陸上・駅伝

特集:第102回関東学生陸上競技対校選手権

日本体育大・高村比呂飛が1部1500mV トップ選手との合宿で学んだ「メリハリ」

男子1部1500mで優勝した高村(すべて撮影・藤井みさ)

第102回関東学生陸上競技対校選手権 男子1部1500m決勝

5月12日@相模原ギオンスタジアム(神奈川)

1位 高村比呂飛(日本体育大3年)3分47秒85
2位 後田築(順天堂大1年)3分48秒73
3位 奥山輝(東洋大4年)3分49秒04
4位 大野聖登(順天堂大1年)3分49秒20
5位 田中純(東洋大1年)3分49秒32
6位 高田尚暉(山梨学院大3年)3分49秒53
7位 柳本匡哉(早稲田大4年)3分49秒68
8位 中野倫希(中央大3年)3分49秒77

5月11日~14日に開催された関東インカレの男子1部1500mで、日本体育大学の高村比呂飛(3年、敦賀気比)が3分47秒85で優勝。800mでは優勝者に0.02秒足りず2位だった。惜しくも「二冠」はならなかったが、今年3月に国内トップクラスの選手たちと合宿を行ったことで、成長を実感したという。

前に行かれても慌てず、冷静にスパート

1500mは4月の日本学生個人選手権で優勝を果たし、11日の予選でも全体トップのタイムで決勝へ進んだ得意種目。高村は自信を持ってスタートラインに立った。「学生個人のときは(青山学院大学勢など)2部校の強い選手たちもいた中で勝てたので、関東インカレも勝たないといけないという気持ちで臨みました。シニアの選手たち相手には、まだ自信がないんですけど、学生相手には自信がありました」

スタートから2、3番手付近を走り、他の選手がスパートをしかけたときに対応できるよう備えた。ラスト1周の鐘が鳴ると、早稲田大学の柳本匡哉(4年、豊川)が先頭に立ち、東洋大学の石川心(4年、武蔵越生)が追走。高村は「『これぐらいの間なら追いつける』というところを頭に入れながらレースを進めることができたので、前に行かれても焦らず、スパートのタイミングを計っていました」と慌てなかった。

バックストレートで先頭に立つと、一気に後続との差を引き離した。タイムのことは意識せず勝負に徹し、学生個人に続く優勝を果たした。

切れ味鋭いラストスパートを見せた

合宿を終えてからも、心がけた食生活

今年3月、高村は沖縄県国頭村で行われた合宿に参加した。集ったのは昨年の日本選手権で800mを制した中央大学の金子魅玖人(みくと、4年、鎌ケ谷)や、1分45秒75の日本記録を持ち日本選手権6連覇、2016年のリオデジャネイロ・オリンピックで代表に選ばれた川元奨(現・スズキ)ら、国内トップクラスの選手たち。高村にとっては、学ぶことが多い場だったという。

「自分はそれまで走るトレーニングがほとんどだったんですけど、補強トレーニングや体幹トレーニングを走ることと同じぐらい重点的にやっていました。ポイント練習の後に補強してさらに追い込むところも、休みの日はしっかり休息を取るところも勉強になりました。自分は休みの日も、焦って走ってしまうところがあるので」。トレーニングを積めたことで、強い向かい風となったこの日の最後の直線も、上体がぶれることなく走りきることができた。

2人からは、競技への向き合い方も学んだという。「世界と戦っている川元さんは、また違う雰囲気で。ジョグの日はすごくリラックスして走っているんですけど、ポイントの日はピリッとした雰囲気になるんです。メリハリがすごかったです」

国内トップ選手たちを合宿を行ったことで、力をつけた

金子とは宿泊する部屋が一緒だった。「体のケアとか、摂取するものとかの意識が、自分とは全然違いました。自分はバイキングでケーキとか、好きなものばっかり取っちゃうんですけど、金子選手は野菜から取って、ケーキを食べるにしてもポイント練習のときだけでした。これも『メリハリ』ですね」

合宿から帰ってきてからも、栄養バランスの取れた食生活を心がけた。「昨年と比べても体が絞れていると感じましたし、予選が終わっても昨年ほど疲れが残らず、いい状態で臨めたかなと思います」

1500mで優勝を決めると、笑顔がはじけた

800mで味わった悔しさを糧に

1500mを制した2日後は、800mの決勝に出場した。後半型の高村は「最初の200mはついていけないので、徐々に追いついてラストの120mから80mのところでギアを切り替えれば、相手の動きが止まるかなと思っていました」。最もマークしていたのは山梨学院大学の北村魁士(2年、市立柏)。レースは北村を先頭に最初の400mを57秒で通過し、高村はプラン通りにレースを進めた。

狙い通りに最後の直線でトップに立ったが、追いかけてきた早稲田大学の坂本達哉(4年、淑徳巣鴨)にかわされ、1500mとの二冠はならなかった。「ラストは自分の方が切れてるだろうと自信があった分、それが逆に油断につながったのかもしれません。抜かしたときに全力だった分、来られたときにもう一度反応できなかった」

800mは僅差での2位に終わり、優勝した坂本と握手を交わした

800mで今回味わった悔しさを糧に、さらなる成長を誓う。「学生個人で勝った後、織田記念で惨敗して、新たな気持ちで関東インカレに臨んだんです。昨年も関東インカレで(1500m)2番で終わって『いい感じに来てる』と日本インカレに臨んだら、今日のレースのように外から1人来て、自分は予選落ちしてしまったんです」。FISUワールドユニバーシティゲームズなど、大事なレースが控える中で負けを経験したことは「自分の成長につながる」と考えている。

今シーズンの1500m目標タイムは、自分を指導してくれている石井隆士監督が学生時代に記録した3分38秒4を更新すること。合宿で一回り成長し、勝負の厳しさも知った高村なら、十分に可能性がある。

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