アメフト

立命館大学DB橋本龍人 関大との熱戦にケリをつけたインターセプトを「関学戦でも」

8点リードの場面で最初のインターセプトを決め、立命館大のDB橋本龍人は叫んだ(撮影・篠原大輔)

関西学生アメリカンフットボールリーグ1部 第5節

10月29日@神戸・王子スタジアム
立命館大学(5勝) 38-27 関西大学(4勝1敗)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部で10月29日、昨年2位の関西大学カイザーズと3位の立命館大学パンサーズが4戦全勝同士で戦った。点の取り合いとなったが、立命の勝利を決定づけたのは第4クオーター(Q)の二つのパスインターセプトだった。どちらもDBの橋本龍人(りゅうと、2年、大産大附)が関大のエースQB須田啓太(3年、関大一)のパスを奪った。

値千金のプレーに、前へ一回転してからガッツポーズ

昨年は関大が勝ったこの対戦。強力なランで主導権を握った立命が28-13とリードして最終第4Qに入った。関大は残り9分48秒からのオフェンスで須田が2本のパスを決めて敵陣へ。ゴール前30ydからの第2ダウン残り6yd。須田からの短いパスを受けたTEの桃木大治郎(1年、関大一)が右サイドを駆け抜けてTD(タッチダウン)。28-20と追い上げた。

直後の立命オフェンスは得点できず、関大が自陣22ydからオフェンス。残りは4分32秒。このシリーズで時間をかけずにTDできれば、逆転の目はある。第1ダウンは中央から須田にプレッシャーがかかって左へ逃げ、投げ捨てた。

そして第2ダウン、ボールは右ハッシュ。中央のランのフェイクを入れてから、須田が広い左サイドへロール。サイドラインが近くなって、左に単騎で出ていた主将のWR横山智明(4年、関大一)へ投げた。すると白い塊が光の勢いで横山の脇を通り抜け、ボールに飛び込んだ。前へ一回転してからガッツポーズしたのが、背番号6の橋本だった。まさに値千金のインターセプトだ。身長165cm、体重67kgの橋本は大男たちから手荒な祝福を受けた。

試合を決定づける二つ目のインターセプトを決めた橋本に仲間たちが駆け寄った(撮影・篠原大輔)

立命はゴール前29ydからのオフェンス。3プレー目にルーキーRB蓑部雄望(佼成学園)の17ydTDランで締めた。残り2分31秒で35-20となり、大勢は決した。しかも直後の関大オフェンスの最初のプレーで、橋本がこの日2本目のインターセプトを決めた。これで決まった。

相手主将と対峙し、「また同じの来るぞ」

試合後の橋本に会うなり、私は思わずこう話しかけた。「1本目のインターセプト、あの勢いでいってよく落とさんかったねえ」。すると立命の6番は「高校のときレシーバーもやってたから、キャッチは得意で」と言って笑った。いままでで一番のビンゴ(インターセプトを差すフットボール業界用語)やったんちゃう? と尋ねると、興奮気味の中年記者の勢いに押されたのもあったのだろう、「は、はい」と応じた。

それにしても見事なインターセプトだった。漫画なら「スパーン!!」という擬音が添えられるだろうか。1発目の場面、もちろん橋本は狙っていた。彼はDBの中でも外側にセットしたWRと対峙(たいじ)するCB(コーナーバック)。目の前にWR横山が来たとき、第2Qにパスを決められたシーンを思い出した。あれは横山がまっすぐ20yd弱走って止まり、カムバックするルートだった。だからこのプレーの前に「また同じの来るぞ。狙っとこ」と考えたそうだ。狙いは当たった。須田が横山へ投げた瞬間、橋本のターボエンジンに火がつき、ボールと横山の間に入ってかっさらった。「秋は1回もインセプできてなかったので、今日こそと思ってました」と、少し神妙な表情で言った。

中学生のころはサッカーの右サイドバックだった(撮影・北川直樹)

CBとしてスカウティングと同じぐらい大事な「直感」

中学時代までサッカーに打ち込んでいた。大阪東淀川フットボールクラブの右サイドバックだった。フィールド端っこのゾーンが主戦場というのは、現在のポジションであるCBと通じるものがある。大阪産業大学附属高校への進学が決まり、橋本は「サッカーは12年もやってきたし、何か新しいことをやりたい。でもアメフト部は怖そう」と感じていた。すると偶然、母の仕事仲間の女性の息子が大産大附高のアメフト部にいた。何かあっても守ってもらえそうだなと感じ、アメフトを始めることにした。

DBにWRにRB、キッカーもやった。高2の秋はクリスマスボウル進出をかけた関西地区決勝で関西学院(兵庫)と対戦。エースRBだった山嵜大央(現・立命館大3年)のけがで、当時はWRが本職だった橋本が代役を務めて奮闘したが、8-20で敗れた。「産大高校ではメンタルを鍛えてもらいました。メンタルが強くなって、アメフトがうまくなるんです」と橋本。

大学ではDBの上級生にけが人が多かったこともあり、1年生からスターターを任された。パントリターナーとしても出て、鋭いステップでスタンドを沸かせた。6-10で敗れた関学戦では「会場全体から受ける圧が、ほかの試合とは全然違う」と感じたそうだ。その試合の終盤でCBの先輩がインターセプトを決めた。いまXリーグのパナソニックでプレーする西田健人さんだ。「ニシケンさんは僕がディフェンスの選手で初めて『うまい!』と思った人です」と橋本。職人のような立ち居振る舞いを見せていた西田を尊敬し、目標にしている。

橋本があこがれる先輩の西田さん(24番)は昨年の関学戦でインターセプトを決めた(撮影・北川直樹)

CBにとって大事なのはレシーバーだけを見るのではなく、QBの目線を見ることだと考えている。そしてスカウティング(相手の分析)はもちろん大事だが、直感も同じぐらい大事だと橋本は言う。試合中はフィールドの端から全体を見渡し、異変があったら声をかけるようにしている。「相手が変な隊形できたときは、すぐ言うようにしてます」

いざ関学戦「コミュニケーションをとって支えていけたら」

いよいよ11月11日にヤンマースタジアム長居(大阪)で関学に挑む。「ディフェンスは今年から出てる人が多いので、去年から出させてもらった僕らがしっかりみんなとコミュニケーションをとって支えていけたらと思います。関学はいろんなレシーバーに投げてくるので的を絞りにくいですけど、試合までにいっぱい練習して、勝ちにいきます」。次も狙いを定め、光の速さでパスを奪う。

2度目の秋の関学戦で輝き、立命を2015年以来の甲子園ボウルへ導けるか(撮影・北川直樹)

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