野球

元侍Jコーチ高代延博 継投で米国打線を2点に抑えた中村の好リード

優勝を喜ぶ侍ジャパンのメンバー(撮影・朝日新聞社)

 21日(日本時間22日)に米フロリダ州のローンデポ・パークで行われたワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の決勝「日本―米国」の最後のシーンは、大会2連覇を達成した14年前と重なりました。

WBC決勝先発、今永昇太の駒大時代 1年春デビュー戦は「ど真ん中に真っすぐ」だけ

 今大会の大谷翔平(エンゼルス)も、当時は日本ハムのダルビッシュ有(現パドレス)も、素晴らしいスライダーで空振り三振に仕留めて試合を締めた。頂点を力で奪い取ったという表現がピッタリの投球でした。

 ポイントは強打の米国をどう封じるかでした。栗山英樹監督は7投手をつぎ込んだ。相手の持つデータが少ないであろうプロ野球の投手を軸にして、目が慣れる前に交代させる策。ベンチのプラン通りの試合展開だったのでは。

 何よりも中村悠平(ヤクルト)のリードです。先発・今永昇太(DeNA)の高めの速球を打者に意識させました。150キロ超の球で目線を上げさせた。今永は本塁打で1点を失いましたが、その後に続いた戸郷翔征(巨人)や高橋宏斗(中日)らのフォークが要所で効いたのも、高めの「残像」が生きたからでしょう。

 村上宗隆(ヤクルト)には準決勝、決勝と連戦だったことが幸いしました。準決勝のサヨナラ打の前のファウルに「感覚的にいいものがあった」と言っていましたね。そのイメージを持って決勝の1打席目に入れた。すごい同点本塁打でした。

 それにしても決勝の岡本和真(巨人)といい、米国のお株を奪うような得点の仕方。準決勝の吉田正尚(レッドソックス)もそうですが、一発で対抗できる選手が増えました。大谷やダルビッシュが会見で言っていましたが、日本代表のレベルは着実に上がっています。米国に少しでも近づけたと思いたい。

 WBC全体のレベルも上がっている。二極化しているようにも思えます。強豪国のパワーとスピードは進化しています。メキシコ代表やイタリア代表のように、新しく力をつけてきた国も出てきました。一方で韓国代表や台湾代表のように、勝ち上がれずに苦しむ国や地域もある。

 来週にはプロ野球が開幕する。選手たちは大変でしょう。一番は時差ボケの解消。投手はWBC球からプロ野球の試合球に戻る難しさもある。手の感覚がいい選手、悪い選手がいますから。終わってから疲れが出たという選手の話も聞いたことがある。

 侍ジャパンのメンバーには感動と感謝ですよ。「野球の素晴らしさを伝えてくれてありがとう!」と言いたい。学生たちを指導していますが、技術面はもちろん、一球一打で参考にさせてもらう部分が多くありました。

 今回の世界一を機会にプロ・アマを問わず野球に興味をもってくれる人が一人でも増えるとありがたいですね。

 たかしろ・のぶひろ 2009、13年WBC日本代表内野守備走塁コーチ。日本ハム、広島で主に内野手としてプレー。引退後は中日、阪神などでコーチを務めた。野球評論家を経て、現在は大阪経済大硬式野球部監督。

=朝日新聞デジタル2023年03月23日掲載

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