陸上・駅伝

東洋大・中島佑気ジョセフが日本選手権男子400mを初制覇、世界を意識した2レース

日本選手権男子400mを制した中島(撮影・田辺拓也)

第107回日本選手権 男子400m

6月4日@ヤンマースタジアム長居(大阪)
1位 中島佑気ジョセフ(東洋大4年)45秒15
2位 佐藤風雅(ミズノ)45秒26
3位 佐藤拳太郎(富士通)45秒47

6月4日にヤンマースタジアム長居(大阪)で開催された陸上の日本選手権男子400mで、昨夏のオレゴン世界選手権日本代表、東洋大学の中島佑気ジョセフ(4年、城西大城西)が初優勝を果たした。好タイムをマークしてライバルを抑えたものの、レース後は喜びを爆発させることはなかった。それは常に「世界」を意識して走っているからこその振る舞いだった。

予選と決勝で見せた攻めの走り

中島は予選から今夏の世界選手権(8月、ハンガリー・ブダペスト)の参加標準記録45秒00の突破を狙っていた。「世界陸上を見据えて予選からしっかり勝負したいと思っていた」。予選3組目の5レーンで登場した中島は前半から攻めた走りを見せた。第4コーナーの前には完全に頭ひとつ抜けた状態となり、最後の直線も後続を引き離すような形でフィニッシュ。タイムは2番手に1秒以上差をつける45秒49をマークし、44秒台には届かなかった。バックストレートでは強い風があったといい、「前半から力を使ってしまった」と分析。一方で、「走り自体は悪くなかった。決勝に向けて楽しみなレースになった」と手応えを口にした。中島が「いい走り」の指標にしている足の接地についても、納得の動きがある程度できていたという。

スタートを切る中島(撮影・田辺拓也)

そして、迎えた決勝。中島は7レーンに入り、昨夏の世界選手権で男子1600mリレーで一緒に走った佐藤風雅(ミズノ)が隣の6レーンに入った。前半は佐藤とほぼ並走する展開となり、最後の直線に入ったときにはリードを許していた。ただ、ここからギアをもう一段階上げた。徐々に詰め寄ると、残り30m付近で佐藤を抜いてそのままフィニッシュ。タイムは自己ベストを0秒16更新する45秒15。目標としていた44秒台には惜しくも届かなかったが、レース直後はほっとした表情を見せ、最後まで競り合った佐藤と抱き合って健闘をたたえ合った。

他の選手と競り合う中島(左から2人目、撮影・西岡臣)

日本選手権のテーマは「世界でどう勝負していくか」

レース後はあまり笑顔はなく、「日本選手権の決勝というのを超えて、世界でどう勝負していくかというのを今大会はめざしていた。まだ世界と比べると、力不足かなという感じです」と振り返った。前半にリードされたことを受け、「前半にもう少しスピードに乗れていたらタイムも少し変わっていたかもしれない」と反省を口にした。そして、「(44秒台が出ず)悔しい。45秒台だと世界では離されてしまう」と続けた。

ここまで「世界」を意識できるようになったのは、昨夏の世界選手権の経験が大きい。男子1600mリレーで中島はアンカーを務めた。3走の選手が二つ順位を上げて4番手でバトンを受けると、粘り強い走りで後続を抑えフィニッシュ。日本は世界選手権で過去最高の4位に入り、2004年アテネオリンピック(4位)以来の世界大会入賞を果たした。バトンパスの技術で走力をカバーできる400mリレーと比べると、1600mリレーは個々の走力がタイムに直結する。この結果は日本の個人レベルが上がっていることを意味する。手応えと悔しさの両方を感じた中島は「最高のチームだった。だからこそメダルがとれると信じていたので、悔しさもある」と語っていた。

声援に応える中島(撮影・田辺拓也)

日本選手2人目の44秒台へ

日本選手で44秒台のタイムを出したことがあるのは、日本記録44秒78を持つ高野進氏だけ。44秒台を最後にマークしたのは1991年までさかのぼる。今回の日本選手権では2位に入った佐藤も45秒26の自己ベストをマークした。3位に入った佐藤拳太郎(富士通)らも含めてライバル同士が切磋琢磨(せっさたくま)していけば、日本選手2人目の44秒台、さらには日本記録更新も現実味を帯びてくる。「いま、日本で一番速いのは自分だと思っている」と中島。長年、阻まれてきた壁を越える筆頭はこの21歳だろう。

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