アメフト

関西大学DB松井将一 流れをつかんだビッグプレー、アメフトで数々の恩返しを誓う

ディフェンスでTDするビッグプレーに大興奮の関大DB松井将一(すべて撮影・篠原大輔)

関西学生アメリカンフットボールリーグ1部 第4節

10月15日@神戸・王子スタジアム
関西大学(4勝) 35-9 神戸大学(4敗)

アメリカンフットボールの関西学生リーグ1部は第4節を終えた。14年ぶりの甲子園ボウル出場を目指す関西大学は神戸大学を相手に苦しんだが、ディフェンスのビッグプレーをきっかけに35-9と開幕4連勝を飾った。10月29日には立命館大との全勝対決に臨む。神戸大戦で流れを引き寄せたDB(ディフェンスバック)は、最初の大一番でも輝くつもりだ。

インターセプトからのTDに大興奮

前半を終えて7-6と関大のリードはわずか1点。後半先に1TD(タッチダウン)を加えたが、1FG(フィールドゴール)を返され、14-9となった。まだまだ試合の行方は分からない。勝負の第4クオーター(Q)に入ってすぐ、関大に大きなプレーが出た。

神戸大の自陣29ydからの第2ダウン残り10yd。ボールは右ハッシュ。ギュッと11人が集まったフォーメーションから、左へランのフェイクを入れてのパス。第3節までパス獲得距離リーグトップの神戸大QB榮大志(さかい、3年、清教学園)に、2人のDLとブリッツで入ったLB東駿宏(1年、大産大附)が襲いかかろうとする。中央付近で奥へ走ったWR岡田堂生(3年、星陵)へ投げたが、短い。ボールの飛んだ先にいたのは、関大DB松井将一(しょういち、3年、箕面自由学園)だった。

松井はボールをキャッチすると、まず右へ走ろうとしたが、やめて左へ。東らのブロックで左サイドライン際を駆け上がる。内へカットを切ると神戸大のOLが何人もいたが、タックルできない。松井は棒立ち状態になってきたが、とにかく足が止まらない。最後に体当たりで倒されたが、そこはもうエンドゾーンだった。大学では初めてのTDが貴重な追加点となり、仲間たちが祝福に駆け寄った。本人は大興奮。サイドラインに戻ってくると観客席に向かって右腕を突き上げ、「甘いわ、神戸コラ!」と吐き捨てた。

インターセプトして駆け出すと、仲間が反応して相手をブロックに向かってくれた

仲間への思いが強い「人情派」

10番のビッグプレーがカイザーズに流れをもたらし、オフェンスが二つのTDを加え、ディフェンスはその後失点なしで切り抜けた。関大の磯和雅敏監督は松井のTDについて、「彼が活躍してるのを初めて見ました」と言って報道陣を笑わせた。笑わせておいて、「あのタッチダウンで気持ち的にホッとして、そのあとはチームとしていつもの力を発揮できました」とたたえた。松井と同学年のQB須田啓太(3年、関大一)に松井はどんな人かと尋ねると、「バリ、アホっすけど、人との約束は守ります」。私が、人間的にはいいヤツってことかと問えば、「そういうことです」と須田は笑った。

そのときに思った。長らくアメフトを取材していると、箕面自由学園高校出身の選手に対する評としてしばしば「仲間への思いが強い」というものがあるが、松井もそういう男なんだろうなと。そして松井と向き合った。

「ゾーンに入ってたんですかね。正直あんまり覚えてないです」と笑った松井。この日はDBの先輩で慕っている上柴遼介(4年、大阪学芸)が試合に参加できず、「その思いも背負ってやってました」。やはり出てきた。人情系のエピソードが。インターセプトについては「スカウティングで向こうのQBは投げるターゲットをジッと見るタイプやったんで、狙ってました」と明かした。

ディフェンスの最後尾から目を光らせる

父が箕面自由学園のアメフト部OBであることもあり、松井も高校からアメフトを始めた。1年のとき少しだけRBをやった時期があって、そのときにファンブルリカバーTDをしたことがある。今回はそれ以来のTDだったそうだ。高校の同級生では明治大学のRB廣永晃太郎や法政大学のDB小田隼士が先に活躍していて、「俺もそろそろ光らなアカンな」との思いがいつも頭にあった。この日、まさにキラリと光るプレーができた。

父に最高のシャッターチャンスを

関大では1年生のころから出場機会があったが、アサイメントやアジャストに苦戦した。2年のときには手首を骨折。手術すると秋のシーズンを棒に振ってしまう。「DBの基本をたたき込んでくれた金山さんと一緒に試合に出て恩返しがしたくて、手首が折れたままやってました」。また出た人情物語。いまXリーグのエレコム神戸でプレーする金山将龍は当時の副将で、立命との試合で二つのインターセプトを決めた人だ。最も慕う先輩と2022年のシーズンを戦い終え、ようやく松井は手首を手術した。

いざ立命戦。「タックルはつかんだら絶対に離さない。いいレシーバーが多いですけど、パスカバーでも目立てたらと思います。勉強では親に恩返しできないんで、アメフトでします」。締めも人情話だ。アメフトを始めるきっかけになった父は、息子のプレーを近くで見たいと、試合の日はチームカメラマンのビブスをつけ、フィールドレベルで写真を撮ってくれている。大一番でも、父に最高のシャッターチャンスをプレゼントしたいところだ。

2年連続の立命戦勝利へ、松井のタックルもカギを握る

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