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特集:New Leaders2023

青山学院大学・中島大輔 野球人生で初の主将、「自分らしさ」貫き昨秋のリベンジ狙う

打席に入る前、安藤監督と話す新主将の中島(提供・青山学院大学硬式野球部)

1部復帰5シーズン目の今春、青山学院大学は2006年春以来の東都大学リーグ優勝、2005年春以来の大学日本一を狙う。新主将の中島大輔(4年、龍谷大平安)は、俊足・好守に加え、1部リーグ通算3本塁打のパンチ力も併せ持つ左打ちの外野手だ。ドラフト候補としてプロ野球のスカウトからも注目されている。野球人生で初めて主将を務めるが、気負わず、自分らしいキャプテン像を追いかけ、チームを勝利に導きたいと話す。

昨年の悔しさを胸にシーズンへ臨む

青山学院大は昨年春秋と優勝争いをしながら、リーグ後半に失速し優勝を逃した。春は第4週、最終週と4連敗を喫し、日本大学、中央大学との2週にわたるプレーオフ順位決定戦を勝ち抜いて1部残留を決めた。秋は序盤から首位を走ったが、優勝に王手をかけて臨んだ最終週の駒澤大との2回戦、九回裏から逆転サヨナラ負けを喫し、つかみかけていた栄冠を逃した。

「春にプレーオフを経験して、秋にはあと1勝、あと1イニングで優勝というところまできて優勝を逃しました。あんな悔しい経験をしたのは自分たちだけなので、その悔しさは全員が共有し、今年こそリーグ優勝、日本一を狙っていきます」。中島は力強い口調でそう語った。

昨秋に優勝を逃した悔しさをバネに日本一を狙う(撮影・小川誠志)

昨秋のリーグ戦を終え、新チーム始動の際、安藤寧則監督から指名を受けて主将に就任した。小1から硬式野球を始めた中島だが、これまで小、中、高とチームで主将を務めたことはなかった。青学大の現4年生には中野波来(4年、大阪桐蔭)、秋山功太郎(4年、広陵)、佐藤英雄(4年、日大三)、手塚悠(4年、常総学院)と高校時代に主将を経験した選手が4人いる。それでも安藤監督は中島を主将に指名した。安藤監督は「中島は1年生から試合に出場していて、一番経験が多いんです。『悔しかった思い、よかった思い、それらをみんなに伝える義務がある。お前がみんなに伝えて引っ張っていってほしい』という話を中島にしました」とその理由を明かした。

野球人生で初めての主将を務めるチームが、過去12度のリーグ優勝、4度の大学日本一を誇る名門・青山学院大学だ。中島の心には不安もあったが、1学年上の代の主将・山田拓也(現・東芝)が声をかけてくれたという。

「山田さんに、お前はお前らしく引っ張っていくのがいいんじゃないかということを言われて、それで少し気が楽になりました。副主将の中野は大阪桐蔭のキャプテンをやっていた男ですから、強いリーダーシップを持っている。佐藤は捕手陣を、手塚は内野陣を、秋山は投手陣を、僕が言わなくても引っ張ってくれている。彼らに任せられるところは任せて、自分は自分なりのキャプテン像を作っていきたいです」

自分なりのキャプテン像を追い求める(提供・青山学院硬式野球部)

50m5秒台の俊足とパンチ力を兼ねそろえる

中島は龍谷大平安高校3年の春、第91回選抜高校野球大会に出場し、8強進出を果たした。大学では1年春のリーグ戦はコロナ禍の影響で中止になったが、秋からレギュラーとしてリーグ戦に出場し、2部優勝と1部復帰に貢献した(このシーズンはコロナ禍の特例により入れ替え戦を行わず、下部リーグの優勝校が自動昇格した)。

3年生になった昨年は、春のリーグ戦で打率2割9分8厘、1本塁打と大きく成績を上げた。日本大学、中央大学との順位決定戦では4試合で打率4割4分4厘と打ちまくり、第2ラウンドの中央大学戦では七回に同点打、九回に勝ち越し打。2部降格の危機からチームを救う働きを見せた。秋のリーグ戦では2試合連続本塁打などで打線を引っ張り、ベストナインを初受賞した。

プロ入りを目指す中島にとって、この大学4年春は勝負のシーズンになる。本人が特に自信を持っているのは、一塁到達タイムが4秒を切る走力だ。昨年12月に参加した侍ジャパン大学日本代表候補合宿では光電管を使用した50m走のタイム測定が行われ、中島は野手24人のうち3位に入る5秒98をたたき出した。

50m5秒台の俊足が武器の一つだ(提供・青山学院大学硬式野球部)

左打ちで足が速い選手はバットをボールに当ててすぐ一塁へ向かって走り出す、いわゆる「走り打ち」をしてしまう傾向がある。しかし中島はしっかりバットを振り切り、一発を放り込むパンチ力も魅力だ。長打の秘訣(ひけつ)を中島はこう話す。「高校までは自分も走り打ちのタイプだったんですけれど、大学に来て、監督、コーチから『お前はパワーもある。長打もホームランも打てるからしっかり振れ』と言われて。それから自分の中でバッティングが変わりました」

目標は首位打者とベストナイン獲得

昨秋、優勝を目前で逃し、チームは1球の重み、1勝の重みを強く意識して冬場の練習やトレーニングに取り組んできた。ドラフト候補右腕の下村海翔(4年、九州国際大付)、常廣羽也斗(4年、大分舞鶴)が投手陣の軸になる。佐々木泰(3年、県岐阜商)、西川史礁(3年、龍谷大平安)、松本龍哉(2年、盛岡大付)、小田康一郎(2年、中京)ら打線は長打力のある右左の強打者が並び、破壊力はリーグトップクラスだ。その打線に初回から勢いをつけるのが中島の役割。春に向けた気込みを中島はこう語る。

破壊力のある打線に勢いをつける(撮影・小川誠志)

「自分は1番か3番を打つことになると思います。目標は首位打者とベストナインを取ること。うちは投手陣では他チームに負けていませんから、野手陣も負けずに頑張って、打ち勝ちたいですね」

中島が両タイトルを獲得するような活躍をすれば、おのずと優勝も近づいてくるはず。そして、目標としているプロ入りへの道も大きく開けてくるだろう。

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