陸上・駅伝

法政大学・黒川和樹 400mHでパリオリンピックの標準記録突破も「悔しさ半分」

世界選手権男子400mハードルの準決勝に臨んだ黒川(撮影・内田光)

世界選手権 男子400mハードル

8月20日予選5組目@ハンガリー・ブダペスト
3位 黒川和樹(法政大4年)48秒71

8月21日準決勝2組目@ハンガリー・ブダペスト
4位 黒川和樹(法政大4年)48秒58=自己ベスト

8月19~27日にハンガリー・ブダペストで開催された世界選手権の男子400mハードルで、前回大会に続いて2度目の出場となった法政大学の黒川和樹(4年、田部)が準決勝で自己ベストの48秒58をマークした。惜しくも決勝進出は逃したが、来年のパリオリンピックの参加標準記録48秒70を突破。レース後、黒川は「うれしさ半分、悔しさ半分。PB(自己ベスト)が出たのはうれしいんですけど、48秒5(台)で止まってしまったのが悔しいなと思います。もっといきたかったですね」と笑顔を見せながらも、率直な思いを口にした。

貫いた攻めの走り、ファイナリストまであと0秒19

21日に行われた準決勝は2組目の5レーンに入った。7レーンには東京オリンピックと前回の世界選手権で銀メダルを獲得したライ・ベンジャミン(アメリカ)が入るなど、外側のレーンに持ちタイムが速い選手が集まっていた。

黒川は「外の3人が速いのはわかっていた。ついていくよりも自分から前に出てペースを作っていこうと思った」というが、想定以上に他の選手の入りが速かった。100mの通過はトップのアリソン・ドスサントス(ブラジル)が11秒34、2番手はベンジャミンの11秒36、黒川は3番手の11秒41だった。

200mの通過は一つ順位を落として4番手となったが、「後半もうまく切り替えられた」。最終コーナーを回っても4番手をキープし、最後の直線では3番手の選手に迫る粘りを見せて組4着でフィニッシュ。これまでの自己記録を0秒10も上回った。「結果的についていったのが正解だった」と黒川。決勝には各組上位2人に入るか、その選手たちを除いた中でタイムの上位2人に入ることが条件。決勝進出8人目の記録で拾われたドイツ選手は48秒39。黒川は0秒19届かなかった。結果を聞くと、「惜しい! くそー!」と悔しがり、「僕の前の選手が48秒48。その選手の前にいたら、もしかしたら(決勝に)行けたかもしれないですね」と振り返った。

パリオリンピックの参加標準記録を突破したが「うれしさ半分、悔しさ半分」(撮影・内田光)

日本選手権で経験したどん底を乗り越え

世界のファイナリストも視野に入った22歳。ただ、約2カ月前はどん底に落とされていた。3連覇がかかった6月の日本選手権では当時の自己記録とはほど遠い53秒15もかかって、まさかの予選敗退。レース後はぼうぜんとした表情で「心も体もボロボロ。(3連覇への)気持ちが強すぎて、体がついてこなかった」と話していた。その後は世界選手権に出られると思っておらず、「強化練習の一環でウェートトレーニングとスピード練習をしていた」。そんな中、7月下旬の田島直人記念陸上競技大会で優勝し、世界ランキングによる滑り込みで代表入りを果たした。

世界選手権の予選は「前半シーズンから自分の走りがわからない状態だったので、びくびくしていた」。でも、スタートすれば、そんなことを考えるひまもなかった。「前半に攻めたら意外といけるかもなって」と積極的なレースを見せ、予選から組3着の48秒71を出して、準決勝につなげた。黒川は日本選手権の予選敗退について「3日くらい経ったら忘れました。自分らしく適当な感じで練習していたら楽になりました」とあっけらかんと振り返った。

6月の日本選手権では予選落ちした(撮影・西岡臣)

次に見据える大舞台はパリオリンピック

2年前には東京オリンピックに出場し、世界選手権は2大会連続。順調にステップを踏んできた。日本記録(47秒89)と世界のファイナリスト8人では、どちらが近いかと聞かれてると、「いまはファイナルのほうが近いかなと思う。必然的に決勝に行けたら日本記録もついてくるかなと思っています」と答えた。大観衆のスタジアムの中で走り、「めっちゃ楽しかったですね。なんかずっと抱え込んでいたというか気にしすぎていた部分があった。ここで自己ベストを出せてよかったです」。次に見据える大舞台は、来年のパリオリンピック。どん底を経験し、22歳はさらに強くなった。

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