陸上・駅伝

特集:New Leaders2024

日本体育大・分須尊紀 箱根駅伝連続出場の重圧を背負う新主将、クロカンで好スタート

日本選手権クロカンの男子10kmで8位入賞を果たした日体大の分須(撮影・藤井みさ)

第107回 ⽇本陸上競技選⼿権⼤会クロスカントリー競⾛ 男子10km

2月25日@海の中道海浜公園(福岡)
優勝 山口智規(早稲田大学)    29分16秒
2位 井川龍人(旭化成)     29分16秒
3位 坂東悠汰(富士通)     29分21秒
4位 荻久保寛也(ひらまつ病院) 29分22秒
5位 藤曲寛人(トヨタ⾃動⾞九州)29分23秒
6位 村山紘太(GMOインターネットグループ)29分34秒
7位 杉本将太(コモディイイダ) 29分36秒
8位 分須尊紀(日本体育大学)  29分40秒

2月25日に福岡・海の中道海浜公園で開催された日本選手権クロスカントリー競走の男子10kmで、日本体育大学の分須尊紀(わけす・たかのり、3年、東農大二)が8位入賞を果たした。年始の箱根駅伝を終えた後、主将に就任。「勝負勘を高めるために」と位置づけたレースで好結果を残した。

スキーの実習で5日間まったく走れず

「自分でも8位という結果にはびっくりしています。レースに出た日体の選手全員が、これからのトラックシーズンに向けた、練習の一環という目的で出場したので」。分須はこのレースにコンディションを合わせていない。そもそも合わせられない状況があった。

授業の関係で2月12日から16日、長野県の志賀高原であったスキー実習に出席していた。「5日間はまったく走らないで、雪山にこもってスキーだけをしていました。その後は1週間、学校で走っていたんですけど、練習って言えるほどの練習はできていませんでした」

レースは起伏のある1周2kmの芝生などのコースを5周して争われた。1周目にひらまつ病院の上野裕一郎が飛び出し、分須は「できるだけ先頭についていって、きつくなっても我慢して、耐えられるところまで耐えようと思っていました」。2周目には一時2番手につける場面も。3周目で先頭集団は、早稲田大学の山口智規(2年、学法石川)、井川龍人(旭化成)、藤曲寛人(トヨタ自動車九州)の3人となり、分須は2番手集団の前方につけた。

レースでは一時2番手につける場面もあった(撮影・藤井みさ)

「前についていったら、たぶん後ろから追われることに焦って、最後は気持ちが折れちゃうと思ったので、それなら第2集団でギリギリ8位ぐらいを狙えればいいかなと思っていました」。学生では優勝した山口に続く2番目でフィニッシュ。呼吸を整え終えると、仲間と喜びを分かち合った。

昨年の夏合宿を機に「ようやく本来の走り」に

年始の箱根駅伝では8区を任され、1時間4分40秒で区間2位の快走を見せた。ここまで好調を維持できているのは、昨年の夏合宿でフォームを矯正するような取り組みを始めたからだと自己分析し、「ようやく本来の走りができるようになってきた」と手応えを口にする。「ざっくり言うと、今までは右足一本で走っているような状態でした。トラックはずっと左回りで走っているので、右足で強く蹴る走りがロードでも出てしまっていたんです」

左足をより強化し、バランス良く走れるようにトレーニングを積んだことが、実を結びつつある。

箱根駅伝後の1月4日には、チームの主将に就任した。1年生の頃から学年のリーダーを務めていたこともあり、自ら立候補した。「大舞台で少しずつ結果を残して、チームメートや監督からの信用も勝ち取れてきているので、言葉だけではなく走りの面でも背中で引っ張れる主将になりたいと思っています」。2月18日に大阪で行われた男女混合駅伝に出場するため、箱根後も寮に残っていた前任の漆畑徳輝(4年、山梨学院)からも「頼んだぞ」と背中を押された。

日本体育大・漆畑徳輝 普段は温厚な主将、伊勢路を逃した後に示した「危機感」の共有
年始の箱根駅伝では充実の表情で戸塚中継所へ飛び込んだ(撮影・浅野有美)

全日本大学駅伝出場に向けては、新たな試み

日体大の主将には、76年連続でつないでいる箱根駅伝への出場を途切れさせない、という大きなプレッシャーがのしかかる。「練習ではうまくいっていても、本番ではまらず、チーム内に葛藤があったとき、一番考えていたのが漆畑さんでした。苦労に向き合うことが主将の役割なんだろうなって思います」と分須。今年の箱根駅伝は総合16位だったため、来年の本戦出場には、今回も予選会突破が必要となる。「今年の箱根の構成メンバーは1~3年生が多くて、故障がなかったらメンバーに入っていた選手もいっぱいいます。今までとは違う箱根予選になると思っています」

現時点で箱年予選会の目標は3位以内。ただ、夏合宿の結果を踏まえてトップ通過に目標を切り替える可能性もある。

2大会連続で出場を逃している全日本大学駅伝に向けては今回、新たな試みをした。関東地区選考会が開催される6月は教育実習と重なりがちで、例年、4年生の参加が限られてしまうという。そこで分須がスキー実習に行っている間、1、2年生だけで合宿した。「最上級生がいないチームを1度経験して、『今年の日体はひと味違う』と思われる結果を出せるようにしたいです」。駅伝で入賞ラインや表彰台に再び戻ってくるため、ぜひとも新しい取り組みが奏功してほしい。

主将として言葉だけでなく、走りでもチームを引っ張る(撮影・藤井みさ)

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