クレイアーロン竜波 東京選手権優勝、秋からアメリカの大学に「覚悟を持って」
第83回東京陸上競技選手権大会
7月23~26日@駒沢オリンピック公園総合運動場陸上競技場
男子800m優勝 クレイアーロン竜波(相洋AC)1分50秒54 大会新記録
陸上の東京選手権が7月23日から26日までの4日間開催され、3日目の男子800m決勝でクレイアーロン竜波(相洋AC)が1分50秒54の大会新記録で優勝した。予選からの3レースすべてでトップを守り続けての優勝だった。
久しぶりのレース、自分の走りができた
「ひさびさのレースできつかったけど、楽しかったです。タイムより順位を狙っていたので、そこは満足いくようなレース展開ができたと思います」。決勝のレース後、クレイアーロンは充実感をにじませた表情で取材に答えた。決勝には日本記録保持者の川元奨(スズキ)もいたが、「川元さんが来るかなと思ってマークしていたけど来なかったので、自分の走りができました」という。
とはいえラストの直線では後ろから追い上げてきた金子魅玖人(中央大1年、鎌ヶ谷)を気にする場面もあった。「後ろに来てる気配は感じながら走ってました。ちょっと危なかった」といいつつも、強みとするラストスパートで勝ちきった。「予選から全部引っ張ってて、気持ち的に強くなったのかなという成長は感じています」
自粛期間は今後の準備、充実した時間を過ごす
今年の3月に相洋高校を卒業し、秋からはアメリカ・テキサスA&M大学への進学が決まっているクレイアーロン。渡米時期について問われると「この状況なのではっきりとは決まっていないけど、8月中には」という。アメリカでは日本よりも新型コロナウイルスの患者数が多い状態だが、現地と連絡を取りつつ状況を把握しているという。本来なら6月末に開催予定だった日本選手権をはじめ、さまざまなレースに出て東京オリンピックの参加標準記録を切り、オリンピックを本気で狙うという予定だった。しかし3月にオーストラリアで開催されたシドニークラシックへの出場を最後に大会が中止・延期になった。
緊急事態宣言中は基本的に家にいて、練習のときだけ家の周りを走ったり、人のいない時間帯に坂で練習をしていた。トラックでの練習は緊急事態宣言が解除され、トラックが使えるようになってから再開したという。「時間があったので、練習以外に大学に向けて勉強もけっこうしていました。もともと自分は英語がしゃべれるんですが、陸上競技でしか使わない単語などを覚えたりもしていました。プラスに考えたらいい時間だったと思います」
オリンピックが1年延期になったことについては「この1年とりあえず自分と向き合って、今の自分に必要なことを考えながらやっていければなと。プラスに考えたら練習期間が伸びたということなので、1から練習を積んで頑張りたいです」と意気込みを語った。
覚悟を持って、成長するために渡米を決めた
クレイアーロンは中学の時から陸上部に入り、はじめは400mと1500mに取り組んでいた。中3になる頃に顧問の先生に勧められて「400mと1500mの間ってことで」800mを走りはじめ、いきなり全中に出場、2位になった。相洋高校に進んでからはさらに実力を磨き、1年のときのインターハイで2位。日本陸連からダイヤモンドアスリートに選出された。昨年の日本選手権800mでは日本記録保持者の川元にラスト勝負で競り勝ち、若き王者となった。
実力が上がるにつれて、練習で切磋琢磨することが難しくなってきた。今も母校を拠点に練習しているが、基本は一人だ。「海外のレースにもいくつも出てきて感じたのが、現状日本だと自分の走りができる。でも海外だとまだ自分のレベルだと戦いきれない。そのためにもアメリカに行って、チームメートと切磋琢磨して成長したいと思いました」。強くなるために、成長するために自分で決めた道、「覚悟を持っていきたい」と力を込める。
一方で、今まで成長してきた環境にも感謝している。「高校に入ってから陸上に集中できる環境で、チームメートやコーチ、周りから支えてくれた人のおかげで成長できたと思います。今後もいろんな人に支えてもらうと思うので、それに貢献できるようになりたい。いろんな人を助けていけたらなと思います」
今回のレースで、200m~600mの中間が下がってしまうという課題もみつかったというクレイアーロン。「ひさしぶりのレースだったので気持ちよく終われてよかったです。渡米前のいい刺激になりました」と笑顔を見せる。大学ではビジネスを専攻する予定になっており「勉強ができないとレースにも出られないので、勉強もしっかりしていきたい」という。
新たな環境に向けて「楽しみ」と笑顔を見せる彼の、さらなる成長に期待したい。