陸上・駅伝

特集:第34回出雲駅伝

法政大が出雲駅伝で過去最高タイの7位 内田隼太が「100点」の好走、いざ箱根路へ

法政大のアンカー稲毛崇斗は7位でゴールした(すべて撮影・藤井みさ)

第34回 出雲全日本大学選抜駅伝競走

10月10日@島根・出雲大社~出雲ドームの6区間45.1km
優勝  駒澤大学    2時間08分32秒
2位 國學院大學   2時間09分24秒
3位 中央大学    2時間09分48秒
4位 青山学院大学    2時間10分18秒
5位 順天堂大学   2時間10分50秒
6位 創価大学    2時間10分52秒
7位 法政大学    2時間11分54秒
8位 東京国際大学  2時間11分59秒

10月10日にあった第34回出雲駅伝で、法政大学はチームの最高順位と並ぶ7位でフィニッシュした。過去には2001年、2004年、2006年の3度、7位をマーク。3年ぶりの出場で、16年ぶりにチーム記録に並んだ。法政大のOBでもある坪田智夫監督は「目標の5位には届かなかったんですけど、十分に合格点を与えられる結果だったのかなと思います」と手応えを口にした。

「試したい」意図が見えた内田の3区起用

西から風速5m程度の強風が予想され、他の大学が、追い風となる前半区間にエース級を配置して序盤のリードを狙っていた中、法政大はひと味違った。「風の影響というのは、ほとんど考えずにオーダーを組みました。気象状況はどうなるか、いつも分からないので」と坪田監督。「試したいという区間と、しっかりつなぐという区間を、自分の中で組み合わせました。それがしっかりとはまったのかと思います」

確かに「試したい」という意図が感じられるエントリーがあった。内田隼太(4年、法政二)を各大学のエース級が集まる3区で起用した。「オーソドックスにいけば、内田は1区だと思うんですけど、それを外して1区を松本(康汰、4年、愛知)にしました。内田に関しては、単独走が初めてでしたので」。内田は3年生だった昨年の全日本大学駅伝、今年1月の箱根駅伝ともに、1区を務めた選手だ。

内田がエース区間の3区に回り1区は松本が任された

丹所に走り勝ち、堂々の区間4位

実際、法政大が過去最高タイの7位に入れた大きな要因は、内田の好走だった。

中央大学の吉居大和(3年、仙台育英)がスタート直後から飛ばした1区で、法政大の松本はトップから23秒差、区間6位で松永伶(3年、専大松戸)に襷(たすき)をつないだ。松永は、5月に国立競技場であった関東インカレ男子1部5000mの残り2周で、思い切ったスパートを仕掛けられるような、肝の据わった選手だ。だが出雲では、全6区間の中で最も短い5.8kmを任されたものの、区間新記録を打ち立てた駒澤大学・佐藤圭汰らの陰に隠れて不発。追い風に乗って6選手が区間記録を更新する中、自身は区間9位。順位を二つ落としていた。

内田は、創価大学のケニアからの留学生・フィリップ・ムルワ(4年、キテタボーイズ)と同時に襷を受け取った。後ろは4秒差で、昨年優勝の東京国際大学が襷リレー。内田にとっては、同じ神奈川県内の高校を出ている東京国際大の日本人エース・丹所健(4年、湘南工科大附)が追ってくる展開となった。

ムルワはひたすら前を追い、丹所にはすぐさま並ばれた。ただ内田は、丹所に抜かれることはなかった。東京国際大と並走する形で、3km付近で関西学院大学をとらえた。

今年の法政大は、6月の全日本大学駅伝関東地区選考会で、7位までが本戦に出場できる条件の中、14位に沈み、伊勢路出場がかなわなかった。内田はこの状況を踏まえた夏合宿について、「練習は結構余裕を持ちながら、出雲でどう戦うかということを意識しながら取り組めました」。9月の日本インカレもすべて欠場し、出雲だけに照準を合わせてきた。

その狙いが奏功した。前を走る選手が見える距離を保ちながら、じりじりと丹所を引き離す。スパートも決まり、各大学が特にエース級を集めてきた3区の中で、堂々の区間4位だ。

箱根駅伝では内田(中央左)がどの区間を走るのかも注目される

「1月の箱根でも、まだまだの走りだったので、今年初戦の駅伝でしっかりと結果を残せたのは、最後の箱根駅伝にもつながると思います」と本人が言えば、坪田監督も「箱根を考えたときには、内田が1区という選択肢もあります。ただ別の区間ということもありますので、エース級がそろうところで『力試し』という面がありました」。実際の評価点を尋ねると「100点」と即答した。「前が開き始めるところで、ぐっと詰めてくれましたので、すごくいい走りだったと思います」

今後は箱根だけに照準

坪田監督は扇育(おうぎ・はぐみ、4年、松浦)、小泉樹(2年、國學院久我山)と並べた4、5区にも自信を持っていた。「3~5区で、ある程度勝負ができる算段は立てていました。5区までは計算通りに行けたのかなと思います」。強い向かい風を受ける中、扇は区間4位、小泉は区間3位で走りきり、目標とする5位以内も見える位置でアンカー区間に入った。

最終6区で稲毛崇斗(3年、東北)は、創価大学の嶋津雄大(4年、若葉総合)や順天堂大学の四釜峻佑(4年、山形中央)といった実力者に抜かれ、チームの史上最高順位の更新は、今後にお預けとなった。内田は「目標は5番だったので、悔しいところはあるんですけど、前半は上位で戦うことができたので、いい成果が得られたのかなと思っています」と話した。

前述の通り、法政大は全日本大学駅伝出場を逃し、今シーズンの「学生3大駅伝」は今年1月に10位でシード権を獲得した箱根駅伝のみとなる。「今回はすごく収穫のある大会になりました。それでも良かった選手、悪かった選手が出てきていますので、修正して次につなげていきたいと思います」と坪田監督。内田は「箱根駅伝も総合5番を目標にしています」と言った。

箱根予選会、全日本を戦わず、箱根駅伝だけに照準を絞ることができる。これは今回結果を残した出雲駅伝と似た流れなだけに、来年1月の箱根路は他校にとって怖い存在になるかもしれない。

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