筑波大学・谷山隼大 目標は福岡堅樹さんと同じ「オリンピックとワールドカップ両方」
2024年、創部100周年を迎える「国立大の雄」筑波大学ラグビー部。昨季は関東大学対抗戦5位ながら、大学選手権で8シーズンぶり5度目となるベスト4に進出。そして今季も4月の東日本大学セブンズで9年ぶり4度目の優勝を飾るなど、調子は上向きだ。そんな筑波大の99代目のキャプテンには、NO8(ナンバーエイト)谷山隼大(4年、福岡)が就任した。
「リーダーシップと協調性」磨くため主将に立候補
2021年シーズン、筑波大は対抗戦で6位に終わり大学選手権に出場することができなかった。だが、昨季は大学選手権で天理大学と東海大学を下して、ベスト4に進んだ。「一つ上の代はかなり危機感を持ってビシバシと厳しさを求めてやっていた。春に培ったコンタクトの部分が根底にあり、その土台があったからこそ最終的にアタックが良くなって伸びることができた」と振り返った。
今季のチーム目標は初の日本一、イコール大学選手権での優勝を掲げた。1月2日の前回大会準決勝で帝京大学に5-71で負けた後の1月下旬、新チームの4年生が集まり、キャプテンを決めるために話し合った。
高校時代までキャプテンの経験がなかった谷山は自ら立候補し、同期に認められた。「今までは自分を成長させることを考えていた。ただ選手としてのレベルアップを考えたら、リーダーシップや協調性は弱みだと思っていたので、(キャプテンになることで)伸ばしていきたい」
嶋崎達也監督は「自分から手を挙げたので、彼らしくやってくれたらいい。奔放な、自由でエネルギーあふれるプレーヤーなので、それを爆発させつつ、いろいろ背負って仲間とともに成長してほしい」と期待を寄せた。副将にはFWの中心選手・LO(ロック)梁川賢吉(4年、尾道)とBKからSH(スクラムハーフ)白栄拓也(4年、高鍋)、そして主務には浦和高校出身のFB(フルバック)髙田賢臣(4年)が選ばれた。
スローガン「VROOM」はバイクの発信音から
キャプテンを決める話し合いの中で、今季は「可能性を示し続ける」という言葉をキーワードに掲げた。
筑波大には全国レベルではない高校や公立校出身者など、一般入部した選手も多く、全員で一緒に練習をしている。谷山は「勝つことによって何を還元できるか。公立高校や強豪高ではない選手たちが日本一を目指す環境は、筑波しかない。可能性を示し続けることで彼らに夢を与えつつ、社会にいい影響を与える存在になりたい」と話した。
ラグビー面では谷山と副将2人が中心となって引っ張り、「可能性を示し続ける」ことによって筑波ラグビーを広める活動は、スポンサー委員でもある主務のFB髙田が担当している。
また今季のスローガンは「VROOM」と決めた。バイクの発進音である「ブルン、ブルン!」のオノマトペだ。昨季のスローガンは「バチバチ」と、いい意味で曖昧(あいまい)な言葉で自分たちで意味づけでき、それを引き継いだ。
「チームをバイクの車体にたとえて、みんなで一つになって進んで行くという意味と、スタートを大事にしつつ、最後の局面でもう1回アクセルを踏んで加速していこうという意味も込めました」と谷山は言う。
大学選手権準決勝の帝京大戦を終えた後、フィジカルの強化はもちろんのこと、筑波大ラグビーの生命線である接点とコンタクトを週に2度の朝練習で集中的に強化した。ディフェンスはしっかり前に出て倒しきるという昨季からの積み上げがあるため、今春はアタックにフォーカスする。
「白栄を中心に、アタックのシステム作りは時間をかけないといけない。基本的には順目順目に相手より動いて、数的有利を作りつつ、オプションをたくさん使って狭いエリアを抜いていきたい」
大学当初はバックス、昨季からNO8へ
谷山は福岡県福津市出身で、4人兄弟の長男。父、伯父、従兄弟もラグビーをしており、福岡では知られたラグビー一家に生まれた。小学1年から自然な流れで、玄海ジュニアラグビースクールで競技を始めた。
当時の憧れはスクールと高校、大学の先輩にあたる元日本代表のWTB福岡堅樹さんだった。ラグビーと同時に小学5、6年のときには相撲にも挑戦し、中学時代は陸上部にも所属。ラグビー以外の競技でも実績を残した。
高校は従兄弟も通っていた福岡高校に進学したが、全国の舞台に立つことはできなかった。それでも国体では東福岡高校の選手が主力の中でメンバー入りし、優勝を経験。さらに高校日本代表にもFL(フランカー)として選出された。
大学は志望していた早稲田大学を2度受験したものの縁がなく、一般入試で筑波大体育専門学群に合格。実技の第1種目がラグビーで、第2種目として陸上を選び、「両方やっていた競技なのでラッキーでしたね」。中学まで二刀流だったことが、ここで生きた。
50mを6秒3で走り、立ち幅跳びは290cmを記録。キックを蹴ることもできるアスリートの谷山は、大学1年時はCTB(センター)で、大学2年時はWTB(ウィング)としてプレーした。そして昨季は、嶋崎監督と相談の上、高校途中までプレーしたFWのNO8に転向した。得意のハイパントキャッチだけでなく「ボールキャリー、タックルにも行けて楽しい!」と喜びを語った。
入院中に「もっとラグビーを続けたい」
来年からリーグワンのチームに進む谷山。NO8は大学までと決めており、その後は再びCTBに戻ってプレーする予定だ。「FWは(身長184cmの自分より)もっと大きな選手が多いし、ハイボール、タックル、フットワークや運動量を考えるとBKの方がいいかな」
谷山は大学2年の春、東京オリンピックに臨む7人制ラグビー日本代表の練習相手として呼ばれ、そこで右肩を負傷してしまい手術した。その入院中に「いろんな道を考えたが、もっとラグビーを続けたい!」と大学卒業後も競技を続ける覚悟を決めた。
目標は憧れの福岡さんと同じく、日本代表として「7人制ラグビーのオリンピックと15人制のワールドカップ両方に出ること」だ。「(目標を)逆算した方がいい」と話す谷山は、大学シーズン終了後はまず2024年のパリオリンピックにチャレンジし、2027年のラグビーワールドカップ出場も視野に入れている。
好きな言葉は「思い立ったら吉日」。春はリハビリをしつつ、体重を93kgから96kgまで増やす予定で、教育実習にも行くという。
最終学年の今季、どんなプレーを見てほしいかと尋ねると、谷山は「ハイパント(キャッチ)は大学で1番になると決めています。また接点でガツガツ行って、一番体を張る選手になりたい」。チームとしては「ここぞという苦しい場面でも、みんなで固まって、集中力を持ってプレーしたい」と意気込んだ。
関東大学ラグビー春季交流大会を経て、夏合宿では対抗戦勢とも練習試合を行い、強化を進める。目指すは、創部初の日本一。谷山は「日本一、対抗戦優勝は大きな目標に感じる部員もいると思うので、一つ一つ勝って積み重ねていきたい」意欲を述べた。