ラグビー

筑波大学・高田賢臣 入学当初はサッカー部「6軍」、血肉となる経験積み絶対的FBへ

春季交流大会Bグループ優勝の表彰を受ける筑波大の高田(すべて撮影・斉藤健仁)

7月2日、東京・秩父宮ラグビー場で今年も大学ラグビーの春シーズンを締めくくる「第11回関東大学ラグビーオールスターゲーム」が開催された。かけ声が解禁となった今年は、小中学生などに向けたラグビー体験会やプロップの「56m走」など、お祭り的な要素もあり、大いに盛り上がった。メインゲームは関東大学春季交流大会の主にAグループに所属する選手から選抜された、「対抗戦選抜―リーグ戦選抜」だった。

帝京、明治ばかりの中「縮こまってもしょうがない」

お互いのリーグを代表して戦う真剣勝負は例年通り、前半からトライの取り合いとなった。後半ロスタイム、リーグ戦選抜で法政大学主将のWTB石岡玲英(4年、御所実業)がトライを挙げ、43-43の同点でノーサイド。通算成績は対抗戦選抜の5勝3敗1分け(2回中止)となった。

対抗戦選抜は、春季交流大会Aグループでともに無敗だった帝京大学と明治大学のメンバーがずらりと並ぶ中、筑波大学からFB高田賢臣(4年、浦和)が唯一、メンバー入りを果たした。

もともと明治大のFB池戸将太郎(4年、東海大相模)が先発する予定だったが、コンディション不良のため、高田が先発に繰り上がった。「周りは帝京さん、明治さんしかおらず、場違い感がありましたが、縮こまっていてもしょうがないと思って開き直った」

高田は得意とするプレースキックや持ち前の安定感あるプレーだけでなく、先制トライを挙げるなど気を吐いた。4年になって初のオールスターについて「(普段は対戦している対抗戦の選手が)味方になったときにすごく心強かった。スクラムを押すことを前提に話をしていて、ショックを受けつつ楽しくやらせてもらった!」と振り返った。

オールスターゲームでは先制トライを挙げた

フィジカル強化の必要性を感じたイギリス留学

高田は筑波大学入学当初、ラグビー部ではなく蹴球部(サッカー部)に入部した。中学校まで部活動としてサッカーをしており、センターバックだった。ただ進学先の浦和高校はサッカー部よりラグビー部が強かったことや、中学校時代に1週間サッカー留学をしたイギリスで体格差を感じ「ラグビーでフィジカルをつけてから大学でサッカーをやればいいかな」と考え、ラグビーを始めた。

浦和高校は、小林剛先生、三宅邦隆先生ら筑波大ラグビー部OBたちが指導していたこともあり、高校3年時は「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場しベスト16。高田はロングキックが武器のFBとして活躍した。大学はサッカーもラグビーも強豪の筑波大を志望し、体育専門学群の入試(実技)でもラグビーとサッカーの両方を使って見事に合格した。

秋にはライバルとなる対抗戦の選手たちと。前列左から2番目が高田

そして「高校では悔いなくラグビーができた。半年間は蹴球部でチャレンジしよう」とラグビー部の嶋崎達也監督とも話して、当初の予定通り、大学入学後はサッカー部の門をたたいた。

高校時代にサッカーから離れていた高田は、一番下「6軍」からのスタートだった。新型コロナウイルスの影響で、実質的には3カ月ほどのサッカー部生活だった。「練習で手を抜くことは無かったが、やはりレベルが高かった。大学4年になって(サッカー部の)トップチームに上がるのは難しい。自分はやっぱりラグビーの方が向いている」と再び楕円(だえん)球の道へと戻ったというわけだ。

FBとしてはサッカーで培ったキックが持ち味の一つだ

サッカーの経験は、スタミナ強化と逆足の精度向上に

ただ高田は、大学でのサッカーの経験が遠回りになったとは感じていない。「蹴球部は部員が200人近くいて、サッカーだけでなく組織としてのレベルも高かったし、(サッカーは)90分なのでスタミナもついた。(利き足ではない)逆足の精度も上がった。自分の血肉となって新しい武器になった」と振り返る。そしてサッカー部の選手の中にはMF小峯拓也(4年、浦和)ら、オールスターの応援に来てくれた選手もおり、自らもサッカー部を応援している。

「どっちが好きと自分の中で優劣はつけられない」が、戻ってきてからは「自分はラグビーに向いている」と感じている。大学2年時は1試合だけ公式戦に出場した。3年の昨季は正確なプレースキックを武器に、FBとしてほぼ全試合に出場。チームは対抗戦5位ながら、大学選手権で8シーズンぶりとなるベスト4に入り、国立競技場でもプレーした。

大学選手権では国立競技場でのプレーした

新チームとなっても勢いそのままの筑波大は、Bグループ所属となった今季の春季交流大会で5連勝を飾り、優勝した。「(ケガの影響でキャプテンの)谷山(隼大)、U20日本代表でSO楢本(幹志朗)らがいないが、誰かに頼ることがなく、個人を最大化できたのが好調の要因かな。また昨季のベスト4の流れを受け継いでディフェンス力があり、アタックに力を割くことができてバランスがいい」と手応えを口にした。

「クラブ運営に興味がある」と主務も兼務

リラックス方法はルービックキューブをすること。好きな言葉は映画「イエスマン」に出てくる「The world's a playground」というセリフだ。新チームとなり、「クラブ運営に興味があり、クラブの価値がわかっている人がなるべきかな」と志願して、主力選手ながら主務となった。

卒業論文もリーグワンのスポンサーシップについて書く予定で、大学卒業後は働きながらラグビーも続けるつもりだ。筑波大の今季の目標も「日本一」。高田は「味方になって痛感させられたが、帝京さん、明治さんのシンプルな強さ、うまさをチームに持ち帰って共有し、そこを超えていけるかが使命だと思うので、そこをやり切って秋に勝ちたい」と真っすぐに前を向いた。

今季も1分近く行うという独特なルーティンとロングキックで、高田は筑波ブルーの最後のとりでとして、チームに安定感をもたらす。

自ら志願して主務も兼任。オールスターの経験をチームに持ち帰る

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