陸上・駅伝

特集:第55回全日本大学駅伝

新潟大学が2大会連続14回目の全日本大学駅伝へ 攻めの走りを見せた2人が原動力に

1組目を走った横山がチームを勢いづけた(すべて撮影・関田航)

第55回全日本大学駅伝対校選手権大会 北信越地区選考会

7月15日@長野市営陸上競技場
1位 新潟大学      4時間16分28秒30 
----------ここまで本戦出場------------
2位 信州大学      4時間18分45秒68
3位 新潟医療福祉大学  4時間31分34秒39
4位 富山大学      4時間36分19秒05
5位 金沢大学      4時間36分57秒98
6位 金沢学院大学    4時間38分00秒32
金沢工業大学は棄権者がいたため選考外

7月15日の全日本大学駅伝北信越地区選考会は1組目から攻めの走りを見せた新潟大学が制し、2大会連続14回目の伊勢路への切符をつかんだ。選考会には7校が参加。1校あたり8~10選手が10000mを走り、各校上位8人の合計タイムで競った。レース前は信州大学も優勝候補に挙げられていたが、そのライバルに2分以上も差をつけて圧倒した。

体調万全でなくても飛び出した1組目の横山

チームを勢いづけたのは大事な1組目を任された横山昇太郎(院1年、斐太)だろう。スタート直後からチームメートの舟山俊希(5年、新潟南)と共に飛び出した。序盤を引っ張ってくれた舟山に対し、横山は「本当に助かった」。3位集団に信州大学の3選手が固まる中、少しでも主導権をつかみたいという思いが2人の足を動かし続けた。2000m以降は横山と舟山が交代で引っ張っていたが、6400m付近で横山が前に出た。「思ったよりも気候が暑くなくて、このままのペースでいけるなと思った」。そこからは独走。2位に約18秒の差をつけてフィニッシュした。

レース後は「(自己採点は)60点ですけど、最低限の仕事は果たせた」とけろっとした表情を見せた。印象的だったのは赤いキャップをかぶっていたこと。そのことを指摘すると、「自分は目立つことが好き」と横山。東京オリンピック女子10000mで7位入賞を果たした廣中璃梨佳(日本郵政グループ)もキャップをかぶっていることを挙げたうえで、「廣中さんを見てかっこいいなと思ったので」と笑った。

そんな明るい横山だが、万全の状態で選考会に臨めたわけではなかった。今年5月の北信越インカレ男子5000mは優勝を狙ったというが、思い通りの走りができずに8位に終わった。「想定外の結果に相当ショックを受けた」。そこから自暴自棄になり、無理な練習を行ったことが原因で左ひざを痛めた。だが、チームメートは責めなかった。横山は「自分の未熟さが引き起こしたけがなのに、仲間は明るく接してくれた。後輩も含めてすごく頼もしかった。焦らずに回復に努めることができた」。選考会直前に復帰。チームに貢献する快走に「まだ100%ではなかったが、その日の一番いいパフォーマンスができた」。

3組目を任された新潟大のエース中戸(中央)

エース・中戸が個人記録を塗り替える快走

2組目もリードを保ったまま終え、迎えた3組目。新潟大の勝利を決定づけたのはエースの中戸元貴(2年、黒沢尻北)だ。スタート直後から北信越インカレ男子10000mを制した信州大の松林直亮(4年、西宮)が飛び出したが、ぴたりとついた。「誰がどの信州大の選手につくかは決めていた。ペースは少し速いなと思ったが、きつくはなかった」

信州大が逆転するには新潟大の選手より前にいかないといけない。松林は「中戸選手を振り落とそうとペースを上げ下げした」というが、中戸は離れなかった。むしろ冷静だった。7000m手前。「松林さんの表情が少しきつそうなのを確認した」と中戸。ここが勝負どころとみて前に出ると、一気に引き離した。30分16秒84でフィニッシュ。北信越地区選考会の個人記録を15秒以上更新する快走に、松林も「完敗です」と認めるしかなかった。

中戸はこの記録に驚きつつも、「ここが限界ではない。29分台は出したい」と力強く語った。この向上心はチーム内にも浸透している。前回は本大会に出場することが最大の目標だった。だが、結果は24位。出場校の中で下から2番目の成績だった。中戸は「自分だけではなく、先輩も『ただ出るだけではダメ』と意識が変わった」と話す。外部コーチからアドバイスをもらい、練習で走る距離が長くなった。そしてチーム内の競争意識も高まった。普段の練習でも他の選手のタイムや練習量を気にすることが多くなり、中戸は「自分ももっと頑張らないといけない」と思えるようになった。

中戸(23番)は3組目をトップでフィニッシュし、笑顔がはじけた

過去を上回るための挑戦へ

今年は名古屋大学や鹿児島大学など同じ国立大学が複数出場する。中戸は「新潟大学としての最高タイムを出したうえで、他の国立大学に勝ちたい」と意気込む。そして、昨年も伊勢路を走った横山と中戸にとっては「過去の自分超え」も大きな目標となる。

横山の希望区間はアンカー。1km3分5秒ペースで走り、「区間15位以内」を掲げた。一方、1区を希望する中戸は「昨年は1区で出遅れたのが響いたので、自分の走りで流れを持っていきたい。そのうえで過去の新潟大の1区の記録を更新したい」。昨年より成長した新潟大が全国で爪痕を残せるか、注目だ。

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