バレー

特集:全日本バレー大学選手権2023

日本体育大・池城浩太朗 髙橋藍がいなくても、全メンバーに誇り「力ある選手ばかり」

努力を重ね、チームを1年間引っ張り続けた池城(すべて撮影・井上翔太)

第76回 全日本バレーボール大学男子選手権大会

12月2日@大田区総合体育館(東京)
順天堂大学 3-2 日本体育大学
(25-17.27-25.21-25.23-25.15-10)

13-19。順天堂大学に6点をリードされた第1セットの終盤、後ろから上がってきたトスを、日本体育大学の池城浩太朗(4年、西原)はクロスにたたきつけた。

応援席やベンチから歓声が沸き起こる中、コート上の池城は左手をぎゅっと握る。続けて打ったサーブがエースになり、さらに点差を縮めると、声援はさらに大きくなった。

【特集】全日本バレーボール大学選手権2023

2セットを先取されたが、奪い返し、フルセットへ

諦めるな――。

その声が、池城を後押しする。順大に2セットを先取され、第3セットも2-7と一時は5点のビハインドを背負った。だが中盤、再び日体大に流れを引き寄せたのはディフェンスだった。順大の染野輝(4年、駿台学園)、花村和哉(3年、東山)の攻撃を、ブロックと連携したレシーブでつなぎ、相手ブロックがそろった状況では強打ばかりでなく軟打も織り交ぜ、着実に得点へとつなげた。ようやく追いつき、21-20と逆転した場面でレフトからのスパイクを決めると、両手の拳を握り、叫んだ。

「自分は水町(泰杜、早稲田大学4年、鎮西)や山田(大貴、早稲田大4年、清水桜が丘)、染野のように大エースというタイプじゃない。とにかく1点ずつ、必死でした」

1本ずつ、1点ずつ。試合中の池城は「1」を指す場面が多く見られた

準々決勝の筑波大学戦でさえ渡ったサーブも、順大のディフェンスを崩すことができず、苦しい展開が続いた中でも、3、4セットを奪取。大逆転劇だけを信じた第5セットも、序盤はブロックポイントを量産した日体大が3-2と先行。中盤にも阿部晃也(4年、東北)のスパイクや吉村颯太(3年、東山)の好守から池城が決め9-7にリードを広げた。

勝利まであと6点。しかし、順大にも意地がある。加藤亞夢(3年、東北)のサーブから染野の連続得点で9-13。崖っぷちであっても、何か一つきっかけをつかめば、流れが変わるのがバレーボールだということを知っている。

とにかく1点、1本。10-14、順大のマッチポイントで、セッターの森嵩一郎(3年、長崎南山)は池城へ託した。渾身(こんしん)の力で放った一打がブロックに阻まれ10-15。あと一歩、届かなかった。

難しい体勢からボールを返す池城。勝負どころでスパイクを託された

元日本代表・山本健之監督からも厚い信頼

池城は日体大入りを機に沖縄から上京したが、1年目は新型コロナウイルスの影響で試合どころか練習もままならず、制限と我慢の日々が続いた。加えて同期には、自分たちの世代で春高を制した髙橋藍(4年、東山)がいる。入学直後から日本代表にも選ばれ、間違いなく大エースであることを池城も知っている。

「大学に入学した頃は、自分みたいに小さな選手はスタメンを張ってレギュラーになれるような選手じゃない。『どうせ埋もれてしまうんだろうな』と思っていました」

高さが利点となるバレーボールで、身長177cmの池城は確かに小さい方だ。でも、武器がないわけではない。日体大に入ってからは、もともと得意としてきたディフェンス面、サーブレシーブやディグの技術を磨いてきた。チームを率いる山本健之監督は日本代表でも活躍した元リベロだ。レシーブに関する指導はもちろん、相手との駆け引きも教わった。ただ守備力を磨くだけでなく、いかに攻撃へとつなげるか。下級生の頃から必死に練習してきた。

最初は「レギュラーになれるはずがない」と思っていたが、最終学年になると主将になった。入学後に見てきたキャプテンたちは、リーダーシップに長(た)け、自分のスタイルを持っている先輩ばかり。「これが正解、というのはわからないけれど、『自分の軸をぶらさずにやっていこう』ということだけは貫いてきた」と池城。自身の軸に据えたのもディフェンスだった。

リベロの森田元希(4年、大分南)と共に、ただレシーブ力を上げるだけでなく、点を取るためのトスへとつなげやすい返球を求め、攻撃陣も崩れた状況からでも決めきる力をつけるべく、夏場は基礎練習に時間を割いてきた。

夏場は地道な基礎練習を重ね、ディフェンスを磨いてきた

プレー面だけでなく、個々をつなぐのも日体大で「1」を背負うキャプテンの役割。夏場の鍛錬期や試合期、それぞれで理想が高くなれば、当然監督からの要求も高まり、時に厳しく叱責(しっせき)される選手もいる。そんな時、スッと間に入るのが池城だった。

「先生は今こういうことを言いたいだろうな、この選手に対してこんなことを言おうとしているな、というタイミングがわかるんです。僕も同じ感覚なので、『今だな』と思ったら、先生に直接言わせるのではなく僕が言うようにしていました」

山本監督もそんな池城だからこそ「信頼しているし、任せられた」と明かす。順大戦でも、競り合った場面や劣勢の終盤で池城が1点をもぎ取り、コート上を駆け回る時、山本監督と交わすタッチは、信頼関係の証しでもあった。

山本監督(左後方)からの信頼も厚い

最後の1戦、センターコートで果たせなかった1勝を

大会のプログラムにはイタリアで戦う髙橋の名もある。大会前は、「最後の全日本インカレに出場するのではないか」という声も聞こえた。池城自身も「自分の思いを言えば、戻ってきて、藍と一緒にやりたかった、という気持ちもあった」と言うが、それ以上に、今このメンバーこそが、1年間をかけてつくってきた日体大だ、という自信もあった。

「最初から藍がいない想定でチームをつくってきたし、それぞれ持っている力は十分で、みんな力がある選手ばかり。あとはどうやって引き出すか、うまく回していくか、ということだけを考えていました。順大戦でも途中から入った選手が自分の仕事を果たしてくれて、やってきたことは間違っていなかったと自信を持って言いたいです」

バレーボールはチームスポーツだからこそ、一人ひとりがいかに役割を果たし、“チーム”の意識を持って戦うことができるかが大切になる。地道な練習もいとわず、積み重ねてきた成果を秋季リーグや全日本インカレで発揮し、敗れた準決勝も2セットを取られてもフルセットまで持っていく力があることを見せつけた。

まぎれもなく、その“チーム”の中心にいたのは池城だった。リベロの森田が言う。

「キャプテンとしていろいろ悩んだり、考えながら、まず自分がやるべきことをやる。そういう姿や背中を見て、みんなが一つになったと思うし、僕らのキャプテンは池城以外考えられないぐらい、間違いなく、チームの柱でした」

チームの中心にいたのは、まぎれもなく池城だった

目指した頂点には届かなかった。だが、最後の全日本インカレはまだ終わったわけではない。1年時に準優勝、昨年は4位。この4年間で大会最終日のセンターコートを2度経験したが、どちらも最後は敗れて終わった。

「センターコートで勝つことが、チームの目標でもあったし、4年生として3年生以下に残せるものがある。だから、最後の最後はセンターコートで勝って終わりたいです」

残り1戦。これまでと同じように熱く、闘志を抱き、「この1点をつかみ取った」と拳を握る。チームを勝利に導くために。最後まで、戦い続ける。

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