野球

高代延博の目 侍ジャパンは打線好調、チームは家族、仲間のために

ヒーローインタビューに答えるラーズ・ヌートバー(撮影・西岡臣)

 侍ジャパンの1次Rは圧勝でした。4試合で計38得点はできすぎでしょう。大谷翔平(エンゼルス)の印象が強烈でしたが、1番打者にヌートバー(カージナルス)を固定できたのが大きい。6安打7得点と役割を果たしました。

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 日系の大リーガーだそうですが、プレースタイルが何とも日本選手らしい。センター中心の打撃で四球も選べる。守備では最後まで諦めない球際の強さがあって、走塁も全力疾走で常に次の塁を狙う。ああいうアグレッシブな姿勢は攻撃陣のリズムを作りますから。

 彼が1番に定着し、大谷の前に出塁率のいい近藤健介(福岡ソフトバンクホークス)を置けた。この1~3番の打順が機能した印象が強かった。

 心配なのは4番の村上宗隆(東京ヤクルトスワローズ)でしょうか。1次Rは打率1割台と本来の打撃とは程遠い姿でした。ただ、1~3番の3人と5番の吉田正尚(レッドソックス)が好調です。状態が上がってくるのをまだ待てると思う。日本の4番なわけですから、栗山英樹監督は簡単に彼を代えてほしくない。

 韓国戦は日本が勝つと思っていましたが、13―4の大差になるとは。第2回大会は日韓戦が5度もあり、決勝戦で3勝2敗にして勝ち越せましたが、本当に苦しめられました。

 驚いたのは韓国の先発・金広鉉は、第2回大会にも出ていた投手。早々にスタミナ切れで日本打線につかまっていました。野手では左翼手の金賢洙も当時からいました。韓国は投手層が薄くなったことと、主力選手の世代交代がうまくいっていない印象を受けました。

 一方で今大会の侍ジャパンの平均年齢は歴代最年少のようです。日韓の実力差は広がりましたが、安心はできません。韓国プロ野球(KBO)は、日本よりも少ない10球団。実力選手は大リーグへの移籍志向が強く、少子化の影響で野球人口も低下しているようです。抱える問題は日本と同じ。対策を講じる必要があることは何ら変わりません。

 いよいよ準々決勝が始まります。一発勝負の決戦を前に投手の栗林良吏(広島東洋カープ)が、腰のコンディション不良でチームを離れたようですね。宮崎での強化合宿から本番まで、寝食をともにしてきた仲間。チームは「家族」のようなものです。

 第2回大会のときも、米国サンディエゴで村田修一(横浜ベイスターズ)が右太ももを痛めて離脱しました。あってはならないことだし、けがをした本人は悔しいと思いますが、逆にチームの結束が強まるケースもある。実際、選手の間で「村田の分まで頑張ろう」という声が聞こえましたから。

 今回も、栗林の離脱や、けがで合流できなかった鈴木誠也(カブス)を思う気持ちが、選手たちの無形の力になればいいですね。

 たかしろ・のぶひろ 2009、13年WBC日本代表内野守備走塁コーチ。日本ハム、広島で主に内野手としてプレー。引退後は中日、阪神などでコーチを務めた。野球評論家を経て、現在は大阪経済大硬式野球部監督。

=朝日新聞デジタル2023年03月15日掲載

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