サッカー

特集:うちの大学、ここに注目 2023

ガンバ大阪内定の法政大・今野息吹 パリオリンピック出場をめざす攻撃的サイドバック

法政大の左サイドバックを務める今野(すべて撮影・スポーツ法政新聞会)

サイドバックというポジションにおいて、オーバーラップから正確なクロスをあげるだけという時代は終わりを迎えている。ピッチを縦に5分割し、各レーンに選手がポジションを取る「5レーン理論」が用いられる現代サッカーで、ワイドに開いて攻撃の起点となることや、ハーフレーンに入りパスコースを作る動き、またペナルティエリアに侵入して直接的にゴールに絡む動きが求められている。

そして何よりDFの一角であることには変わりはない。激しい上下運動を90分行い続ける体力や、空中戦の競り合いなど、攻守にわたって高い水準の心技体が求められるポジションだ。

大学3年でつかんだJ1クラブ内定

日本代表にいま、絶対的な選手がいない左サイドバック。だが、そんな現状を打破できるほどの期待感を抱かせる選手が、大学サッカー界に存在する。法政大学の今野息吹(4年、三菱養和SCユース)だ。スピード感あふれるドリブルでの突破にクロスの精度、ポジショニング、足元技術と様々な能力を兼ねそろえる。現代の攻撃的サイドバックだ。

様々な能力を兼ねそろえる「攻撃的サイドバック」だ

179cm、70kgと決して大柄ではないが、屈強なサイドハーフとの肉弾戦に負けない強さもある。サイドバックはゴール前で得点を奪う動きや、自陣ゴール前で決定的なピンチを防ぐポジションではないため、1試合を通じて注目が集まるポジションとは言いがたい。特に法政大では、逆サイドのモヨマルコム強志(4年、東福岡)が強靱(きょうじん)な体と圧倒的な身体能力を生かした大胆なプレーを見せるため、堅実なプレーを見せる今野は、縁の下の力持ちと言える。その今野が日の目を見る、待望の瞬間がやってくる。

昨年8月、J1のガンバ大阪は今野が2024年シーズンから加入することが内定したと発表した。当時は大学3年生ということもあり、異例の早さだった。

ウィングバックでの出場が増え、才能が開花

大学1年時からAチームで、関東リーグのメンバーに入っていた今野。大学屈指の左サイドバックにも、当時は悩みがあったという。「1年時はサイドバックの守備について、しぼりやカバーがよくわかっていなかった」。三菱養和SCユース時代にプレーしていたウィングバックやサイドハーフとの違いに、戸惑いを覚えていたと語る。2年から左サイドバックでスタメン出場を果たしたが、リーグ戦でのスタメンは7試合で、定着にはいたらなかった。3年時にはシステム変更の影響に伴い、今野は左ウィングバックでの出場機会が増えた。起用に応え、前期は10試合に出場。それがガンバ大阪内定につながった。後期は手首のケガの影響もあり3試合に終わったが、最高学年となる今年を見据えていた。

ウィングバックやサイドハーフとの違いに、当初は戸惑いもあった

今年3月、今野にとって予想していなかった出来事が起こった。ドイツとスペインで行われたU-22の国際親善試合に、日本代表メンバーとして選出されたのだ。「今年始まった時の目標としてパリ五輪に出るということを掲げていた」。その目標が大きく近づいた瞬間でもあった。出場時間はわずかながらも、得意とする縦への突破を見せた。人生初の代表招集について尋ねると、「プレー時間がもう少し欲しかった」と率直な感想を残した後に、「自分の出来としては60、70点くらい」と答え、「少ない出場時間の中ではやることはやれたかな」と手応えを語った。

「今までで一番忙しいシーズン」

4月に開幕した関東大学リーグでは、安定したプレーを見せている。4月30日時点でリーグ戦と天皇杯の5試合に出場し、いずれもフル出場。その活躍もあって、4月23~26日に行われたU-22日本代表候補トレーニングキャンプに、関東大学リーグから唯一の左サイドバックとして選出された。

大学、ガンバ大阪、日本代表と三つの環境でプレーする今年について、「忙しさは多少あるんですけど、基本大学リーグをメインで活動して、大学リーグがない週とかにガンバに行ったり、代表に選ばれれば代表に行ったり、という感じなので。今年は今までで一番忙しいシーズンになるかなとは思うんですけど、タフさをつけて今後活躍していけるように頑張っていきたいと思います」と意気込んだ。

チームとして44年ぶりのリーグ優勝、個人では10アシストを目標にプレーしている。自身の左足からゴールと勝利を生み出し、優勝へ。パリオリンピックの切符をつかむため、左サイドを駆け上がるオレンジと青の7番から目が離せない。

関東リーグ制覇には、この左足が欠かせない

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