陸上・駅伝

特集:第102回関東学生陸上競技対校選手権

青山学院大・佐藤一世 「駅伝男」が強い思いを持って臨む学生最後のトラックシーズン

男子2部10000mで6位となった佐藤。学生ラストイヤー、チームを引っ張る自覚で臨む(すべて撮影・藤井みさ)

第102回関東学生陸上競技対校選手権 男子2部10000m決勝

5月11日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

1位 ヴィクター・キムタイ(城西大2年)28分24秒57
2位 ネルソン・マンデランビティ(桜美林大2年)28分25秒45
3位 リーキー・カミナ(創価大3年)28分25秒57
4位 唐澤拓海(駒澤大4年)28分26秒83
5位 片川祐大(亜細亜大3年)28分27秒51
6位 佐藤一世(青山学院大4年)28分28秒55
7位 並木寧音(東農大4年)28分29秒63
8位 伊藤蒼唯(駒澤大2年)28分30秒34

5月11日の関東インカレ1日目、男子2部10000m決勝で青山学院大の佐藤一世(4年、八千代松陰)が6位に入った。日本勢トップを目指していたという佐藤は悔しさをにじませながらも、一定の手応えも感じさせるレースとなったことをうかがわせた。

冷静に集団につき入賞「70点」

男子2部10000mはエントリー人数が多く、2組に分かれてのタイムレース決勝という形で行われた。資格記録順にエントリーされ、2組には各校の留学生も多数名前を連ねていた。先に行われた1組目では帝京大の西脇翔太(4年、名経大高蔵)が28分38秒43で組トップとなり、このタイムを念頭においた上で2組目がスタートした。

集団の前方は留学生が占め、入りの1000mは2分52秒、次は2分57秒、2分45秒と大きなペースの上げ下げがあった。その後は1000m2分48秒から55秒前後でレースは進んだ。留学生の後ろには駒澤大の唐澤拓海(4年、花咲徳栄)と伊藤蒼唯(2年、出雲工)、城西大の山本唯翔(4年、開志国際)、東京農業大の並木寧音(4年、東京実業)、亜細亜大の片川祐大(3年、報徳学園)らがつき、佐藤も彼らとつかず離れずで集団の中ほどの位置をキープしていた。

終盤は積極的に前に出て先頭をうかがうシーンもあった

佐藤はハイペースになるか、ペースのアップダウンがあるかの2通りを予想しており、後者になったため、最後にペースアップした際にしっかりとついていけるようにしようと思いながら走ったと話す。大集団のままレースが進み、8000mをすぎると徐々に縦長に。ラスト600mで唐澤が先頭に立ちペースアップすると、桜美林大のネルソン・マンデランビディ(2年)、城西大のヴィクター・キムタイ(2年)、創価大のリーキー・カミナ(3年)、片川が反応。佐藤は少し離されながらも食らいつき、組6着でのゴールとなった。

「目標は日本人トップだったので、そこを取れなくて悔しいんですけど、過去3年間のトラックシーズンと比べれば走れているので、負けていながらも自信につなげていいのかなっていう風には思います」。レース直後に感想をたずねるとそう口にした佐藤。重ねてレースの出来を得点で表すと? と聞いてみると「70点かなって思います」。最後までしっかり先頭にいたにもかかわらず、ラストで離されてしまったことが30点足りない部分だと話す。

「All For Green」のスローガンのもとに

昨シーズンは駒澤大が学生3大駅伝三冠を達成し、青山学院大は無冠に終わった。特に箱根駅伝で勝てなかったことは、本当に悔しかったと佐藤は口にする。今日も駒澤の選手と走るということで意識をしていた。「チームとしても、個人としても倒すべき相手」と思っていたからこそ、唐澤に先着されたのは「本当に悔しいです」と素直な思いが口から出た。

唐澤(左)にラストで離され、2秒弱及ばなかった。「悔しいです」

先輩たちが果たせなかった「優勝」をしっかり達成し、駒澤にリベンジしようとチーム内で話し合い、今年のスローガンは「All For Green~軌跡と躍進~」に決まった。「すべてを緑に」、1年間通して青学の選手たちが活躍し、表彰台に乗ったり、優勝したりして緑を目立たせるように。そして「緑のために」、一人ひとりがチームのために頑張ろう、という意味を込めた。

佐藤は大学駅伝デビューとなった1年時の全日本大学駅伝5区でいきなり区間新で区間賞。今年の箱根駅伝こそ7区区間7位だったが、その他の出場した駅伝ではすべて区間3位以内の好成績をおさめ、「駅伝男」とも呼ばれることもある。自分でも「駅伝が好き」という気持ちが大きく、トラックシーズンにはそこまで思いを持っていなかったが、4年生になってそれも変化した。「今年は前半シーズンからしっかり結果を残して、チームに勢いをつけられればなと思っています」

強い先輩の穴は自分が埋める

一つ上の代には近藤幸太郎(現・SGホールディングス)、岸本大紀(現・GMOインターネットグループ)ら、実力ある選手がそろっていた。競技面だけでなく、プライベートでもお世話になった大好きな先輩たち。彼らが抜けた穴はチームとしても大きいが、その穴を埋めるのは自分しかいない、という強い思いがある。

「最終目標の箱根は絶対に勝つという気持ちです。そのためにも前半シーズンや、出雲駅伝や全日本大学駅伝でもしっかり勝って、勢いをつけて箱根駅伝に臨みたいと思っています」。個人としては5000m13分30秒台、10000mはまず28分1桁台を出して、近藤の持つ青学記録(5000m13分34秒88、10000m28分10秒50)を更新することが目標だ。

4月22日の日体大記録会では28分23秒62をマークし、それまでの自己ベストを30秒近く更新した。このまま練習を積んでいけば10000m27分台が出るという感覚もあるので、まずはけがをせずしっかり練習を継続することが大事だと話す。

レース後に並木、片川らとお互いをねぎらい合う

チームとしては現状、故障上がりで復帰段階の選手が多く、本来は関カレに出場するべき主力選手がまだレースに復帰できていない。昨年も実力のある選手はいながらも、故障などで100%の状態で駅伝に臨めていたとは言えなかった。

「まずはみんなスタートラインに立つのが大事なのかと思います。そのうえで夏合宿をしっかりこなして、合宿をこなすことができれば体力、筋力などの競技面だけじゃなく、自信を得られて精神面も強くなると思うので。去年の先輩が抜けた穴は大きいですけど、今年は本当に総合力で戦っていきたいなと思います」。チームを引っ張る存在としての自覚と、「勝ちたい」という強い思いを持って臨むラストイヤー。「駅伝男」のさらなる活躍を楽しみにしたい。

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