京大WR阿部俊介　憧れのQB泉と最後の年「いいキャッチをして、少しでも恩返しを」

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アメリカンフットボールの関西学生1部リーグは、10月28日に第5節で関西学院大学と京都大学が対戦。京大が、主将でエースQB4年目の泉岳斗（4年、都立西）を中心に奮闘し、先制タッチダウン（TD）を奪って序盤を盛り上げたが、関学が地力の差を見せて徐々に圧倒。終わってみれば、2023年の「関京戦」も関学が危なげなく勝利した。京大は、泉のメインターゲットとして一番多くのパスを受けたWR阿部俊介（2年、東海）が試合後のサイドラインで号泣。泉と組む最後の関京戦に負け、悔し涙を流した。

関京戦　先制するも大敗、涙

第1クオーター（Q）、京大が最初の攻撃シリーズで、泉からWR杉浦洸（3年、大阪桐蔭）にフック＆ゴーのパスを通し、TDで先制。直後のシリーズで、関学QB鎌田陽大（4年、追手門学院）がWR鈴木崇与（4年、箕面自由学園）へフェードを決めてTD、7-7に。その後、関学はRB伊丹翔栄（3年、追手門学院）が独走を連発。2本のTDを挙げて京大を引き離す。

京大もやられてばかりではない。第3Q早々に泉から阿部へのロングパスが決まりTD。主将の泉を中心に果敢に攻め、関学守備相手に渡り合う。しかしその後はターンオーバーから続けて失点。終盤にTDを1本返したが、45-20の大差で王者関学に軍配が上がった。

「この悔しさを言葉にするのは難しいですけど、整列しているときに関学の校歌が聞こえてくると、自然と泣いてしまいました」。活躍したからこその責任感の表れか、阿部ははばかることなく涙を流した。この試合で泉のパスを受けること8回。126yd1TDを稼いだ。今年の春から出場機会を得た阿部にとっては、これが初のTDだった。WRとして勝負できていた分、より一層の悔しさが込み上げてくる。

「試合前は正直、自信っていうのはそんなに持ててなくて。でも、相手を過大評価しすぎないように、っていうのは心がけていました。関学を相手にするというよりは、自分のフットボールをちゃんとフィールドで表現する、ってことに集中しようと考えてました」

無我夢中の初TD　キャッチした記憶は「ないです」

初めての関学戦で、通用したと感じる部分もあった。印象深いのはやはりTDを取ったパスキャッチ。守備がターンオーバーでボールを回してくれた、直後のプレーだった。

「5ydで1回内側に入るフェイクをして、CBを外抜きしていくルートでした。16番（関学のCB）が引っかかってくれたので、『行ける！』っていう手応えはありましたね」。このパスパッケージは練習のときから泉のパスが飛んでくることが多く、「僕に投げてくれるんじゃないか」というイメージがあったという。

「ボールが飛んできて、それを見たところから記憶がないんです。気づいたらキャッチしてて、TD取ってたっていう感じでした」。無我夢中で走り切り、喜んでいた。

一方で課題も感じた。「フィジカルがまだまだで。守備がゾーンカバーの時はいい勝負ができてましたが、マンツーマンのときは勝ちきれない場面が多かったですね」。まだ2年生。WRとしての伸びしろはたくさんある。

高校ではバスケ　アメフトのために京大を目指す

愛知県屈指の進学校、東海高校の出身。アメフト部もあったが、バスケットボール部に入部し、ガードとフォワードでプレーしていた。高校2、3年のときの担任だった井上勝憲先生（アメフト部顧問）に「大学でも何かスポーツを続けたい」と話したときに、京大のアメフト部を勧められた。「これがきっかけで、そこからはアメフトを始める前提で京大を目指すようになりました」と阿部は話す。

中学からずっと仲が良かった同級生に、現在、神戸大学医学部医学科に通いながらアメフト部レイバンズでプレーしている、内川篤がいた。「内川は医学部を目指してたので大学でアメフトをする気はなかったんですが、あいつには『大学行ったらアメフトするわ』って話をしていました。今でも、むちゃくちゃ仲良いです」。ともに浪人を経て大学に入り、今年レギュラーになった。同じリーグで活躍する同級生の話題になると、声が明るくなる。

QB泉のパスで何度も骨折・脱臼

京大を目指しているときから、ギャングスターズの情報は注視してきた。もちろん、QB泉岳斗の存在も知っていた。「泉さんとやれることに憧れがあって、YouTubeで試合動画を見てました。『もし受かったら一緒にできる』って」

周囲に1年遅れて、ダム建設など土木工学を学ぶ京大工学部地球工学科に入学し、ギャングスターズの一員に。ずっと目指してきたアメフトだったが、実際にプレーすると「バスケとは全然違うヒットが、ちょっと怖いな」と思った。

「あと困ったのは、泉さんの投げた球を初めて捕るってなったときに、めちゃくちゃ速くて、突き指しまくりました。脱臼や骨折も何回かしました（苦笑）」。1度でなく何回か、というのが阿部の苦労を物語る。

一方で、QBとして、先輩として、泉は的確なアドバイスをしてくれる、と感謝を口にする。「僕のルートの悪い点や課題をしっかり見て教えてくれるので、とてもありがたいですね。試合中にもまめに声がけをしてくれます」。憧れの泉とプレーできるWR生活は、充実の日々だ。

「泉さんの球を受け続けてきて今の自分がある」

泉と一緒にやれる試合は、リーグ戦としては「あと2試合」。どんなプレーをしていきたいかと聞いた。すると、すかさず「甲子園へ行くんで、2試合じゃないです」と指摘された。試合に負けたことを引きずらず、しっかりと本来の目標を見据えている点が頼もしい。

「泉さんの球を受け続けてきて今の自分があるんで、試合で1プレー1プレーでいいキャッチをして、少しでももらってきたものを返していきたいです」

自信を持つ「高さとスピード」で勝負し、残りの関西大と立命大に勝って、甲子園ボウルへの希望をつなぐ。