アメフト

元高校球児の立命館大WR横尾友都が初キャッチ、「冗談」じゃなかったアメフト転向

アメフト2年目で体つきもたくましくなってきた立命館大のWR横尾友都(すべて撮影・篠原大輔)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は第3節まで終わった。開幕3連勝とした立命館大学パンサーズは今シーズン、2年生QBの竹田剛(大産大附)を先発させ、途中から4年生の庭山大空(立命館宇治)をフィールドへ送り出している。10月1日の龍谷大学戦では竹田が9回のパスで2回の成功にとどまり、三つのインターセプトを喫した。庭山も6回投げて2回しか決められず、1インターセプト。全体としては散々だったが、フットボール人生に新たな一歩を踏み出したレシーバーがいた。

健大高崎の野球部からは3人目の入部

第4クオーター残り3分34秒、自陣18ydからのシリーズ。ここから背番号82のWR横尾友都(2年、健大高崎)が投入された。最初は1年生RB蓑部雄望(佼成学園)の左アウトサイドゾーン。左に単騎で出た横尾は自分のサイドのLB(ラインバッカー)が縦に上がったのを確認して、深くセットしていたCB(コーナーバック)に接近。横尾がCBをブロックした瞬間、蓑部がその右を駆け抜けた。12ydのゲイン。ナイスブロックだった。

次のプレーは中央のランの動きからパス。同じく左に単騎で出た横尾は5ydまっすぐ走って、斜めに内へ。そこへQB庭山が投げ込む。横尾は胸に当ててはじいてしまったが、空中のボールに食らいつくようにキャッチ。これも12ydの前進だった。

横尾友都は龍谷大戦で飛んできたパスをはじいた(上)が、何とかキャッチ(下)

ハドルに戻ると、エースRBの山嵜大央(3年、大産大附)が「一発で捕れよ」とばかりに横尾の背中をたたいた。2プレー後、左で縦に抜けようとした横尾を庭山が見ていたが、相手CBのマークを振り切れず、ボールは飛んでこなかった。3度目の攻撃権更新はならず、これが立命の最後のオフェンスシリーズになった。

試合後に横尾に取材すると、彼がオフェンスで試合に出たのはこの日が初めてだった。すなわち、フットボール人生初の記録に残るパスキャッチだ。感慨深いものがあるかと思いきや、「焦りすぎて、(内へ)入っていく角度が悪かった。もっといいキャッチだったらうれしかったと思うんですけど、はじいてしまったんで」と苦笑いで返した。「機動破壊」が合言葉である健大高崎高(群馬)の野球部からパンサーズに入ったのは、RB北川浩久、DB茂木敬吾に続いて横尾が3人目だ。

競技は変わっても「ガチで日本一を狙うチーム」で

横尾は三重県鈴鹿市で生まれ育った。中学時代は津ボーイズでファーストや外野を守り、クリーンアップを担った。三重出身のコーチが健大高崎にいたこともあって、誘いを受けた。当時は親元を離れることに不安もあったが、「甲子園」「日本一」という目標のために群馬で頑張ることにした。

2019年春の入学時点で春夏6回の甲子園出場を誇る野球部は、想像以上にレベルが高かった。「あまり選手として成長できなかった。ベンチにも入れず、悔しかった」

大学ではアメフトで「冬の甲子園」出場を狙う

2年生の冬、野球部の監督から「立命館でアメフトやってみないか」と言われた。当時を思い出し、横尾は「冗談だと思いました」と笑う。聞いてみると、監督はパンサーズ側から「足の速い選手がいたら教えてほしい」との要望を受けていたそうだ。最初に健大高崎からパンサーズに進んだ北川さんと電話で話した。「甲子園を目指すのは高校野球と同じ」という話をしてもらい、アメフトに挑戦することにした。「中途半端なところで野球を続けるより、競技は変わっても、ガチで日本一を狙うチームでやることが人生のプラスになる」との思いも強かった。そして2年生の2月ごろにセレクションを受けた。

スポーツ推薦などでパンサーズに入るメンバーが集まってのトレーニングが、入学前の22年3月から始まった。慣れないボールでキャッチボールをした際、横尾の右手中指がグニャっと曲がり、入学早々に手術を受けた。半年ほどプレーできず、秋のシーズンに入った。試合に出ないメンバーに入って練習した。また右手首を痛め、手術。今年の春シーズンも棒に振り、ようやく7月末から全体練習に加わった。リーグ2戦目の前から試合に出るメンバーの練習に入れるようになり、キッキングゲームで出場。そして3戦目で初キャッチだ。

「ボールを捕ることに関しては何とかついていけるけど、けがで練習ができなかった分、ブロックが課題です。間合いとか当たり方を一から教えてもらって、やっと当たれるようになってきた。今日もみんなに『ええブロックやったで』と言ってもらえてうれしかった」

苦しいところで「いってこい」と言われるレシーバーに

入学前のトレーニング期間から意識してきた同期がいる。立命館宇治高の野球部から入った81番の伊藤優平だ。同じ野球からの転向組で同じWR。横尾がけがで足踏みしている間に、少し差がついた。伊藤は龍谷大戦の最初のシリーズに起用され、ロングパスを受けてゴール前に迫る活躍。今シーズンは2回のキャッチで87ydだ。ここから横尾の追い上げが始まる。

龍谷大戦の序盤にロングパスを捕ったWR伊藤優平

パンサーズは15年を最後に甲子園ボウルから遠ざかる。「ここからは僕らが続けて甲子園ボウルに出るつもりでいます。そういう流れを作っていきたい。関学戦や関大戦の苦しいところで『いってこい』と言われるぐらいのレシーバーになりたいです」。横尾はそう言いきった。

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