陸上・駅伝

特集:第100回箱根駅伝

東洋大学・松山和希は2区起用方針 酒井俊幸監督「オールアウトできるような状態を」

オンライン取材に出席した左から梅崎、松山、小林、酒井監督(提供・東洋大学)

過去4度の箱根駅伝総合優勝を誇る東洋大学だが、今季は学生3大駅伝で苦戦を強いられている。それでも主力選手たちが故障から復帰し、チーム状態は上向いている。鉄紺軍団は「総合3位」を目標に掲げ、第100回の本戦に臨む。12月19日、東洋大学のオンライン合同取材が開催され、酒井俊幸監督、主力の松山和希(4年、学法石川)、梅崎蓮(3年、宇和島東)、小林亮太(3年、豊川)が意気込みやチームの現状を語った。

【特集】第100回箱根駅伝

19年連続シード権へ「鉄紺の再建」をテーマに

今季のチームは「鉄紺の再建」をテーマに取り組んできた。前回の箱根駅伝では序盤の出遅れが響き往路11位。17年間続いているシード権が危ぶまれる中、8区で木本大地(現・セキノ興産)が区間賞の走りを披露するなど、終盤に追い上げて10位に入りシード権を守った。今年10月の出雲駅伝は8位。翌11月の全日本大学駅伝では、31度目の出場で最も低い14位に終わった。

主力となるべき選手が次々故障や体調不良で離脱したことが響いた。今のチームが発足したときに主将となった佐藤真優(4年、東洋大牛久)や、過去2度の箱根駅伝6区を経験している九嶋恵舜(4年、小林)、高校時代に5000mで高校日本記録(当時)を樹立した石田洸介(3年、東農大二)の3人が、今季は出雲駅伝、全日本大学駅伝ともに出走できなかった。加えて1年時から2年連続で箱根「花の2区」を任された松山は、3年生だった昨季から左足首の故障に苦しんでいる。今季、出雲駅伝では4区を走ったものの、全日本大学駅伝は出場を回避した。

前回の箱根では8区の木本(左)が区間賞を獲得し、梅崎がその襷を受けた(撮影・井上翔太)

松山和希「フィジカル面の強化に加え、栄養面も意識」

東洋大学が続けている18年連続シード権獲得は、現在継続している中で最長。19年連続のシード権に向けては暗雲が立ち込めているようにも見える。前年の取り組みを検証した結果、いくつかの反省点が見つかったと酒井監督は言う。

「練習は計画通りできていたけれど、それを支える生活面の崩れがいろいろ見つかりました。また、チームの結束という点においても足りない部分があった。10位という結果は必然だと思っています。11年連続3位以上をキープしていたときは、そういった部分ができていた。『凡事徹底をしっかりやっていく』ことがうちのチームカラーなんです」

寮での部員の生活面を改めて見直した上で、チームは第100回箱根駅伝に向けてスタートした。秋以降、主力選手が徐々に復帰し、チーム状況は好転しているという。

前回の結果を受け「凡事徹底」のチームカラーを見つめ直した酒井監督(提供・東洋大学)

故障に苦しめられてきた松山も、11月26日の小江戸川越ハーフマラソンで1km3分ペースを維持して走り、1時間3分35秒でフィニッシュ。「本来の自分の走りに近づいてきた」と手応えをつかんでいる。「3年時の故障から崩していたフォームを直すため、今季はフィジカル面の強化に力を入れ、サプリメントの摂取など、栄養面も意識してきました」と今季の取り組みについて語った。

酒井監督は松山を2区で起用する方針だ。「彼の武器である集中力を高めて、他の選手よりも追い込みができるような、オールアウトできるような状態を作っていきたい」と言えば、松山本人は「日本人トップを取るような走りをしたい。前回は中央大学の吉居大和選手(4年、仙台育英)が1時間6分22秒でしたから、1時間6分30秒を切るのが最低限のレベル。1時間6分10秒台を狙います」と最後の箱根路へ向け意気込む。

松山は2区で日本人トップを狙う(提供・東洋大学)

4年生が不調のときに引っ張った梅崎蓮・小林亮太

前回の箱根で9区を走り、区間4位となる1時間8分36秒で9区の東洋大記録を更新した梅崎は、今季の出雲駅伝で6区、全日本大学駅伝で8区といずれも最長区間を任された。「箱根でも任された区間をしっかり走りたい。どこを走ることになっても区間3位以内を目指します」と言葉に力を込めた。

前回3区を走り区間9位だった小林は、今回も3区を希望している。「チームは総合3位を狙っているので、個人としても区間3番以内が目標。3区の東洋大記録を塗り替えなければいけないと思っています」と力強く語った。3区の東洋大記録は、総合優勝した2014年、当時4年生だった設楽悠太(現・西日本鉄道)がマークした1時間2分13秒だ。偉大な先輩の記録に挑戦する。

「4年生が不調の間、梅崎、小林の2人がチームを引っ張ってくれた。往路、復路の要のところに起用したい」と酒井監督も3年生2人の成長を喜ぶ。

小林は全日本でスピードランナーが集まった2区を任された(撮影・佐伯航平)

「諦めないで走るのが東洋大学の真骨頂」

今回、選手たちが掲げる目標は「総合3位」だ。初優勝した2009年の第85回大会から2019年の第95回大会まで、東洋大学は11年連続でトップ3入りを果たしてきた。駅伝ファンにとって「鉄紺軍団」といえば、常に優勝争いに絡んでいるイメージが強いだろう。酒井監督は今回、監督として15度目の箱根駅伝を迎えるが、この間、4位以下でゴールしたのは2020年10位、2022年4位、前回10位の3度だけだ。

「相澤晃(現・旭化成)の卒業以降、先頭争いをするシーンがしばらくできていない。今回、先頭争いができるかという点に関しては、非常に厳しいと思っています。下馬評は低いですけれど、諦めないで走るのが東洋大学の真骨頂。シード権獲得は最低限の目標であり、3位以内というのがこれまでこだわってきた順位です。『本来の位置』に戻り、『鉄紺の再建』になる走りを100回大会では目指していきたい」

厳しい戦いになるのは覚悟の上で、記者会見中、酒井監督は「本来の位置」という言葉を何度も口にした。選手たちもその意味を十分に理解している。

「鉄紺の再建」をテーマに「本来の位置」へ戻る走りをめざす(提供・東洋大学)

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