ラグビー

追手門学院大・須田倫代 夢から目標に近づいたオリンピック、ステップを武器にパリへ

女子7人制の日本代表エースに成長した追手門学院大の須田(すべて撮影・斉藤健仁)

2014年から始まった女子ラグビーセブンズの日本最高峰の大会「太陽生命ウィメンズセブンズシリーズ」。今年もすでに3戦が行われ、最終戦となる第4戦が7月1、2日に大阪・東大阪市花園ラグビー場で開催される。なお花園で大会が行われるのは、今年が初めてだ。

ワールドラグビーの公式Twitterに「Super Suda」

大学5チームを含む16チームが参加する中、3戦を終えて総合8位と健闘しているのが追手門学院大学女子ラグビー部 VENUSだ。追手門学院大の大黒柱で、「サクラセブンズ」こと女子7人制ラグビー日本代表のエースに進化を遂げたのが、20歳の須田倫代(3年、京都成章)だ。

2021年の東京オリンピックは最下位の12位だったサクラセブンズ。今年9月にはアジア競技大会、11月にはパリオリンピック予選を控える。昨年12月からの半年間、女子セブンズの世界最高峰のサーキット大会「HSBCワールドラグビーセブンズシリーズ」に参戦し、7大会中3大会でベスト8入り。5月のフランス・トゥールーズ大会では、過去最高成績の5位に入り、調子は上向きだ。

切れ味鋭いステップを武器にトライを挙げる

須田は持ち前のステップでトライを挙げ、世界のラグビーの統括機関「ワールドラグビー」の公式Twitterにも「Super Suda」として紹介された。今季のワールドシリーズを振り返った須田は「鈴木貴士ヘッドコーチからは『迷わず思いっきりやれ!』と言われています。まだまだですが、少しは世界相手に自分の武器でチャレンジできた。チームの士気が上がるようなプレーにつながった」と破顔した。

須田が「格上の相手にも、かなわないなと感じることはなかった。自信になっている」と話すように、サクラセブンズは世界のトップのニュージーランド、オーストラリアとはまだ少し差はあるが、他のチームとは十分に戦えていた。

その要因を聞くと「誰かがゲインした後、他の選手がサポートしてトライが取れるようになったし、(守備でも)簡単にトライを取られないようになった。ベスト8に行けていないときには、先にトライを取られて追いつかない展開が多かったが、今は粘れているしトライも取れている。ディフェンスもアタックも向上している」と手応えを口にした。

今季のワールドシリーズで確かな手応えを得た

父は立命館大のプロップ、弟は近畿大でスタンドオフ

須田は5歳のとき、地元の大阪ラグビースクールで競技を始めた。父の匠さんは立命館大学のラグビー部でプロップ。須田は5人きょうだい2番目の長女で、3番目の弟・厳太(天理)は近畿大学1年でスタンドオフとして活躍している。

ラグビーを始めたばかりの2009年、7人制ラグビーが夏季オリンピックの正式種目に決まり、「オリンピックに出たい」という夢を抱いた。高校は女子ラグビー部ができたばかりの京都成章へ。高校3年の2020年10月には、第3回全国U18女子セブンズラグビー大会で優勝に貢献した。ただ一つ下の世代の選手たちが日本代表に呼ばれる中、「どうしたら日本代表に呼ばれるのかな」と思っていた。

太陽生命ウィメンズセブンズの一戦に敗れ、悔しい表情を浮かべた

大学は女子ラグビーに力を入れている追手門学院大学に進み、国語の教諭を目指すため国際日本学科に在籍している。祖父が教員だったこともあり、須田自身もセカンドキャリアを意識した選択だった。

須田がようやく日本代表候補合宿に呼ばれたのは、大学に入ったばかりの2021年6月。東京オリンピックを控えたチームの対戦相手としてだった。須田はその後、東京オリンピックでプレーするサクラセブンズの姿を見て、「そもそもスタート地点に立ててない悔しさを感じて、改めてオリンピックに出たいと思った」と振り返る。

ステップ強化のため欠かさないトレーニング

東京オリンピック後の2021年9月、新たなチームがスタートすると、須田は一気に頭角を現し、11月に初めてサクラセブンズに選ばれた。その後も代表に定着し、2022年にはセブンズワールドカップにも出場した。

「高校の時、奈良秀明さん(元タッチラグビー日本代表)のステップのセッションがよくあって、そのときは右ひざをケガしたこともあり、両足着地でやるなど、いろいろ考えていました。いろんなステップを高校で身につけて、大学で発揮できているかな。(ステップを切って)自分の得意な間合いになったらスピードを上げています」

大学に戻ってからもステップをより強化するため、スクワットやクリーンなど足腰の筋力トレーニングを欠かさず、スクワットは日本代表の中でもトップクラスの130kgを上げる。個人的な課題は「まだまだ足が遅い」こと。「またディフェンスの上がりが遅くなることがあるので意識している」

昨季の太陽生命ウィメンズシリーズには、日本代表活動のため4戦中3戦しか出場できなかったが、今季は4戦すべてに出場できる予定だ。そして第4戦は地元・大阪で開催される。「日本代表のチームメートと対戦するのは脅威ですが、大学のみんなとラグビーができるのは楽しい。大会を重ねて一歩ずつ強くなっていきたい!」と語気を強めた。

太陽生命ウィメンズセブンズは日本代表や世界的プレーヤーと対戦できる機会だ

温泉やサウナが好きで、趣味は韓国ドラマを見ること。ただ今大会が終わると、再び日本代表活動に加わる予定だ。「オリンピック出場が小さい頃からの夢です。東京のときは非現実的でしたが、今は夢が目標になっている。(2024年の)パリの舞台に立てるように、まずは予選のメンバーに入ること、そして予選を勝ち切りたい」と力を込めた。

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