ラグビー

明治大学PR為房慶次朗 「ハイブリッド重戦車」を体現し創部100周年の日本一を

準決勝、トライを挙げた仲間を祝福する為房(すべて撮影・斉藤健仁)

1月13日、大学日本一を決める60回目の全国大学ラグビー選手権の決勝が東京・国立競技場で行われる。今季も関東大学ラグビー対抗戦同士の激突となり、3連覇を狙う「紅き旋風」帝京大学(対抗戦1位)と、創部100周年を迎えた紫紺のジャージー・明治大学(対抗戦2位)が対戦する。

12月の早明戦ではトライを挙げ勝利に貢献した

両者の対戦は、3季前の春季大会で明治大が勝利して以来、帝京大が連勝を続けている。今季は春季大会の試合こそ台風で中止になったが、夏の菅平合宿での練習試合では38-21、昨年11月の対抗戦でも43-11と帝京大が快勝している。平均体重100kgを超える重量級FWがそろう両校、やはり決勝でカギの一つとなってくるのはFWのセットプレー、特にスクラムだろう。対抗戦の試合でも帝京大が組み勝ち、試合の主導権を握ったことは明らかだった。

決勝へスクラム・ラインアウトは順調

創部100周年の節目のシーズンで、なんとしても5大会ぶり14回目の優勝を目指している明治大ラグビー部。「重戦車」の誉れ高いFWでセットプレーを引っ張るのは、副キャプテンのLO山本嶺二郎(4年、京都成章)、そして「3番」の右PR為房(ためふさ)慶次朗(4年、常翔学園)である。

明治大学LO山本嶺二郎 創部100周年の日本一へ、重戦車支える「縁の下の力持ち」

為房は1年生から公式戦に出場し、3年生からは不動の3番として活躍を続けているスクラムの要。OBの滝澤佳之・杉本晃一コーチの指導の下、「スクラム、ラインアウトとも調子が上がっている」と実感している。昨年11月の帝京大戦を振り返りつつ、決勝に向けて「スクラムのところでは受けに回ってしまい、クオリティーボールが出しにくかったので、もう少し自立してバランスを取りたい。ラインアウトはもう少し高さを出していきたい」と意気込んでいる。

為房(中央)は、山本副将(左)、松下(右)とともにセットプレーを支える

柔道で中学大阪代表、ラグビーでは高校日本代表

大阪府出身の為房は4きょうだいの次男。大阪工大高(現・常翔学園)、専修大などでプレーした父の賢二さん、中学校までラグビーをしていた総合格闘家の長男・虎太郎さんの影響で、小学校2年の時に大阪のみなとラグビースクールで競技を始めた。

大正東中学時代にはラグビーだけでなく柔道部にも入っており、全国中学大会の大阪府予選90kg級で優勝し、全国大会に出場した経験を持つ。なお三男の弟・CTB幸之介も常翔学園3年でプレーしており、春から為房と入れ替わりで明治大学に進学予定だ。中学1年の長女・さくらも浪花闘球娘でラグビーをプレーしている。

高校時代、仲間を鼓舞する常翔学園の為房主将

ラグビー一家に生まれた為房は、「お父さんも通っていたので」と自然な流れで常翔学園に進学し、ラグビーに専念した。家のガレージを改装したジムで鍛えていたことが功を奏して、1年からPRやLOで主軸として試合に出場。3年時は、スクラムはもちろんボールキャリーも武器の右PR、そしてキャプテンとして、「花園」こと全国高校ラグビー大会に出場。山本がいた優勝候補の京都成章を下してベスト4に進出し、高校日本代表にも選ばれた。

高校3年の花園。3位の表彰を受ける常翔学園PR為房

大学は関西の強豪・同志社大学への進学も考えたというが、誘われたこともあり「やはりFWの強いチームに」と明治大ラグビー部の門をたたいた。

いち早く昨季から機動力を強化

今季、就任3年目の神鳥裕之監督は、100年目の新しい明治大のスタイルとして「ハイブリッド重戦車」をキーワードに掲げ、セットプレーや接点の力強さだけでなく、FWのフィットネスを春から鍛えてきており、寮にはそのイメージとなる機動力にたけた戦車のイラストも張り出していたという。

為房は機動力にもたけている

「日本代表になりたい」という強い意志のあった為房は、それに先がけ昨季から個人的に、将来を見据え「スクラムだけでなく動ける右PRになる」とフィットネストレーニングに取り組んでいたという。最大118kgあった体重を、1年前の夏には100kgに、体脂肪は30%から20%ほどに落としたという。

動けるPRをめざす為房はボールキャリーも武器

試合で動けるようになったものの、「さすがに右PRとして100kgではまずい」と感じ、ウェートトレーニングをしながら筋量を増やし、現在は112kgほどに。今季も春から先発で試合出場を続けており、セットプレー、ボールキャリーで存在感を示し、まさしく「ハイブリッド重戦車」を体現する一人としてFW陣を引っ張っている。

大学ラグビーの有終の美へ「ど根性」

為房の好きな言葉は「ど根性」だ。春からはリーグワンの強豪チームでプレーする予定。大学選手権の開幕前に「もう1回帝京大と対戦し、勝って優勝して終わりたい」と力を込めていた為房。紫紺の3番を背負うラストゲーム。スクラムを中心としたセットプレーで存在感を示し、初の大学日本一に輝いて学生ラグビーを有終の美で飾ることができるか。

右PRの為房はスクラムの要だ

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