ラグビー

明治大学LO山本嶺二郎 創部100周年の日本一へ、重戦車支える「縁の下の力持ち」

5月の関東大学春季大会の東海大戦を前に、校歌を歌う山本(すべて撮影・斉藤健仁)

1923年に創部され100周年の節目を迎えている今季こそ日本一奪還を、と掲げているのが、「前へ」の伝統的かつ精神的スローガンで知られる明治大学ラグビー部だ。今季も関東大学ラグビー対抗戦で、王者・帝京大学、ライバルの早稲田大学と並んで、開幕から4連勝で首位を争っている。「重戦車」の誉れ高いFWの中軸となっている選手が、身長191cm、体重110kgの副キャプテン、LO(ロック)山本嶺二郎(4年、京都成章)だ。

FW陣の身体づくりを引っ張る

昨季、明治大は対抗戦では帝京大に敗れて2位だったが、続く大学選手権では準々決勝でライバルの早稲田大に敗れ年内でシーズンを終えた。

山本は大学1年時から試合に出ていたためキャプテン候補の1人だったが、同期の話し合いの末、副将に指名された。「100周年ということで、そんなにプレッシャーを感じ過ぎてはいないが、責任を持って引っ張っていかないといけない。(同期には)リーダーシップのある選手が多いので、ある程度、任せつつまとめるのが僕の仕事。責任を持ってやっています」と胸を張った。

3月、新チームの副将に就任した山本(左から2人目)。右隣はキャプテン廣瀬

キャプテンのCTB(センター)廣瀬雄也(4年、東福岡)は、「(山本は)プレーヤーとしても波がなく安定していますし、サイズアップなどFWの一番コアのところを中心選手として引っ張ってくれている」と期待を寄せている。

明治大・廣瀬雄也 「地球上で僕しかできない」100代目主将、王者奪還に向けた行動

「スクラム、モールはFWとして帝京大に負けたくない。フィジカルでも負けないように身体づくりをしてきた」と山本が言うように、日本一奪還のためには、大学選手権連覇中の王者・帝京大を倒すことが必須だ。週5回×1時間だった筋力トレーニングは、週6回×1時間半に増えて、重いものを上げるだけでなく、可動域のトレーニングなども加わり、強度も質も上がったという。

昨年11月の帝京戦。モールで相手選手を押さえ込む山本

私生活面も徹底 チームの完成度に手応え

山本は「全部そろってないと勝つことができない。昨季は優勝できると思っていたが、後から思えば、私生活で雑なところがあり、『日本一のチーム』かと言われればそうではなかったかな……」と振り返り、「FWをしっかりまとめつつ、私生活面も徹底していきたい」と話す。明治大ラグビー部は全員寮生活を送っている。寮長であるFB池戸将太郎(4年、東海大相模)とともに、山本は毎日の廊下、風呂、トイレの掃除や部屋の整理整頓などを徹底している。

また山本が「今季は上のチームだけがいい状態というわけではなく、下からの押し上げもあり、春から完成度が高く、早めの段階で次のステップにいけた」と手応えを口にする。夏の菅平合宿での練習試合で、Aチームは帝京大に21-38で負けたが、10月22日のジュニア選手権でCチームが競り勝ったことは大きな自信となったはずだ。

花園に3年連続出場 徐々に自信

山本は父・拓生さんが関西大学OBだった影響もあり、5歳から京都・洛西ラグビースクールで競技を始めた。京都産業大学のキャプテン三木皓正(4年、FL)、関西学院大学の副将・西村優希(4年、PR)は、京都成章高校のチームメートであり、幼なじみ。4きょうだいの次男で、三男の皓三郎(2年)は関西学院大ラグビー部のHO/NO8だ。

5月の関東大学春季大会の東海大戦。モールでFW陣をまとめる山本

「背はずっと大きかったですが、小学校時代は控えで目立った選手ではなかった」と振り返るが、西陵中時代は太陽生命カップで優勝し、京都選抜にも選ばれて日本一に輝いた。「中学校2年の時、先輩がケガをしてラインアウトのジャンパーをやるようになって、試合に出場できるようになった」

ただ、当時はそこまでラグビーに本気ではなく、「高校ではあまり続ける気はなかった」という。現に、京都成章の湯浅泰正監督(現総監督)に誘われて、一度は断ったという。だが、「やることもあまりなかったので」とその誘いを受け入れて、入部を決めた。

「すぐに辞めてしまうかも……」と思っていたが、身長185cmだったこともあり高校1年時から試合の出場機会を得て、徐々に自信をつけていった。「花園」こと全国高校ラグビー大会も3年連続で出場。高校3年時は優勝候補の一角と見られていたが、ベスト8にとどまった。

昨年11月の対帝京戦

明治大に入学したのは、高校1年時から誘われていたこともあったが、ワールドカップフランス大会に出場したSH福田健太(トヨタヴェルブリッツ)がキャプテンだった明治が大学選手権に優勝した姿を見て憧れたことが大きかった。また、父が司法書士の仕事をしており、将来的にその道に進む可能性も考え、法学部に入学したいという思いもあった。

好きなロックとして日本代表めざす

ロックとしての見せ場・ラインアウトに向かう山本

大学に入って体重は10kgほど増えたという。191cmの身長は、世界で戦っていくには、LOとしてはやや小さいため、「(リーグワンのチームで)フランカーをやれと言われれば柔軟に対応したい」と話す。ただ、ラインアウトの分析やサインを出す役割もあり、「ロックが好きなので、できればロックを続けていきたい。そしてリーグワンの試合に出て日本代表を目指したい」と意気込んでいる。セカンドキャリアに関しては、「何歳まで現役をやるかわからないが、司法書士だけでなく、コーチも面白いと思っている」と笑顔を見せた。

趣味は、Nintendo Switchなどのゲームをすることと、自分で豆を引きコーヒーをいれることだ。そして、大事にしている言葉は「縁の下の力持ち」だという。「ロックってそういう感じかなと思っています。僕は目立ったプレー、ラインブレークはできないので、セットプレーを中心に、細かい、小さなプレーをしっかりやって、チームにいて助かる選手になりたい」

シーズンは佳境「負けたくない」

最終学年ということで「後悔はしたくない」という気持ちに加え、京都成章時代に一緒にプレーした帝京大NO8延原秀飛(4年)、LO本橋拓馬(3年)、早稲田大のNO8村田陣吾(4年)らと「対戦は楽しみですが、負けたくない」という思いが強い。

グラウンドで意気込みを語る山本

いよいよ対抗戦は終盤に入り、11月5日は慶應義塾大学戦、11月19日は帝京大戦、12月3日には「明早戦」が控える。明治の練習場のある地にちなみ「八幡山の京都タワー」の異名を持つ山本副将は、FWのセットプレー中心になることはもちろん、私生活からチームを下支えする存在となって、日本一へ邁進(まいしん)する。

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