京都産業大・三木皓正主将は「タックルの鬼」 ディフェンス強化で10度目の壁に挑む
2季連続で関西制覇と大学選手権ベスト4の京都産業大学ラグビー部。伝統的にFWのスクラム、モールが強く「ひたむきさ」を文化としている。今季も関西大学春季トーナメントで優勝し「日本一」を目標に掲げる。OBで元日本代表の廣瀬佳司監督からキャプテンに指名されたのは、「タックルの鬼」として1年から存在感を示しているFL三木皓正(4年、京都成章)だ。
スローガン「Passion」に込めた思い
京産大は7月2日の春季トーナメント決勝で、同志社大学を54-15で圧倒した。関西では強さを誇るが、昨季の大学選手権の準決勝では早稲田大学に33-34で惜敗し、9度目のチャレンジでも決勝に進出することができなかった。今季、キャプテンに就いた三木は「一昨季は久しぶりにベスト4に入って満足している方が大きかったが、昨季は帝京大に勝つつもりでやっていて、(出身高校が同じ)NO8村田陣悟(4年)、SH宮尾(昌典、3年)がいる早稲田大に負けて悔しかった。セットプレー、ディフェンスと全体的に精度が低かった」と悔しそうな表情を見せた。
1月2日の準決勝が終わってから2週間後、三木は廣瀬監督に呼ばれて新キャプテンに任命された。「自分たちの代はあまり試合に出ていなかったので、僕も『自分しかいない。だぶん(キャプテンに)なるだろう』と思っていました」。NO8ヴェア・ タモエフォラウ(4年、札幌山の手)がFWリーダー、FB船曳涼太(4年、神戸科学技術)がBKリーダーに就いた。
キャプテン就任を言われたとき、三木は廣瀬監督から「スローガンを考えてきてくれ」と言われた。「Passion(パッション)」と提案し、受け入れられた。「目標は今季も日本一ですが、京産に3年間いて、ラグビーの熱さが欠けている部分があると感じていた。見ている人が熱く、やっている方も熱くなれるように」という思いを込めた。
さらに三木は、1月末に行ったミーティングで「覚悟を持って(練習開始日の)3月1日に来てほしい。覚悟を持っていない人は来なくていい」とチームメートの前であえて強い発言をした。「試合に出られないから『これくらいでいいやろ』と思う選手が多くいたので、そういった選手をなくしたかった。今では実力がなくてもみんな必死にもがいてやっている」と効果を実感している。
今季の4年生は、試合に出る選手が限られており「厳しい代になる」と感じている。だが一方、京産大は大学で一番厳しい練習をしていることで有名だ。三木は「スクラム、モールとFWから組み立てるのが京産のラグビーです。4年間で一番しんどい練習をしています。しんどい練習をやることが正しいかわからないが、そうしないと京産は勝てないので、率先して先頭に立っている。毎回の練習で(力を最後まで)絞っています」と胸を張った。
1年のとき大学選手権で兄と対戦
三木の父・康司さんも京産大ラグビー部出身。父は京産大の関西初制覇に貢献し、三菱自動車工業京都(現・三菱自動車京都)でも活躍したFWだった。三木は兄の亮弥(京都成章から慶應義塾大学)も所属していた京都・洛西RSでラグビーを始め、中学は京都市立西陵中で続けた。中学時代はスクール、京都選抜ともに日本一を経験。中学の同級生には明治大学のLO山本嶺二郎(京都成章)がいる。
高校は「(三つ上に)兄もいたので」と迷わず京都成章に進んだ。高校3年時はキャプテンを務め、「花園」こと全国高校ラグビー大会では準々決勝で流通経済大柏(千葉)に敗れ、涙をのんだ。高校ではLO山本やNO8村田だけでなく、PR西野拓真、NO8延原秀飛(ともに帝京大学)らが同期にあたる。
大学も兄と同じ慶應義塾大を目指した。しかしAO入試を2度受けたが不合格で「ショックだった」。京産大からは最初に誘われていたこともあり、実家から近いため、進学した。1年からトライを挙げるなど活躍し、このシーズンの大学選手権3回戦で兄がいた慶應義塾大と対戦。14-47で敗れた。「高校は入れ違いで、大学でも同じ舞台で対戦できると思っていなかったので、初めて兄とした試合は一番覚えていますね!」と振り返る。
「環境や周りのせいにしない」と自身に言い聞かせ
三木には、自分に言い聞かせている言葉がある。それは「環境や周りのせいにしない」。「京産は帝京大など関東のチームに比べたら、トレーナーもずっといないし、アナリストもいない。ただこの4年間、今できることもたくさんあると思っていたので、これからもそういう思いでラグビーを続けたい」
朝練習ではFWとBKに分かれてウェートトレーニングを行い、全体練習は午後5時から。三木は授業の合間に約2時間のトレーニングを自らに課し、「1日3部練習」をこれまで続けてきた。その努力の成果もあり、体重は大学に入ってから12kg増えて94kgとなった。
チームとしては2季連続、過去9度阻まれてきた大学選手権準決勝の壁を越えて、「日本一」を目標に掲げている。もちろん関西リーグ3連覇は譲るつもりはない。「強豪校に勝つため、ひたむきに努力するのが京産の文化です。センスのあるアタックや派手なプレーをしようとしてもなかなかできない。ラグビーはメンタルスポーツだと思っている。僕がキャプテンなのでディフェンスはどうにかなる。ディフェンスで勝つチームになるためにディフェンスを強化したい」
大学ラグビーを終えた来春からは、リーグワンのチームでラグビーを続ける。身長175cmと決して大柄ではないが「FLとしてリーグワンの試合に出続けることができれば、いろんな人に勇気を与えることができると思っています」と前を向く。
改めて今季、ファンにどんなラグビーを見せたいかと尋ねると、「国立の舞台で出し切れるように日々の練習を大事にし、スローガンのように例年以上に熱いラグビーをして、個人としてはキャプテンとして周りに目を配りつつ、大学でオールアウトできるように努力を続けて、京産で花を咲かしたい」と力強く語った。「タックルの鬼」がチームを引っ張り、「赤紺」ジャージーが今季こそ準決勝の壁を破り、日本一にチャレンジできるか。注目したい。