サッカー

特集:駆け抜けた4years.2024

J2秋田内定の駒澤大学・松本ケンチザンガ FWコンバート2年でプロ切符の潜在能力

2024年シーズンからの秋田加入が内定した松本(すべて撮影・駒大スポーツ新聞編集部)

今季、関東大学リーグ2部で優勝した駒澤大学。2年ぶりの1部昇格に大きく貢献したのが、J2・ブラウブリッツ秋田への来季加入が内定しているFW松本ケンチザンガ(4年、浦和東)だ。

松本は、駒大で2年次にDFとしてリーグ戦でベンチ入り。3年次には開幕戦からFWとしてデビューし、リーグ戦全試合に出場した。コンバート1年目から5ゴールを挙げる活躍を見せ、攻撃の中核を担う選手に成長した。2部での戦いとなった4年次は負傷の影響で全試合出場はかなわなかったが、昨年度を上回る7ゴールを挙げ、チームを2部優勝に導いた。その活躍を評価され、主将・小針宏太郎(4年、鹿島ユース)と共に2部ベストイレブンも受賞した。

大学2年まではセンターバック

高校時代は浦和東でセンターバックとしてプレーしていた。松本と同様にアフリカのコンゴにルーツがあり、知り合いだった星キョーワァン(現・ブラウブリッツ秋田)が駒大でプレーする姿に好印象を抱いたことが、進学の決め手となったそうだ。

駒大でも入学当初はセンターバックとしてプレーしていたが、同学年の同ポジションに小針と鷹啄トラビス(4年、市立船橋)がおり、なかなか出場機会を得られなかった。2年次には恥骨の疲労骨折を経験し、約半年間サッカーが出来なかった。「悔しい半面、当時の自分は試合には出られるレベルではなかったので、ポジティブにとらえてトレーニングや食事改善に取り組んだ。今考えると良かったが、うまくいかない苦しい時間だった」と振り返った。

2年次のシーズンが終わり、3年次のシーズンが始まる前に秋田浩一監督からFWへのコンバートを提案された。「最初はセンターバックで勝負したい気持ちはあったが、このまま過ごしていても試合に出ることは難しく、何かを変えなければならないと思っていた。FWの経験はほとんどなかったが自分的には楽しく、勝負してみようと思った」と前向きに取り組んだ。

課題の守備にも懸命に取り組む

FWコンバートで頭角を現し2年で飛躍

昨年度の駒大にとって攻撃陣の整備は急務だった。2022年度に荒木駿太(現・FC町田ゼルビア)、土信田悠生(現・ロアッソ熊本)、宮崎鴻(現・栃木SC)ら強力攻撃陣を擁してインカレ優勝を果たしたが、主力選手の多くが卒業してしまったためだ。

そうしたチーム状況の中で松本は頭角を現す。191cmの長身を生かしたポストプレーと高い身体能力を武器にレギュラーの座を確保していった。第13節の早稲田大学戦では2ゴールを挙げて公式戦初の1試合複数得点。「初めて自分の中でチームに貢献出来た実感があった」と、FWとしての自信を持った。「周りの先輩や秋田監督にFWとしての動きを教えてもらいながらプレーしていた。シーズン前半の早い段階から試合には使ってもらっていたが、結果が出なかった。シーズン後半になり、FWとしての戦い方が分かってきて点が取れるようになってきた」と3年次を総括した。

4年次には開幕戦からゴールを挙げるなど、7ゴールを記録した。2部得点王に輝いた鈴木心月(3年、三浦学苑)と主に2トップを組み、2人で合わせて21ゴールを挙げて2部優勝に大きく貢献したが、本人は決して満足していない。「思い通りに点が取れていないし、自分の中ではうまく行っていない部分が大きい。ゴール前で自分が点をとるための動きが足りていない」と述べた。また、守備にも課題があるようで「特に前線からの守備。90分間守備が出来る集中力をつけたい」と攻守両面での成長を誓った。

ストロングポイントはヘディングだ。秋田監督からも「ヘディングが一番の武器だから負けてはいけない」と言われていた。「高校の時からの武器で負けないと思っていたが、大学に入ってみたらまだまだだと感じたので、こだわってトレーニングをした」と振り返った。

松本にはヘディングに関して印象に残っている指導がある。それは「先に跳べ」というものだ。当初は「よく意味が分からない」と思っていたが「先に跳ぶことで自分より体格の良い相手に対しても制空権を取れて、先にボールに触れることが試合の中で実感できた」という。

打点の高いヘディングが持ち味だ

「自分を必要としてくれている」秋田加入を決断

秋田への加入を決めたのは、「吉田謙監督が直々に練習グラウンドに来てくれたり、正式オファー後も直接スカウトの方が試合を見に来てくれたり、自分を必要としてくれていると思った」からだという。「縦に速くボールをつなぐサッカーが駒大のスタイルと似ている」ことも後押しした。

練習に参加し「球際や強度の差を感じた」とする一方で「ストロングポイントは通用する部分もあった」と手応えを感じた。プロでの目標を尋ねると「こういうのは大きく言った方がいいですよね?」と気さくに笑い、「日本を代表する選手になる」と掲げた。

明るい性格と恵まれた体格、そしてコンバートから2年でプロの舞台への切符をつかむほどのポテンシャルは無限大だ。松本が秋田の地を熱くする。

in Additionあわせて読みたい