ラグビー

京都産業大の共同主将・FL福西隼杜 ひたむきに、まずは大学選手権4強の壁に挑む

京都産業大を共同主将の一人として引っ張るFL福西隼杜(すべて撮影・斉藤健仁)

全勝で24年ぶりに関西大学Aリーグ連覇を果たしたのが、「赤と紺」のジャージーで知られる京都産業大学ラグビー部だ。昨季は惜しくも準決勝で敗れた大学選手権に、今季もシード校として12月25日の準々決勝(対慶應義塾大学)から登場する。日本一を目標に掲げている京都産業大を共同主将の一人として引っ張るのが、FL(フランカー)福西隼杜(ふくにし・はやと、4年、報徳学園)だ。

SO家村と共同主将、「タフなチーム」めざす

関西大学Aリーグでは、最終戦の近畿大学に38-19と快勝し、全勝で連覇を達成した。SO(スタンドオフ)家村健太(4年、流通経済大柏)と共同キャプテンを務める福西は、「最高学年ということもあると思いますが、もちろん、今年の優勝の方が僕的には(うれしさは)大きかった!」と破顔した。

日本代表の名SOだった廣瀬佳司監督は、京都産業大のOBでもある。トヨタ自動車の監督などを経て、昨シーズン就任し、今季、2シーズン目を迎えた。新チームが発足したとき、「福西、家村のどちらをキャプテンにするか選ぶことが難しかった」ため、共同キャプテン制を選んだ。福西も「コーチ陣に言われたので、キャプテンをやりたい」と返事をしたという。現在では「家村と負担の部分を協力できているので2人でやって良かった」と感じている。

共同主将のSO家村と一緒に優勝を目指す。卒業後はともにリーグワンのチームに進む

福西は廣瀬監督を強く信頼している。「廣瀬さんはラグビーについてめっちゃ知っている」という印象を持っているが、トップダウンで強く言ってくることはほとんどないという。「廣瀬さんは、結構フラットな位置で僕ら学生の意見を聞き入れてくれるのが伝わってきますし、一緒にチームを作っていくというスタンスで、それが僕の中ではいいのかなと思っています」

今季のスローガンは「タフ」と掲げた。「昨季から廣瀬さんが『見ている人からも対戦相手からもタフだと思われるようなチーム作りをしよう』という話をしていて、対戦相手からまたやりたくないと思われるチームを目指そうと、家村と話して決めました」

モールの練習を見つめる廣瀬監督

大敗から立て直し、関西リーグ連覇

今季のメンバーには、福西を筆頭に、昨季の関西大学Aリーグで23シーズンぶりに優勝、大学選手権ベスト4を経験した選手が、多く残っていた。新チームになった矢先、福西は「昨季の先入観や思い込みで負けてしまうこともある。昨季の経験を生かすけど、昨季は昨季、今季と同じチームではない。新しいチームとして臨もう」と話していた。

ただ、油断、過信はすぐに結果に表れてしまう。5月、ライバルの一つである天理大学との練習試合。昨季も試合に出ていた上級生がいたにもかかわらず、35-51と大敗した。「この試合が一番、いい薬になりましたね」と振り返った。

大西元監督と話す廣瀬監督

京都産業大を47シーズン率いて礎を築いた大西健総監督の薫陶を、大学1年時に受けた福西たち4年生のFW陣は、「スクラム、モールを京産の武器にしないといけない」という意識は強く持ち続けている。それだけでなく、今季はルーキーのWTBシオネ・ポルテレ(目黒学院)らBKにもいい選手がそろっているため、福西は「僕たちFWが勢いづけて、BKがゲインして取り切るラグビーを目指していた」と話していた。

今秋の関西大学Aリーグはまさしく、福西キャプテンを筆頭に、有言実行のプレーを見せて連勝で走り抜けた。伝統のセットプレーの強さだけでなく、BKからの得点力も確実に上がっており、1試合平均の得点力は昨季の33点から56点に上がるなど、成長の跡を見せている。

中1からFW、花園では2年連続8強

京都産業大を引っ張る福西は、報徳学園OBの父の影響もあり、父がコーチをしていた兵庫・伊丹ラグビースクールで3歳から競技を始めた。明治大の副将・PR大賀宗志(4年、報徳学園)、立命館大の主将を務めたHO中川魁(4年、大阪桐蔭)とは小さい頃からの幼なじみ。スクールと同時にいずみ幼稚園でもプレーした。中学時代、バスケットボール部に所属したが、「軽く走っていたくらい」で、ラグビー中心の生活を送っていた。

小学校はWTB(ウィング)だったが、スクールの校長に「体が大きいのでFWやりなさい」と言われて、中学1年の夏から転向。そこからバックロー一筋だ。中学時代には、伊丹ラグビースクールの太陽生命カップ初優勝に貢献した。しかし、右肩にけがをして手術をした影響で、全国ジュニア選手権で初優勝した兵庫県選抜には選ばれなかったという。

高校時代は報徳学園で2年連続花園ベスト8だった

高校は、父の母校であり、地元の強豪・報徳学園に進学した。一つ上の代にはFB雲山弘貴(明治大→東京サンゴリアス)らがおり、高校2年時から試合に出場するようになった福西は、「花園」こと全国高校ラグビー大会で、2年連続のベスト8に貢献した。

報徳学園と言えば今季、春の選抜大会、夏の7人制大会を制した。花園も当然優勝候補で、史上4校目の「3冠」がかかっている。「僕らの記録を超えていって、すごく刺激になっています」と目を細めた。

しんどいときこそ、走る

大学は、地元に近い京都産業大学に進学した。誘われたことも理由の一つだったが、「京産のしんどい練習の中で自分が強くなれると思ったし、関西で関東のチームを倒すのは格好いいと思って選びました」と話す。

1年時から試合に出続けている福西。写真は昨季

1年時から試合に出ている福西は、京都産業大ラグビー部の原点は「ひたむきさが一番大きい」という。その姿勢を大事にしながら、もちろん、今季も大学選手権のターゲットは大学日本一だ。

そのために必要なことを聞くと、福西は「しんどいときこそ走ることを止めないとか、昨季(大学選手権の準決勝で)帝京大戦で負けたのも、規律の部分で一歩下がってなくて(オフサイドとなり)何回もペナルティーが多かったので、ちょっとしたところが大事だと思っています」と語気を強めた。

FW・BK一体の京産ラグビーを見せる

来春から福西はリーグワンのチームに進み、FLから左PR(プロップ)に転向する予定だという。「今のままではもちろんダメだということはわかっていますが、努力を続けて日本代表を目指したい」とまっすぐ前を向いた。現在、試合ではもちろん左PRでプレーすることはないが、練習ではスクラムの最前線に立つこともある。

タックルが武器の福西。練習ジャージーの肩の部分はボロボロだ

リラックス方法は、京都のおしゃれなカフェ巡りだという。好きな言葉は「努力」。「今ももちろんですが、リーグワンに行っても努力は続けなければならないことなので、自分の中では大事にしている言葉です」

「京産のひたむきさ、そして伝統のスクラム・モールも武器ですが、FWとBK一体となったアタック、ディフェンスも見てほしい」。そう話す福西キャプテンの顔には、自信が垣間見えた。もちろん、12月25日、準々決勝の慶應義塾戦(関東対抗戦4位)に集中しているが、今季こそ、過去8大会、京都産業大の前に立ちはだかる準決勝の壁を打ち破って決勝に進み、日本一に挑みたい。

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