法政大学の松永伶が学生ハーフ3位 スローガン「脱兎の勢い」を体現した新エース
第26回日本学生ハーフマラソン選手権大会兼FISUワールドユニバーシティゲームズ(成都)日本代表選手選考競技会
3月12日@陸上自衛隊立川駐屯地滑走路、国営昭和記念公園内及びその周辺道路
1位 篠原倖太朗(駒澤大2年)1時間2分16秒
2位 吉田礼志(中央学院大2年)1時間2分29秒
3位 松永伶(法政大3年)1時間2分43秒
4位 並木寧音(東京農業大3年)1時間2分48秒
5位 小暮栄輝(創価大2年)1時間2分55秒
6位 武田和馬(法政大2年)1時間2分57秒
7位 野沢悠真(創価大1年)1時間2分58秒
8位 村松敬哲(東京国際大3年)1時間2分59秒
3月12日に開催された日本学生ハーフマラソンで、法政大学の松永伶(3年、専大松戸)が3位に入り、7月から中国・成都で開催予定のワールドユニバーシティゲームズ(ユニバ)の内定をつかんだ。試合後、松永は充実した表情で取材に答えた。
ユニバ内定を狙って見事達成
松永はレース前から、ユニバ代表内定を獲得できる3位以内に目標を定めていた。最前列からスタートした松永は積極的に集団を引っ張り、先頭へ。東京農業大学の並木寧音(3年、東京実業)とともに積極的なレースを展開した。しかし15kmの給水ポイントで仕掛けた駒澤大学の篠原倖太朗(2年、富里)、並木、中央学院大の吉田礼志(2年、拓大紅陵)らに遅れを取り、一時7〜8位に後退してしまう。
「給水が外側にあったので少し離されてしまい、焦りはあったんですけど、まだ距離もあったので20km付近までそのままのペースで追いつけたら追いつきたいと思っていました」とレース展開を振り返った松永。昨年11月に初ハーフながら4位になった上尾ハーフ、ラストスパート勝負で区間3位となった箱根駅伝1区の経験を踏まえ、冷静に判断することができたという。17km付近では坪田智夫監督から「諦めるな!」という檄(げき)も飛んだ。ラスト1kmを切り、得意のラストスパートで勝負。前を行く並木をかわし、3位でのゴールとなった。
2年前の学生ハーフマラソンでは、2学年上の鎌田航生(現・ヤクルト)が優勝し、ユニバの内定をつかんだものの、新型コロナウイルスの影響で大会は延期となり、代表の内定も解除されてしまった。「それでも鎌田さんは箱根駅伝やハーフマラソンで結果を残していて、すごくあこがれを持っていたので、こうやって初めて日本代表として日本を飛び立てる機会を与えていただいてとてもうれしいです」と松永は笑顔を見せた。
課題のスタミナを克服しレベルアップ
初の出走で好結果を残した箱根駅伝のあと、秋や冬の疲労が残ったままとなり、1月後半は不調になってしまったという。2月5日の丸亀ハーフマラソンにエントリーしていたが、慢性的な疲労が残ることを懸念して欠場。チームが出場した2月12日の富士宮駅伝の5.5kmでレースに復帰し、そこからこの学生ハーフに照準を合わせて練習を積み、見事に目標を達成した。
ユニバは自身にとって初めての日本代表、海外レースとなる。「日本代表になりたい」という気持ちはずっとあったという松永。だが、目標にはしていたが「自分が本当に行ける」とは心の中では思っていなかったといい、「イメージはまだ湧いてないです」と話す。6月のレースの前までは、5000mや10000mのトラックレースにも出場し、結果を残していきたいと展望を語る。
松永は高校2年時に実力者がひしめく中で千葉県高校総体男子5000m優勝、南関東インターハイでも7位と実績を残したが、その後はオーバートレーニングによって体調を崩してしまった。法政大入学後も丸1年はレースに出られずだったが、徐々に復帰。昨年5月の関東インカレ5000mでは、順位こそ6位だったものの大きく飛び出したラストスパートで会場を沸かせた。
特に転機となったのは、昨年の夏合宿だという。1000km以上の距離を踏み、課題としていたスタミナ面の強化につながったと自信を持てた。「それが秋冬の結果にもつながって、こうやって学生ハーフにつながっているのかなと思います」
ウサギのように飛び出し、勢いよく
今回のレースでは、チームメートの武田和馬(2年、一関学院)が6位に入った。レースの1〜2週間前の5000mのポイント練習では松永より武田のほうが調子がよかったといい、「これは学生ハーフも結構いい結果が出せるんじゃないかなって思ってたんですけど、予想以上に良くて、びっくりしているしうれしいです」と後輩の躍進に笑顔を見せた。箱根駅伝では宗像直輝(3年、東農大二)が8区で区間賞を獲得するなど、チーム内競争もこれまで以上に激しくなってきている。だがそれは松永の望むところでもある。
23年度のチームスローガンである「脱兎の勢い」は松永のアイデアも採り入れられた。うさぎ年であること、法政大のマスコットキャラがうさぎの「エコぴょん」であることもかけて、このスローガンになったという。「箱根駅伝からその勢いをつけられることができたので、こういう競争環境ができるのはすごくいいことだと思います」
鎌田、そして一つ上の内田隼太(4年、法政二)にあこがれている松永は、次の箱根駅伝では2区を走りたいと強く考えており、今回もレースを通して箱根駅伝2区でどれだけ勝負できるかを知りたかったという。「だから今回の経験はすごく大きかったと思います」と話す。
松永を抑え、表彰台の上2人となった篠原、吉田も千葉県出身。「魔境と呼ばれている千葉県で、すごくレベルが高いんですけど、だからこそ自分も成長できたんだと思います」。千葉の3人で世界との勝負に臨むことになる。最終学年として最高のスタートを切った松永。新たな経験のチャンスも得て、今後のさらなる飛躍を期待したい。