陸上・駅伝

特集:第102回関東学生陸上競技対校選手権

東農大ルーキー・前田和摩がデビュー戦で好走 箱根駅伝出場のためにチームの力になる

最後まで先頭集団に残り、強さを見せた前田(すべて撮影・藤井みさ)

第102回関東学生陸上競技対校選手権 男子2部5000m決勝

5月14日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

1位 ヴィクター・キムタイ(城西大2年)13分53秒92
2位 スティーブン・ムチーニ(創価大1年)13分54秒85
3位 鶴川正也(青山学院大3年)13分54秒86
4位 前田和摩(東京農業大1年)13分57秒25
5位 青木瑠郁 (國學院大2年)13分59秒41
6位 ラファエル・ロンギサ(拓殖大4年)14分00秒18
7位 安原太陽(駒澤大4年)14分02秒31
8位 ジョセフ・ムイガイ(平成国際大1年)14分03秒51

5月14日の関東インカレ最終日、男子2部5000mで東京農業大学のルーキー・前田和摩(報徳学園)が4位に入った。日本勢では青山学院大学の鶴川正也(3年、九州学院)に次ぐ2番目のゴール。最後まで先頭集団で走り続け、強さを見せた。

強い選手をマークし、最後まで先頭集団で走る

2日前の予選でもしっかりとした走りで危なげなく3着で通過した前田。決勝でも冷静な走りは変わらなかった。入りの1000mは2分58秒とスローペースとなり、大集団で進んだが、次の1000mは平成国際大学のジョセフ・ムイガイ(1年)が前に出て引っ張り2分46秒と一気にペースアップ。集団は縦長になった。

前田は集団の後方に位置取り、徐々に前へ。残り4周を過ぎたところで創価大学のスティーブン・ムチーニ(1年)と鶴川が前に出ると、前田も反応して集団の前方へ。残り2周で先頭集団は9人に絞られたが、前田もそこにしっかりとついていった。ラスト1周で先頭は鶴川、ムチーニ、城西大学のヴィクター・キムタイ(2年)、拓殖大学のラファエル・ロンギサ(1年)、前田の5人に。激しいスパート合戦となり、前田はロンギサに先着し4位でのフィニッシュとなった。

集団の前方にいたかったが、気を抜くと下がってしまう。大学のレベルの高さを感じた

「今日は自分の力をしっかり出し切ることを一番に考えたレースでした。100%狙っていたことができたわけではないですが、その中でもしっかり自分の力は出し切れたかなと思います」。100%でなかった部分について聞かれると、日本人1位を狙っていたこと、なるべく前のほうでレースを進めたいと考えていたが位置をキープできなかったこと、途中で集団の最後尾の方まで下がってしまい、位置が前後して体力を消耗してしまったことなどをあげた。

この関東インカレが大学で初めてのレースだった前田。「やっぱり全体のレベルがすごく高くて、ちょっとでも気を抜いたらすぐに後ろの方に行ってしまうので、それが高校とは全然違うと感じました。100%の準備をして挑まないと通用しないなと思います」。その中でも駒澤大学の安原太陽(4年、滋賀学園)や鶴川ら、強い選手たちの動きを見て、参考にしながら走っていた。「自分が必死に食らいついていったらチャンスもあるかなと思って、後ろに下がってしまったときも諦めることなく走ったことがこの結果につながったのかなとも思います」

東農大を選んだ理由は「自分のことを思ってくれる」

前田は中学時代はサッカーをしており、報徳学園に進学してから本格的に陸上を始めた。1年時のベストタイムは5000m15分34秒だったが、高校3年4月の兵庫リレーカーニバル5000mで13分56秒65のタイムをマーク。インターハイでは5000mで日本人トップの4位と、世代トップのランナーになった。

進学先に東農大を選んだのは、「いろいろ理由はある」と言いつつも「特に大きいのは監督やコーチの人柄の良さです」という。まだまったく強くなかった高校1年生の頃から声をかけてもらっていて、「この大学だったら自分のやりたいことができる、自分の持っている力を引き出してくれる」という思いがあった。「自分のことを一番思ってくださる大学に行きたいって思ったので、東農大を選びました」と理由を語る。

東農大は箱根駅伝出場69回を誇るが、近年は2014年の第90回大会を最後に出場が途絶えている。全日本大学駅伝は2009年の第41回大会以来出場がない。チームとしては「箱根駅伝出場」が最大の目標であり、前田の意識もすでにそこにある。4年生には主将を務める高槻芳照(4年、学法石川)3月の学生ハーフで4位だった並木寧音(4年、東京実業)ら強い先輩もおり、前田もすでに彼らと練習をともにしている。「チームの雰囲気はすごくいいです」と前田。この日も大応援団が前田の走りを応援し、「すごく応援が聞こえました。力になりました」と笑顔を見せる。

安原(6番)ら強い選手をマークして走った

「まず1年目ということもあるので、1年間はけがなく練習を続けたいです。やっぱり陸上、特に長距離は練習を積むことが一番力になると思うので。しっかり基礎を固めた上で、箱根駅伝予選会では自分の持っている力を出し切って、チームに貢献できたらいいなと思っています」

前半シーズンはこの関東インカレと6月17日に開催される全日本大学駅伝選考会がチームとしても重要な位置づけとなっている。そして夏を経て、10月の箱根駅伝予選会を迎える。前田に個人的な目標をたずねると「箱根駅伝予選会で日本人1位を取れたらなと思っているので、そこに向けて練習していこうと思います」とすでにチームを引っ張り、大きな戦力になるという気概が感じられる。

まずは箱根駅伝予選会でチームの力に

将来はマラソンに挑戦したいという前田。「やっぱり一つひとつの勝負でしっかり勝ちきれるような選手になりたいと思います。あとは、マラソンに向けても長い距離に対応できるようになっていきたいので、今後は10000mやハーフマラソンなどのレースを中心に走っていければなと思います」。10000m27分台は早いうちに出したいとも言うが、「まずは箱根の予選会に向けてということなので、そこまで意識はしてないです」。タイムより勝負、勝ちきれる選手になることがまず第一だ。

長い距離になればなるほど得意だと思うという前田。今後の活躍が楽しみだ

まだトラックでは5000mのレースまでしか走ったことがないが、距離に対する不安はないのだろうか? という質問には「どちらかというと距離が延びれば延びるほど強いかなっていう自信はあります」と大物ぶりをうかがわせる。

強い4年生に頼もしいルーキー。遠ざかっている「駅伝」の舞台へ舞い戻ることができるだろうか。東農大の今シーズンが楽しみになってきた。

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