陸上・駅伝

特集:第102回関東学生陸上競技対校選手権

青山学院大・小原響「2年前に戻った」 ジョグの大切さ知り、つかんだ復調のきっかけ

男子2部3000m障害で優勝した小原(すべて撮影・藤井みさ)

第102回関東学生陸上競技対校選手権 男子2部3000m障害決勝

5月14日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

1位 小原響(青山学院大4年)8分36秒09
2位 黒田朝日(青山学院大2年)8分38秒44
3位 黒木陽向(創価大2年)8分53秒53
4位 溝口泰良(創価大4年)8分55秒87
5位 山下悠河(青山学院大4年)9分01秒02
6位 緒方快(関東学院大2年)9分02秒16
7位 小早川凌真(城西大2年)9分04秒72
8位 原秀寿(國學院大3年)9分04秒84

関東インカレ最終日の5月14日に行われた男子2部3000m障害決勝で、青山学院大学の小原響(4年、仙台二華)がチームメートの黒田朝日(2年、玉野光南)との一騎打ちを制し、先輩としての意地を見せた。2021年の日本選手権で5位に入った実績を持つ小原だが、昨シーズンは低迷。復活を印象づける優勝だった。

1週間以上も前から考えていたレースプラン

前日に行われた予選は、黒田が8分54秒94でトップ通過。2番目のタイムが小原の8分59秒19だった。予選で8分台をマークしたのは、8分59秒88だった創価大学の黒木陽向(2年、九州学院)を含む3人で、優勝争いもこの3人を中心に展開された。

最初の1000mを2分53秒で通過し、2000mに向かうところで黒田と小原による一騎打ちとなった。「黒田はタフさがある選手だということは、普段の練習から分かっていたので、1000mから2000mあたりは黒田が走っていくだろうと。ここで粘れば(自分に)勝機があると思っていました」と小原。ラスト1周を前にした水濠を越えたところで、スパートを仕掛けた。黒田を抜き去り、先頭へ。最後は2秒以上の差をつけ、チームメートが応援していた観客席の方へアピールしながらゴールした。

ラスト1周を前にしたところで一気に勝負を仕掛けた

「1週間以上も前から(勝負をかけるなら)あそこかなと思ってました。途中は苦しかったんですが、何とか気持ちで走りました」と小原が言えば、昨年の関東インカレでこの種目3位だった黒田は、「ラスト1周の手前までずっと引っ張らされちゃったので、小原さんの作戦勝ちかなと思います。自分はこのレーススタイルしか、今のところ使えるものがない。(作戦の)手札もこっちの方が少なかったです」と振り返った。

「土台を作って、その上にスピードを乗せていく」

優勝タイムの8分36秒09は、大会新記録でもあった。ただ小原は「自分が持っている記録はもっと上にありますし、自分が目指している世界大会は、まだまだ遠くにある」とこの日のタイムには関心がなさそうだった。むしろ「やっと2年前に戻った」という感覚がある。

小原は下級生のとき、3000m障害のトップランナーに名乗りを上げた。秋に開催された1年時の関東インカレで優勝。翌年は日本選手権で5位入賞を果たし、このときは8分27秒80の自己ベストをマークした。しかしその後、日本インカレや駅伝シーズンへと向かう夏合宿の間に、故障してしまった。「左の座骨神経痛が出て、そこから肉離れとか、色々ありました」。3年目のシーズンが始まったときは「ワールドユニバーシティゲームズに出たい」という思いがあり、足が痛い状態で大会に出場していたときもあった。「どんどんネジが外れるというか、スピードが思ったより出ないという時期が続いていました」

優勝タイムには満足せず「目指している世界大会は遠くにある」

苦しい時期を経験したからこそ、学べたことは? と尋ねると「ジョグの大切さ」を挙げた。「体のケアとか補強トレーニングも大事ですけど、陸上で一番ベースになるのはジョグです。(原晋)監督は『しっかり土台を作って、その上にスピードを乗せていく』といつもおっしゃるんですけど、自分はそこをおろそかにしていた部分があったのかもしれません」

未出走の駅伝は「全部出るつもりです」

普段の練習から、ジョグを多めに採り入れるようにした。すると「けがの功名」か。昨年の秋以降、長い距離を走れる手応えを得られるようになった。見据える先には、昨シーズン駒澤大学に「三冠」を許した学生3大駅伝がある。小原自身は、まだ出走経験がないが「全部出るつもりです」と力強い。「青山学院大学は駅伝でしっかり勝っていくチーム。地道に泥臭く走り込んで、秋冬に向けて、また輝かしい成績を残せるように、チームを引っ張っていきたい」

優勝を争った黒田(右)とツーショット。先輩として負けられなかった

一方で「スピード」面は、今年の4月に記録会や織田記念に出場する中で、少しずつ感覚を取り戻したという。3000m障害の次戦となる日本選手権(6月1日~4日、大阪・ヤンマースタジアム長居)は、2年前に果たした5位以上を狙う。この種目は、2021年の東京オリンピックや昨年のオレゴン世界陸上で代表だった山口浩勢が現役を引退。東京オリンピック7位入賞の順天堂大学・三浦龍司(4年、洛南)が中心となり「別のレベルにいる彼に挑んでいくだけ。どんどん挑んで、何年後になるか分からないですけど、絶対に超えたい」と意気込む。

チーム内では今季の副将を務めている。「チームを引っ張っていくポジションなので、周りを見て行動したり、こういった大会で立場としての姿を見せていきたい。今日は一つ、役割が果たせたのかなと思います」。復調した姿を個人種目でも、駅伝でも。小原のラストイヤーに注目したい。

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