アメフト

駒澤大学RB金山太陽 気負わずマイペースに、狙うはBIG8リーディングラッシャー

11月19日の日体大戦では169yd走って3TD。ローテーションで出てるが圧倒的な存在感がある(すべて撮影・北川直樹)

アメリカンフットボールの関東学生BIG8は、12月3日に最終節の3試合を迎える。この日にBIG8の上位2チームが決まり、首位はTOP8に自動昇格、2位は東京大学との入れ替え戦に挑む。最終節を前に、一歩リードしているのが5勝1敗で勝ち点15の駒澤大学ブルータイドだ。駒澤は2次リーグ第1節で青山学院大学に負けたが、最終節の桜美林大学に勝つことで優勝を決める。その命運を握っている男が、RBの金山太陽(4年、横浜立野)だ。金山は現在、ラッシング部門の首位に立っている。

高い重心で大きなストライドの独特スタイル

駒澤大は個性豊かなRB陣が交代で登場し、相手チームの守備を切り裂く走りを見せている。中でもひときわ存在感を示しているのが、最上級生の金山太陽だ。

金山は高い重心の姿勢から、大きなストライドで走る。独特のランニングスタイルで守備のタックルを外しまくり、ロングゲインを連発するビッグプレーメーカーとして、現在BIG8のラッシング部門首位。624yd8TDで、2位に約200ydの差をつけている。最終学年の今年、金山は「リーディングラッシャーになりたい」と静かに意気込んでいる。

11月19日にあった日本体育大学との試合では、駒澤大の3タッチダウン(TD)すべてを金山が挙げた。14回走り、169yd獲得と圧巻のパフォーマンスで勝利に貢献。試合後、試合を振り返ってもらった。

「勝負どころでは強い自信があって、TD数もyd数も1位ってところで多少のプレッシャーはありつつですが、練習でやってきたことを出せたかなと思います。特に緊張とかはしないです。3TDでしたけど、まあいつも通りな感じでした」

“平常心”という表現が良いだろうか。ランニングスタイルから少しやんちゃなイメージを抱いていた私にとっては、意外な反応だった。

「足が長いので、低くいくよりは高いほうが走りやすい」と金山。タックルを外す能力が非常に高い

結果が出ないもどかしさから、大学でも競技継続

横浜の中華街にほど近い、本牧で生まれ育ち、横浜立野高校でアメフトをはじめた。もともとはサッカー少年だったが、目指せるレベルに限界を感じていたことが、アメフトに転向した理由の一つだという。「あと、もともと知り合いだった先輩が立野でアメフトをしてて。うまい選手になれれば大学進学にも有利だし、神奈川県選抜にも他のスポーツより選ばれやすいって聞いたんですよ」

実際に神奈川県選抜に選ばれ、高2の冬にある二つのオールスターゲーム、スティックボウルとニューイヤーボウルに出場した。このときにいくつかの大学から声が掛かって、大学でもアメフトをすることを考えるようになった。

横浜立野高校時代は同学年が粒ぞろいだったが、人数が少なかった。3年のときは、同期が8人、2年が3人とギリギリチームを組める状態。金山は攻守両方に出場するリャンメンで、RBとLBとしてプレー。サイズとフィジカルに恵まれていたため、チームの中核として活躍した。「強豪チームとスクリメージ(実戦形式の練習)をしても、圧倒できるくらいの力があったんですが、大会になると後半に疲労で足をつっちゃうヤツが出てきて、結局は初戦敗退してしまうようなチームでした」。結果を出せないもどかしさもあり、大学で競技継続を決めた。

進学先について、「コーチがパイプを持っていた日大、先輩がいた明学など色々考えました。結局、法政を希望してセレクションを受けたんですが、落ちてしまって……」。そんなとき、高校3年の6月にあったオールスターゲームのあじさいボウルで活躍し、MVPを獲得。駒澤大から誘いを受けた。「駒澤は立地もよいですし、練習環境も整ってるってところにひかれて、決めました」。新倉晴彦監督が、わざわざ学校まで来てくれたこともうれしかったという。

タックラーを4、5人外すのが当たり前の光景だった。去年よりも体を絞り、スピードを重視しているという

RBの目標は、タイプが近いオービックシーガルズの大河原陸

尊敬しているRBの選手がいる。オービックシーガルズで活躍する、李卓と大河原陸(ともに慶應義塾大学卒)だ。この夏、オービックのクリニックに参加して、2人と直接話をした。特に、2学年違いの大河原は、尊敬しながらもライバルとして見てきた過去がある。「僕が2年生のとき、大河原さんがBIG8のラッシング2位で、僕が3位だったんです。少なからず当時は意識もしていました。そのことを話したら、僕のことを覚えていてくれてて。うれしかったですね」

金山と大河原は、背格好や走り方のスタイルも近い。180cmほどの長身で脚が長く、低く突っ込むというよりは、高めの重心で走ってタックルを外していく。この日の金山の無双っぷりと、大河原の走りはたしかに共通点があるように感じた。

オービックの大河原陸。背格好、ランニングスタイルが金山と似ている
慶應義塾大のRB大河原陸、スケール大きなランで1部BIG8を駆け抜けた

今年の駒澤は金山を筆頭に、飯野凜人(2年、桐光学園)、フレドリックス・ゴードン(3年、駒大高)の3人を軸にランニングゲームを展開している。この3人は、チーム内での俊足ランキングTOP3だという。

「2人がめちゃくちゃ速いので、僕はその次くらいですね。RBとしては、消耗を減らすためにローテーションで出場しています。ボールを持つ回数は減りますが、その中で活躍できれば。駒澤のRBは今年のBIG8の中でも、一番充実してるユニットなんじゃないかなと思ってます」。金山は、冷静な口ぶりで自信をのぞかせた。

自信につながった2年前、日体大戦のファーストプレー

駒澤大での4年間で、印象深かったシーンがある。2021年、大学2年の秋の初戦で対戦した日体大との試合だ。当時、チームの雰囲気は日体大を格上と見ていて、少し気後れしていたという。この試合、金山は最初のプレーで57ydのビッグゲインをして、その後の先制得点につなげた。試合を通して173ydを稼ぎ、30-23で競り勝った。下級生だった当時、格上相手に自分の走りでチームに貢献した経験が、今につながる自信の原点だと金山は言う。

12月3日の桜美林戦は、高校から始めた学生アメフト7年間の集大成となるラストゲームだ。勝てばBIG8の1位が決まって、来年のTOP8自動昇格が決まる。金山は、どんな気持ちを持って試合に臨むのか。

「正直、この2週間でどうこうっていうのはそんなに考えてなくて。仲間からは呑気(のんき)と言われることもあるんですが……(笑)。まあ、どこの大学と対戦しても、相手は同級生か年下しかいないので、本当にいつも通り走って、いつも通りの試合をするだけですね」。またもや、いたって冷静な言葉が返ってきた。

「僕、プレー前に相手のこともあんまり見ないんですよ。考えてるのは、アルビン・カマーラ(セインツ)や、ビジャン・ロビンソン(ファルコンズ)といったNFLのイケてるRBだったり、李卓さんや大河原さんみたいな洗練されたランのイメージだったりです。それで、ハンドオフをもらったらゲインできるみたいな。良い走りのイメージだけを考えてます」。相手チームの守備のことではなく、ただひたすら自分のランが出るイメージだけを持っていると金山は言う。

うまくタックルをかわし、独走するイメージを持って走っている

卒業後はアメリカへ、本場のコミュニティーで取り組みたい

金山には考えがある。「よく日本のフットボールと、アメリカのフットボールは別で論じられるじゃないですか。でも、僕は同じだと思ってて。なので、向こうの映像を見て、ベンチの盛り上げ方とか気持ちの作り方のインスピレーションを得るようにしています」。試合中も練習中も、常に本場の雰囲気をイメージし、テンションとモチベーションを維持している。

卒業後は、語学留学でアメリカに渡る。日本で4年分の選手登録をしているため、大学や短大でプレーする予定はない。「向こうでは、試合をするとかではなく、フットボールの練習をしているコミュニティーがたくさんあるって聞いてます。そういうコミュニティーでフットボールスキルを磨いて、何年かして帰国したら、Xリーグでもプレーできればいいなと考えています」。あくまでフットボールを楽しむことが大事で、その形に強いこだわりはないのだという。

まずは12月3日。学生フットボールを締めくくるリーグ最終戦だ。金山はマイペースな走りでリーディングラッシャーを取りにいく。そして、駒澤大初のTOP8昇格に貢献する。そこに気負いはない。

来年は渡米し、本場のコミュニティーでフットボールに挑戦したいと考えている

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