機会があれば、ぜひ早い時間に足を運んでみてくださいね」とアピールする。

リードとボルダリングの両種目で更なる高みへ

最後に今後の目標について聞くと、目を輝かせて語った。「世界でも活躍できるような選手になることです。リードもボルダリングもコンスタントに続けて練習していきたいですし、両方の種目で戦えるようになっていきたいです」

世界へ羽ばたく石井選手の姿に感化された子どもたちが、たくさんの夢を花開かせていく日も近いかもしれない。

【profile】
いしい・みく/2000年10月11日生まれ。愛知県東郷町出身。母親の誘いで家族でスポーツクライミングにチャレンジして以降、競技に魅了されて大会に出場するように。16歳からは、「全日本クライミングユース選手権ボルダリング競技大会2016」の11位をはじめ上位に入賞し続け、2021年には「第16回ボルダリングジャパンカップ」で6位に入賞。2022年はリードクライミング日本代表に選出され、今年はさらにボルダリングでも代表入りを宣言。

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