バレー

特集:全日本バレー大学選手権2023

筑波大学・大山遼と佐藤淑乃 本音をぶつけ合い、つかんだ頂点 重圧から解放され涙

4年ぶりの優勝を果たし、涙を流す大山(左)と抱き寄せる佐藤(中央、すべて撮影・井上翔太)

第70回 全日本バレーボール大学女子選手権大会 決勝

12月3日@大田区総合体育館(東京)
筑波大学 3-0 東海大学
(25-19.25-22.25-17)

最後の1本に、筑波大学の大山遼(はるか、4年、就実)は渾身(こんしん)の力を込めた。

「東日本インカレ(の決勝)は、最後に自分が決められず、止められて終わった。あれからずっと、『最後の1点をどう取り切るか』というのが頭から離れませんでした。チームが勝つこと、そして自分があの時決められなかった1点を決めること。リベンジだ、という思いで打ちました」

お互いに支え合い、最後に最高のフィナーレ

4年ぶりの優勝を決める笛の音を聞くと、体中の力が抜けた。涙があふれ、支え合うように抱き合い、喜びを分かち合った。東日本インカレで取り切れなかった1点を勝ち取った喜び、4年間、支え合ってきた5人の同期がいたからこそ乗り越えられた心からの感謝。そして、つらくても誰にも言えずに抱え込みながらも「キャプテンとして踏ん張らなきゃ」と自分に喝を入れて「必ず最後に勝つ」と誓い、戦ってきた日々。

様々な感情が一気に爆発して、涙が止まらなかった。そんな大山の隣に立ち、笑顔で抱きかかえ、「今までありがとう」と喜びを分かち合ったのが佐藤淑乃(よしの、4年、敬愛学園)だった。

「キャプテンとして遼がずっと悩んでいるのは近くで見ていていつも感じていました。東日本で負けて、秋季リーグも2敗して。遼は自分で抱え込むタイプなので、『どうしたの? 大丈夫?』と言っても、自分で何とかしようとする。本当に苦しかっただろうな、って。同期は全員、入学した時からずっと仲が良い最高の仲間だけど、一緒にコートに立つ時間が長い遼とだけは、『自分たちが引っ張っていこう、頑張ろう』という思いがずっとありました」

目を潤ませながら、共に「遼がいたから」「淑乃がいたから」と感謝の言葉が出てきた。苦しみながら支え合い戦ってきた4年間、最後に最高のフィナーレが待っていた。

2人はともに今季の大学女子バレー界を代表する選手だ

全カレまでに強化したコミュニケーション

佐藤は昨年の世界選手権にも選出され、今年は大山と共にFISUワールドユニバーシティゲームズの代表にも選出された。大学女子バレー界を牽引(けんいん)する存在であり、2人がそろう筑波大は常に優勝候補筆頭とされ、実際に今季の春季リーグは全勝優勝を飾った。

掲げた目標は春秋の関東リーグ、東日本インカレ、全日本インカレすべてを制する「四冠」。その一つ目を制し、東日本インカレも決勝に進出。日本体育大学との決勝は2セットを先取し、第4セットではマッチポイントを握った。だが、そこで最後の1本を決めきれず、大山も佐藤も、共に「自分が決められなかった」と課題を残す結果となった。

その後も秋季リーグ、全日本インカレと、次々に大会はやってくる。同じ後悔をしないため、「少しでも多くチーム練習を重ねたい」と思っていたが、大山も佐藤もワールドユニバーシティゲームズの合宿や大会があるだけでなく、筑波大の選手たちはU20などの日本代表に選出されている選手も多い。「他のチームが夏合宿をしている中、自分たちが(チーム練習を)積めていない焦りがあった」と佐藤の不安は的中し、秋季リーグでは日本大学と日体大に敗れた。

ささいなズレを修正できていない。コンビを合わせる時間がない。理由はいくつもあったが、まずは互いが何を考えているのか。お互いを理解して、信頼し合えていなければ、最後に勝つことなどできない。「負けた原因が絶対にある」と根本を解決するために、大山はまず4年生5人で徹底的に話し合う時間を作ったと明かす。

「4年全員で思っていることを隠さず言い合おう、と言って、遠慮せず、思っていることを全部話してぶつけ合ったんです。今までもみんなで食事をしながらコミュニケーションを取り合ってきましたが、もっとお互いの思いや考えを知ることが大事だと思ったので、秋から徹底して、話すこと、理解することを意識してきました」

大山を中心に徹底して話す時間を設け、チームワークを培った

コミュニケーションの強化は選手間だけにとどまらず、「チームとしても全日本インカレに向けた強化を進める中で重視してきた」と言うのは中西康己監督も同じだ。これまでは大会に向けて実戦の機会を増やすことが多かったが、今年はあえて、テスト明けで授業が休みになる期間を活用し、山形で合宿を行い、朝の散歩から練習を終えた後のミーティング、戦術的なところやお互いが考えていることを話し合う時間を設け「精神面でもぎゅっと一つに固まった」と手応えを得た。

アタッカーはどんな時にトスが欲しいか。チームとしてどう戦うべきか。セッターはどんなプランでゲームを作ろうとしているのか。それぞれが主張するだけでなく、互いの考えを知ることで、ベストな形を生み出し、構築する。全日本インカレは、その成果が発揮された大会となった。

お互いの考えを知り、全日本インカレでは1セットも奪われずに優勝

限られた出番で結果を残してくれた仲間

象徴的だったのが、東海大学との決勝戦の2セット目。14-17でリードされた場面だ。

本田凜(2年、郡山女子大付)のサーブからラリーが続いたところで最後は佐藤がバックアタックを決めて15-17。ここで中西監督は本田に代え、リリーフサーバーで徳永桜(4年、長崎北陽台)を投入した。

限られた出番で結果を残す。日頃から1本にこだわってきた成果を示すように、徳永のサーブで崩し、再びラリーが展開されたところで佐藤のバックアタックが決まり16-17。1点差に迫ると、次はライト側に開いた大山のスパイクが決まって17-17。さらに佐藤のバックアタックも決まり18-17。東海大のエース・宮部愛芽世(4年、金蘭会)から放たれた渾身のスパイクをリベロの中村悠(3年、三重)が好守でつなぎ、大山、佐藤の得点につなげた筑波大が4連続得点。その後も大山の連続得点で21-18とリードを広げた。

中西監督が「流れを変えてくれた」と振り返る場面の功労者は、得点した大山、佐藤だけでなく、徳永のサーブもあることは間違いない。1セット目は筑波大が試合を優位に運んだが、2セット目は東海大の宮部と佐々木遥子(4年、市立船橋)のスパイクが決まり、先行されていた。東海大は前日の福岡大学との準決勝も2セットを取られたところからの逆転勝ちを収めており、一度流れに乗れば一気に試合を動かしてくる力があるのはわかっていた。

そこでチームに「喝を入れた」のが徳永のサーブだった、と佐藤も言う。

「自分が2段トスからのスパイクがなかなか決まらなかった時、ずっと2段トスを上げ続けてくれて、サーブレシーブが返らない時はサーブを打ち続けてくれたのが徳永でした。ずっと練習で助けてきてくれただけでなく、試合でも『ここだよ』というポイントでブレイクを取ってくれた。喝を入れられて『私も負けられない』と気合が入りました」

バックアタックを打ち込む佐藤

気負いすぎ「顔が怖い」と言われたが

振り返れば佐藤は全日本インカレが開幕してからずっと、「絶対にチームを勝たせる」と気負いすぎ、仲間たちからは何度も「顔が怖い」と言われ続けた。念願の優勝を決めた瞬間、ようやく、心からの笑みがこぼれ、気づけば、隣で号泣する大山を抱きしめていた。

「まだ日本一の実感はないです。でも、チームとして日本一になれたことが本当にうれしい。ホッとしました」

支え合い、助け合って乗り越えつかんだ日本一。うれし涙と、笑顔が輝いた。

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