陸上・駅伝

特集:第55回全日本大学駅伝

13大会ぶり全日本大学駅伝出場の東北学院大 力のある下級生が加入し、上級生も刺激

13大会ぶりの伊勢路出場を決めた東北学院大のルーキー新美(すべて撮影・辻隆徳)

第55回全日本大学駅伝対校選手権大会 東北地区選考会

9月24日@名取市サイクルスポーツセンター(宮城)
1位 東北学院大学 5時間40分16秒
----------ここまで本戦出場------------
2位 東北大学   5時間41分34秒
3位 山形大学   5時間45分02秒
4位 秋田県立大学 6時間33分49秒

9月24日に開催された全日本大学駅伝東北地区選考会で、東北学院大学が13大会ぶり17度目となる伊勢路への切符を獲得した。最近10回の本大会出場校は東北大学が9回、東北福祉大学が1回。北目秀哉監督は「まずは東北大に勝とうと言い続けてきた。最後まで安心できない展開だったが、選手の頑張りが実を結んでよかった」と振り返った。

16kmの部で東北大に5分以上の差をつけ、10kmの部へ

選考会には計4校が参加。16kmと10kmの部を各校4人ずつ走り、8人の合計タイムで競った。東北学院大の強さが示されたのは前半に行われた16kmの部だった。齋藤颯希(2年、東北)、吉田奏斗(1年、東北)、新美和哉(1年、仙台育英)の下級生3人と、関尚輝(3年、古川学園)の4人が出場。この中で序盤から山形大学の田島駿介(4年、山形南)と先頭を引っ張ったのは新美だった。

「学院大の4人でまとまっていければよかったが、全体的にペースが遅かったので、前に出た」と新美。徐々に新美と田島が後続を引き離していく。先に仕掛けたのは田島だった。残り2km付近でロングスパートをかけられたが、新美は「少し足にきていたので、後ろにつかせてもらえるとプラスにとらえた」。ぴったりと田島の後ろにひかえて、勝負どころを見据える。残り数百mで前に出ると、そのまま50分53秒の1位でフィニッシュした。

4年連続で全日本をめざした東北大との勝負を制した

新美は「前半から積極的に前に出て走ることができて、結果もついてきたのでよかった」と振り返った。他の3人も東北大の4選手より先着。このレースの終了時点で東北大に5分以上の差をつけて、10kmの部につなげた。

学年関係なく練習が終わると食事へ、日帰り旅行も

本大会への出場権獲得に向けて安全圏のタイム差と思われた。しかし、北目監督は「10kmの選手は東北大の選手と比べたら力が劣る。あと2分は差をつけたかった」。予想通り10kmの部で東北大に迫られた。でも、選手は粘った。最終的には1分18秒差で逃げ切った。結果を聞いた東北学院大の選手はほっとした表情を見せて、抱き合って喜んだ。

最終結果を知り、抱き合って喜ぶ選手たち

なぜ、今回の躍進につながったのか。チームに好影響をもたらしたのは、力のある下級生の加入だ。今回の選考会で奮闘した新美は仙台育英、齋藤と吉田は東北と全国高校駅伝の出場経験がある強豪校の出身。新美は高校3年間で駅伝の出場はなかったが、東北学院大のチーム内ではトップクラスの走力を誇る。

東北インカレでは齋藤が5000mと3000m障害を2年連続で優勝し、吉田も10000mを制した。「練習でも積極的に引っ張っていこうという気持ちでやっている」と齋藤。練習で遅れている上級生がいたら、あえて厳しい言葉で鼓舞する。主将を務める横田優志(3年、尚絅学院)は「下級生ばかりに負けてられない。彼らに引っ張られるように3年も4年も力をつけてきた」と話す。下級生と上級生の力の差が逆転するとチーム内の関係悪化が懸念されるが、心配は無用。学年に関係なく練習が終わると食事に行き、休みのときは日帰り旅行にも出かける。齋藤は「すごくチーム内の雰囲気はいい。厳しいところは厳しく、緩いところは緩く。いいバランスがとれている」。

「初出場みたいなもの。失うものはない」

2010年の第42回大会以来となる久々の伊勢路。選手は「最後まで襷(たすき)をつなげたい」と声をそろえる。そして、ただ参加するだけで終わらせたくないという思いもある。

齋藤は3000m障害で活躍する三浦龍司に憧れている

齋藤が憧れているのは今夏の世界選手権男子3000m障害で6位入賞を果たした順天堂大学の三浦龍司(4年、洛南)だ。同じ種目を専門にする齋藤は「一緒の区間を走りたいが、それがかなわなくても、走る前の振る舞いやストレッチのやり方など盗めることは全部盗みたい」と意気込み、北目監督も「久々の出場で、初出場みたいなもの。何も失うものはないし、失敗を恐れずに走ってもらいたい」。来年以降も主力が多く残る。チーム全体の成長につながるようなレースを期待したい。

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