ラグビー

特集:New Leaders2023

京都産業大・三木皓正主将は「タックルの鬼」 ディフェンス強化で10度目の壁に挑む

京都産業大学が誇る「タックルの鬼」三木主将(すべて撮影・斉藤健仁)

2季連続で関西制覇と大学選手権ベスト4の京都産業大学ラグビー部。伝統的にFWのスクラム、モールが強く「ひたむきさ」を文化としている。今季も関西大学春季トーナメントで優勝し「日本一」を目標に掲げる。OBで元日本代表の廣瀬佳司監督からキャプテンに指名されたのは、「タックルの鬼」として1年から存在感を示しているFL三木皓正(4年、京都成章)だ。

スローガン「Passion」に込めた思い

京産大は7月2日の春季トーナメント決勝で、同志社大学を54-15で圧倒した。関西では強さを誇るが、昨季の大学選手権の準決勝では早稲田大学に33-34で惜敗し、9度目のチャレンジでも決勝に進出することができなかった。今季、キャプテンに就いた三木は「一昨季は久しぶりにベスト4に入って満足している方が大きかったが、昨季は帝京大に勝つつもりでやっていて、(出身高校が同じ)NO8村田陣悟(4年)、SH宮尾(昌典、3年)がいる早稲田大に負けて悔しかった。セットプレー、ディフェンスと全体的に精度が低かった」と悔しそうな表情を見せた。

昨季の大学選手権準決勝では高校時代の同期がいる早稲田大に惜敗

1月2日の準決勝が終わってから2週間後、三木は廣瀬監督に呼ばれて新キャプテンに任命された。「自分たちの代はあまり試合に出ていなかったので、僕も『自分しかいない。だぶん(キャプテンに)なるだろう』と思っていました」。NO8ヴェア・ タモエフォラウ(4年、札幌山の手)がFWリーダー、FB船曳涼太(4年、神戸科学技術)がBKリーダーに就いた。

キャプテン就任を言われたとき、三木は廣瀬監督から「スローガンを考えてきてくれ」と言われた。「Passion(パッション)」と提案し、受け入れられた。「目標は今季も日本一ですが、京産に3年間いて、ラグビーの熱さが欠けている部分があると感じていた。見ている人が熱く、やっている方も熱くなれるように」という思いを込めた。

さらに三木は、1月末に行ったミーティングで「覚悟を持って(練習開始日の)3月1日に来てほしい。覚悟を持っていない人は来なくていい」とチームメートの前であえて強い発言をした。「試合に出られないから『これくらいでいいやろ』と思う選手が多くいたので、そういった選手をなくしたかった。今では実力がなくてもみんな必死にもがいてやっている」と効果を実感している。

今季の4年生は、試合に出る選手が限られており「厳しい代になる」と感じている。だが一方、京産大は大学で一番厳しい練習をしていることで有名だ。三木は「スクラム、モールとFWから組み立てるのが京産のラグビーです。4年間で一番しんどい練習をしています。しんどい練習をやることが正しいかわからないが、そうしないと京産は勝てないので、率先して先頭に立っている。毎回の練習で(力を最後まで)絞っています」と胸を張った。

伝統としているスクラムを起点にFWから攻撃を組み立てる

1年のとき大学選手権で兄と対戦

三木の父・康司さんも京産大ラグビー部出身。父は京産大の関西初制覇に貢献し、三菱自動車工業京都(現・三菱自動車京都)でも活躍したFWだった。三木は兄の亮弥(京都成章から慶應義塾大学)も所属していた京都・洛西RSでラグビーを始め、中学は京都市立西陵中で続けた。中学時代はスクール、京都選抜ともに日本一を経験。中学の同級生には明治大学のLO山本嶺二郎(京都成章)がいる。

高校は「(三つ上に)兄もいたので」と迷わず京都成章に進んだ。高校3年時はキャプテンを務め、「花園」こと全国高校ラグビー大会では準々決勝で流通経済大柏(千葉)に敗れ、涙をのんだ。高校ではLO山本やNO8村田だけでなく、PR西野拓真、NO8延原秀飛(ともに帝京大学)らが同期にあたる。

大学も兄と同じ慶應義塾大を目指した。しかしAO入試を2度受けたが不合格で「ショックだった」。京産大からは最初に誘われていたこともあり、実家から近いため、進学した。1年からトライを挙げるなど活躍し、このシーズンの大学選手権3回戦で兄がいた慶應義塾大と対戦。14-47で敗れた。「高校は入れ違いで、大学でも同じ舞台で対戦できると思っていなかったので、初めて兄とした試合は一番覚えていますね!」と振り返る。

慶應義塾大学のCTB三木亮弥、2季ぶりの全国の舞台は兄弟対決から
ラグビー一家で育ち、恵まれた環境でもまれてきた

「環境や周りのせいにしない」と自身に言い聞かせ

三木には、自分に言い聞かせている言葉がある。それは「環境や周りのせいにしない」。「京産は帝京大など関東のチームに比べたら、トレーナーもずっといないし、アナリストもいない。ただこの4年間、今できることもたくさんあると思っていたので、これからもそういう思いでラグビーを続けたい」

朝練習ではFWとBKに分かれてウェートトレーニングを行い、全体練習は午後5時から。三木は授業の合間に約2時間のトレーニングを自らに課し、「1日3部練習」をこれまで続けてきた。その努力の成果もあり、体重は大学に入ってから12kg増えて94kgとなった。

チームとしては2季連続、過去9度阻まれてきた大学選手権準決勝の壁を越えて、「日本一」を目標に掲げている。もちろん関西リーグ3連覇は譲るつもりはない。「強豪校に勝つため、ひたむきに努力するのが京産の文化です。センスのあるアタックや派手なプレーをしようとしてもなかなかできない。ラグビーはメンタルスポーツだと思っている。僕がキャプテンなのでディフェンスはどうにかなる。ディフェンスで勝つチームになるためにディフェンスを強化したい」

「1日3部練習」で作り上げたフィジカルを武器に、日本一をめざす

大学ラグビーを終えた来春からは、リーグワンのチームでラグビーを続ける。身長175cmと決して大柄ではないが「FLとしてリーグワンの試合に出続けることができれば、いろんな人に勇気を与えることができると思っています」と前を向く。

改めて今季、ファンにどんなラグビーを見せたいかと尋ねると、「国立の舞台で出し切れるように日々の練習を大事にし、スローガンのように例年以上に熱いラグビーをして、個人としてはキャプテンとして周りに目を配りつつ、大学でオールアウトできるように努力を続けて、京産で花を咲かしたい」と力強く語った。「タックルの鬼」がチームを引っ張り、「赤紺」ジャージーが今季こそ準決勝の壁を破り、日本一にチャレンジできるか。注目したい。

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