関西大学カイザーズQB須田啓太 一歩ずつ進んできたチームの集大成を任された新主将
大学の各校で新チームが始動し、春のシーズンインへ向けた土台づくりの時期にある。一般的にチームを引っ張る存在である新4年生たちは、多かれ少なかれ試行錯誤の日々だろう。関西大学カイザーズは昨秋の関西学生リーグ1部で関西学院大学、立命館大学と並んで6勝1敗の同率優勝。抽選の結果、甲子園ボウルへの道を断たれた。今春から4年生となる学年は2年生で関西2位、3年生で同率優勝を経験。一歩ずつ浮上してきた。集大成の2024年にキャプテンとなったのが、エースQB(クオーターバック)の須田啓太(関大一)だ。
チームの90周年に15年ぶりの日本一を
2023年の年間最優秀選手賞(チャック・ミルズ杯)を受けた須田は3月7日、「関西大学体育振興大島鎌吉スポーツ文化賞」の授与式に出席した。式典後、須田は大きなメダルを胸に「こんな賞があったことも知りませんでした」と正直に打ち明けて苦笑い。「光栄なことでありがたいし、こういう機会に、関大には僕らと同じように一生懸命頑張ってる人がいると分かるだけで刺激になります。今年はチームの90周年ですし、おととし、去年と少しずついい形でこられてるので、今年こそは日本一ですね」。2009年以来の甲子園ボウル出場と制覇を誓った。
この数日前の納会で、須田の新キャプテン就任が発表された。さかのぼって昨年12月16日、新4年生が集まり、キャプテンを決めるミーティングを開いた。そこで須田の名前しか挙がらなかった。「そうなるんちゃうかと薄々気づきつつも、QBといういいところも悪いところもすごく見えやすいポジションの自分が主将になっていいのかという葛藤がありました。でもみんなが選んでくれたんで、腹をくくってやるしかないと決めました」。その翌日、関学が法政大学に大勝した甲子園ボウルの試合後に阪神甲子園球場の真ん中でミルズ杯の表彰を受けた。年が明けると全日本選抜チームの一員として「DREAM JAPAN BOWL 2024」に参加。2月8日から新チームの練習が始まった。
キャプテンとして過ごしたこの1カ月。須田はどんなことを感じているのか。「高校のときもキャプテンやりましたけど、高校と大学とでは重みが違う。この1カ月で改めていろんな人に支えてもらってるなってのを、ほんまにめちゃめちゃ感じてます。まだまだ未熟なチームで、自分の弱さを受け入れられない集団というか、まだまだ成長し続けないといけないレベルなんで、一回去年までのことは忘れて、作り直していかないと。そうしないと、先輩方が築いてくださったものが一瞬で崩壊することになるかもしれない。そのへんは気を引き締めてやらんとあかんなと思ってます」
いまの自分を大事な人に誇れるか
須田はどんなキャプテンになっていこうとしているのか。「ボスじゃなくてリーダーでいたいってのはすごく思ってて。もちろんチームの進む方向は僕が示しますけど、それをちゃんと先頭でやらなあかんなと感じてます。しんどいこと、めんどくさいこと、いっぱいあると思うんですけど、そういうのを率先して最初にやれたらなと。あとは、いまの自分を、自分が大事だと思ってる人たちに誇れるかどうか。それが一つの(判断の)基準って意識してて、これをチームにも広げていきたいです」。1年生のころから須田の話を聞いてきたが、年々「言葉力」が上がっているのに驚かされる。エースQBとしてチーム内での発言が増えるにあたり、いろいろ考え、工夫してきたのだろう。この一年、須田がどんなことを語っていくのかも楽しみだ。
プレーの面では、下級生のころのようにもっと走っていきたいという。「走りながら投げられるようになった分、そこに頼りすぎたところがあって。せっかく自分自身走れるので、その強みをもっと出していかないと、ディフェンスも怖くないだろうなと、去年のシーズンが終わってから強く感じました。そこの課題を克服するには、いまの時期にQBとしてのファンダメンタルの部分を備えておかないとダメですね」
春の関学戦、楽しむことも忘れずに
4月下旬から始まる春のシーズンに向けては「負けないことが大事」と言いきる。「自分たちが厳しい場面にぶつかったときに負けないチームが目標なんで、そこをやりきれるように。負けないことを意識して、全部勝ちたいと思ってます」。もちろん恒例の春の関関戦もある。「春からアメフトファンのみなさんがたくさん来てくださる試合を味わえるのは特別なことだと思ってます。フットボールを楽しむことを忘れずに、しっかり準備して臨みたいです」
1年生のとき、甲子園ボウルの西日本代表決定準決勝で立命に1点差で負け、号泣した。あの日からさまざまな経験を積み、エースでキャプテンとして学生ラストイヤーを迎えた。須田啓太はカイザーズを勝たせる男になれるだろうか。