アメフト

関西大DB須川宗真 高校日本一経験者が描いた下克上物語、アグレッシブに完結させる

第2節の龍谷大戦でインターセプトからTDを決めた関大DB須川宗真(撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は10月28、29日に神戸・王子スタジアムで第5節の4試合がある。29日には昨年2位の関西大学カイザーズと3位の立命館大学パンサーズの全勝対決がある。昨年の対戦で勝っている関大のDB須川宗真(4年、佼成学園)は「ランにもパスにもアグレッシブにいく僕のプレーを見てほしい」と話している。

西宮から東京に引っ越し、佼成学園へ

須川はDBの中でもオフェンスの外側に開いたWRの前にセットするCB(コーナーバック)だ。経験に裏打ちされた嗅覚(きゅうかく)があり、鋭い読みで相手のパスを阻む。昨年の関西学院大学戦でインターセプト。今シーズン第2節の龍谷大学戦では序盤に相手のパスを奪い、そのままエンドゾーンまで37ydを駆け抜けた。身長173cm、体重71kgと大きくはないが、ランナーにも果敢に向かっていく。地をはうような低いタックルを何度も決めてきた。

フットボールを始めた小6のころはQBだった(撮影・北川直樹)

兵庫県西宮市で生まれ育った。小6のとき兵庫ストークスでフットボールを始める。チームメイトには、いま関大のエースQBの須田啓太(3年、関大一)がいた。「須田がセンターで、僕がQBでした」と須川。中2の12月、東京へ引っ越した。周囲にアメフトを続ける環境がなく、野球をしていた。高校入試に向けて勉強も頑張った。

高校から再びアメフトをやりたくて、中央大学附属高校を受験したが、失敗。当時、クリスマスボウルで初優勝したばかりの佼成学園へ進んだ。「第2志望だったけど、佼成に行ってほんまによかった」と須川。クリスマスボウルに3年すべて出て、高1のときは関大一、高2のときは立命館宇治に勝って高校日本一。だが、ラストイヤーは横浜スタジアムで立命館宇治にリベンジされた。「そういう意味でも、僕は立命に対しては特別な思いを持ってます」

自然とできた低いタックル、あの一発を求めて

大学進学にあたっては、関大のほか関学からも誘いを受けていた。「めちゃくちゃ悩みました」。心が関学に傾いた時期もあったという。「日本一になるのが当たり前っていう高校に行ってて、関学もそうじゃないですか。それやからこそ強いと思うけど、そういうチームを倒して日本一になる方が、うれしさも得られるものも大きいんじゃないかと考えました。関大が日本一になったときのコーナーの人や、って言われたかった」。決断の理由を口にして、須川が笑った。

昨秋の関学戦では高校の先輩であるWR梅津一馬へ投じられたパスを奪った(撮影・北川直樹)

派手に映るインターセプトはもちろんCBの醍醐味(だいごみ)だが、細身の体で決死のタックルを仕掛ける姿も同じようにカッコいい。昨秋のシーズン中、私が須川と初めて話したのもタックルのことだった。ある試合で関大の勝利が間違いない展開になり、須川はベンチに下がっていた。彼がチームエリアの端っこに立って戦況を見つめていたとき、すぐそばで写真を撮っていた私は思わず、「ええタックルするなあ」と話しかけてしまった。「あざっす。うれしいです」。関大の1番はさわやかに笑って、そう返した。

低く沈んで相手の懐に入っていくタックルは、誰かに教えてもらったものではない。高3秋の早稲田実業戦。パスを捕った相手WRにタックルに向かうと、自然と体が動いて、低く入れた。「ああ、これが自分のしたいタックルか」。そう感じた須川は次の練習から、あの日の一発を求めてタックル練習を繰り返した。そして自分の武器になった。

これはいい形で入ったタックルではないが、須川の低いタックルは要注目(撮影・篠原大輔)

二流のCBじゃないところを示す

対する今シーズンの立命オフェンスは多彩だ。エースQBとなった竹田剛(2年、大産大附)はロングパスも自由自在で、RBの山嵜大央(3年、大産大附)と蓑部雄望(1年、佼成学園)には常に独走タッチダウンの脅威がある。須川は言う。「去年はウチのDLが相手に勝ってて、DBがランプレーに絡むのは少なかった。でも今年は僕らがタックルする回数が増えてくる。ロングゲインを防げるかどうかが、勝利のカギになってくると思う」

CBがロングパスを警戒すると、一般的にはランへのサポートが遅くなると考えられるが、彼は鼻で笑う。「長いのがあるからって前のパスに寄れへんかったり、ランにいけなかったりするCBは二流やと思ってますんで」。これまでの経験の中で、そう考えるようになったという。須川のCBとしてのプライドだ。

大学進学のときに描いた下克上のシナリオは、果たせてはいない。最後のチャンスだ。かわいい顔して、パンサーズに食らいつく。

立命戦のあと、どんな話をしてくれるだろうか(撮影・篠原大輔)

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