ラグビー

明治大学・大賀宗志 ヘルニアから復活したプロップ 今秋対抗戦初出場の早明戦で勝利

国立競技場で行われた「早明戦」で今季対抗戦初出場を果たした大賀宗志(すべて撮影・斉藤健仁)

関東大学ラグビー対抗戦Aグループ

12月4日@国立競技場
明治大学(6勝1敗、勝ち点28)35-21早稲田大学(5勝2敗、勝ち点23)

12月4日、関東大学ラグビー対抗戦、早稲田大学と明治大学による「早明戦」が行われた。98回目の伝統の一戦は9シーズンぶりに東京・国立競技場での開催となり、35000人を超えるファンを集めた。すでに対抗戦の優勝は帝京大学が決めていたが、勝利したチームが対抗戦2位で、大学選手権にシード校として出場できるため、ライバル同士の両校のプライドが激突した。明治大の副将の1人プロップ(PR)の大賀宗志(4年、報徳学園)が今秋対抗戦で初出場を果たし、ヘルニアからの復活を印象づけた。

「オガソウ」がカムバック

試合序盤から明治大が武器であるセットプレーを中心にFWでプレッシャーをかけ、前半25分までにBK陣が3トライを挙げて21-0と主導権を握る。その後は早稲田大の反撃にあったが、結局、後半も2トライを重ねた明治大が35-21で快勝した。通算成績は明治大の通算成績は明治大の41勝55敗2分となった。

明治大がリードして迎えた後半21分、メンバー外の選手たちから大きな拍手と「オガソウ!」と大きな声援が送られた。大賀が今秋の対抗戦で、初めてピッチに立った瞬間だった。大賀は20分と短い出場時間の中でも、セットプレーで存在感を示した。

大賀は控えだったが1年時から紫紺のジャージーに袖を、2年時から右PRの主力として「重戦車」FWのセットプレーの安定に寄与してきた。しかし、4年の春季大会は右膝のけがの影響で3試合の出場に終わり、さらに6月の同志社大との定期戦で腰を痛めた。ヘルニアだった。

1ヶ月ほどは練習に参加することはできず、その後もリハビリが続いた。115kgあった体重を食事制限で110kgに減量し、大学ラグビーシーンの佳境を迎えた「早明戦」で、どうにか戦列に復帰を果たした。

明治はシード校となったため、大学選手権は12月25日の準々決勝からの参戦となる。大賀は「もう大丈夫です! 試合に出場して勝利に貢献したい!」と破顔した。

「オガソウ!」と声援が送られ、ピッチに立った

梶村祐介・前田剛に憧れて

4歳から兵庫・白ゆり幼稚園でラグビーを始めて、小中学校では伊丹ラグビースクールで楕円(だえん)球を追った。小さい頃からPR一筋だった。中学校3年時、太陽生命カップ(スクール部)で初優勝、さらに兵庫県スクール選抜の一員として全国ジュニア大会でも初制覇を果たした。

兵庫県スクール選抜では明治大の同期でキャプテンのウィング(WTB)石田吉平(4年、常翔学園)、日本代表スタンドオフ(SO)李承信(神戸スティーラーズ)らとチームメイトで、SO李とは誕生日が1日違いのため、いまだに連絡を取り合う仲だという。「将来は日本代表になりたい」と話すPR大賀は、李の活躍が「刺激になっています!」と語気を強める。

高校は県外の強豪でプレーすることも頭をよぎったが、スクールの同級生とともに地元の強豪・報徳学園に進んだ。花園は3年連続出場を果たし、3年時はベスト8に進出。大学進学時、日本代表センター(CTB)梶村祐介(横浜イーグルス)、フランカー(FL)前田剛(神戸スティーラーズ)らの紫紺のジャージーを着て活躍する姿を目にして「報徳学園出身のすごい先輩たちが活躍していたので」明治大に進学したという。

高校3年時だけチームの事情でHOだった

スクラムで帝京大に完敗、悔しさをバネに

今季、新チームになるにあたって大賀は石田主将から副将に任命された。最初は「ビックリした!」というが、大学3年時、スクラムでの活躍を見れば納得の人選だった。ただ昨季の大学選手権の決勝では、帝京大にスクラムで完敗し、そのまま試合にも敗れた。

「(昨季の決勝では)スクラムが押されてしまい、悔しかった。セットプレーで勝てた試合もあったが、最後はセットプレーで落としてしまった。決勝でスクラムを押せるユニットを作っていきたい」(大賀)

明治大はフィットネスを鍛えるだけでなく、春からコンタクト強度を上げて練習に取り組んできた。また週5日間ウェートトレーニングをしているが、だいたい1時間だったところが1時間半となった。またFWはスクラム強化のために背筋のトレーニングにも重きを置いた。大賀も例えば、ベンチプレスは大学入学時よりも35kg増の155kgを上げるようになった。

試合に出られなかった時期、大賀は試合後に選手、全員に声をかけて方向性を一つにしようと心がけていたという。「ただ当事者じゃないので難しい部分もありました」と振り返る。「早明戦」で復帰を果たしたものの、3年のPR為房慶次郎(常翔学園)、伸び盛りのルーキーPR富田陸(大阪桐蔭)もいる。「最後にスタメンで出るのは自分じゃないといけないし、実力で先発の座を奪い取らないといけない」と語気を強める。

3年時の大学選手権準々決勝、大賀(中央)の活躍もあり勝利した

「勝負を決めるのは準備」

帝京大には春季大会こそ勝利したが、夏合宿では19-54で大敗。対抗戦でも13-29で敗れているが、ともに大賀はけがの影響で出場することはかなわなかった。明治大は、大学選手権では12月25日の準々決勝からの参戦となり、帝京大と対戦する決勝となった。

大賀は「帝京大にフィジカルで負けているとは思わなかった。(スクラムは)熟練度を高めていけば……」と静かに闘志を燃やしている。実際に、11月20日の帝京大戦後は、基本動作の確認も含めてほぼ毎日、滝澤佳之コーチの下、FWはスクラムの練習に精を出しているという。

好きな言葉は「勝負を決めるのは準備」

趣味はサウナで整えることだという。好きな言葉は高校、大学の先輩だった田中澄憲前監督(現・東京サンゴリアス監督)が大事にしていた「勝負を決めるのは準備」だ。「田中前監督は準備の段階でだいたい勝負が決まっているとよく話していました。練習から試合は始まっています」(大賀) 

大賀は来年からはリーグワンのチームでプレーする予定。ただその前に大学選手権で帝京大と再び対戦しリベンジし、日本一になるために、残り1ヶ月となった大学ラグビー生活において、1日、1日の練習に精を出して紫紺の「3」番を奪いにいく。

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