陸上・駅伝

青山学院大・鳥井健太 初のハーフで世田谷246優勝、出雲での反省生かし箱根駅伝へ

初のハーフマラソンで優勝を飾った鳥井(すべて撮影・井上翔太)

第18回世田谷246ハーフマラソン 

11月12日@駒澤オリンピック公園陸上競技場発着の21.0975km
1位 鳥井健太(青山学院大1年)1時間2分35秒
2位 塩出翔太(青山学院大2年)1時間2分51秒
3位 白石光星(青山学院大3年)1時間2分52秒

11月12日に開催された第18回世田谷246ハーフマラソンで、青山学院大学の鳥井健太(1年、清風)が、初のハーフマラソンながら1時間2分35秒で優勝を果たした。大学駅伝デビューとなった10月の出雲駅伝では悔しい結果に終わったが、年明けの箱根駅伝メンバー入りへ、大きなアピールとなった。

「自分の長所を生かす場面」と上りで勝負

例年11月の第2日曜日に行われる世田谷246ハーフマラソン。今年は定員をコロナ禍前の水準となる1800人にして開催された。駒澤大学や明治大学など、世田谷区を拠点に練習している大学のみならず、青山学院大や中央大学といった強豪からも箱根駅伝をめざすランナーが多くエントリーされた。青山学院大にとっては、このレースが箱根駅伝のメンバーを選ぶ上での大きなポイントになっていることも知られている。

肌寒く、細かい雨も降る中で始まったレースは、序盤に中央大の浦田優斗(3年、國學院久我山)が飛び出した。2位集団にいた鳥井は「前半は淡々とした下りが多いコースで、後半から上り坂が増える。自分自身、上り坂が得意だと思っているので、そこで仕掛けようと思っていました」。住宅街や河川敷を走る場面でも焦ることなく「前についていこうと思っていました」。

雨が降り寒い中、鳥井は後方からスタートした

世田谷ハーフのコースの特徴は、多摩堤通りを左に折れて目黒通りに入った15km過ぎにある急勾配の上り坂。ここで鳥井は「自分の長所を生かす場面」と勝負をかけた。「優勝しか狙っていなくて、上りにはすごい自信があったので、そこで追いつくことができるかなと」。言葉通りに集団の前に出ると、そのまま引き離した。「タイムも62分30秒前後で走れて、目標の順位とタイムが出せたことへのうれしさを感じています」

ゴールテープを前に、目標通りの走りができた喜びがあふれる

「夏合宿で頑張らないと」と一念発起

上り坂での強さは、今年の夏合宿で身につけたという。「何度か坂TT(タイムトライアル)が行われるんですけど、そこでいい結果を収めることができて、だんだんと自信がついてきました」。それまでは「青学の中では下の方の選手」という危機意識があり、「夏合宿で変わらないと、自分はやっていけない。坂TTをしっかりこなさないと、埋もれていく一方になる」と一念発起した。こういった「何とか挽回(ばんかい)したい」という強い気持ちが夏合宿での結果につながったと振り返る。

ただ、大学駅伝デビュー戦となった出雲では、悔しさを味わった。5区を任されたが区間10位。城西大学の桜井優我(2年、福岡第一)に抜かれ、順位を一つ落としてしまった。「自分はただ単に速いタイムを持っているだけの選手だということを再認識しました。周りの選手と比べて『強さ』という部分が足りていない」と駅伝の難しさを痛感した。全日本大学駅伝では13人のチームエントリーメンバーに入ったものの、当日に出走することはなかった。

出雲では襷(たすき)を受けた時点で先頭を行く駒澤大学と約1分差がついていたことで、「自分自身がどうにかしなきゃいけない」という気持ちが前面に出てしまい、冷静さを欠いたのだという。初の駅伝を終えた後、原晋監督からは「ここが強くなるときだぞ」と言われ、一度失った自信を取り戻すべく、練習に励んできた。世田谷ハーフでは先輩たちから「最初は落ち着いて入れ」と言われたことも後押しし、序盤から突っ込むことなく、冷静に勝負どころを見極められた。出雲での反省を生かせたことも、今回優勝できた一つの要因である。

今回の優勝で出雲駅伝後に失った自信を取り戻した

駒澤大学の「2季連続三冠」を止めるためにも

箱根駅伝は、上りでの強さを存分に発揮できる「山登り」の5区出走を希望しているという。「5区は逆転がすごく起きて、自分の中では一番かっこいい区間だと思っているので走りたいです」。5区のチーム内ライバルは1年のときに経験している若林宏樹(3年、洛南)や昨年の出走はなかったものの「山登り」を希望していた黒田朝日(2年、玉野光南)あたりか。振り返れば前回の箱根駅伝は若林が体調不良で走ることができず、チームは5区と6区で戦略の見直しを迫られる事態に。原監督は「1年間かけて(山登りと下りは)トレーニングする」と語っていた。鳥井はその取り組みを象徴する選手かもしれない。

原晋監督、山登り山下りは「1年かけトレーニング」

世田谷ハーフでは、2位に塩出翔太(2年、世羅)が入り、3位も白石光星(3年、東北)と1~3位を青山学院大勢が占めた。鳥井は「すごく喜ばしいことではあると思うんですけど、ここで油断してはいけないと思っています。自分が箱根駅伝を走らせていただくためには、これからの合宿でアピールをしっかりしていかないと。自分自身、単独走が少し苦手な部分があるので、そこを重点的に練習を積み重ねていきたいです」と気を引き締める。

青山学院大は表彰台を独占。左から白石、塩出、鳥井

1年目から箱根駅伝出走をつかむため、そして出雲駅伝と全日本大学駅伝を制した駒澤大学「2季連続の学生3大駅伝三冠」を止めるため。世田谷ハーフの結果からは、青山学院大として「このままでは終われない」(鳥井)という思いが伝わってきた。

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