陸上・駅伝

7カ月間で3本のマラソン挑戦の加世田「濃い経験」給水でアシストも

10kmの給水地点で水を取り逃した鈴木亜由子(中央)に水を渡す加世田梨花(右、代表撮影)

 (10日、名古屋ウィメンズマラソン)

名城大・加世田梨花 喜びも悔しさも味わった最高の仲間との4年間「名城でよかった」

 「最後は足が動かなかったです。すみません。でも、悔いはないです」

 加世田梨花(25)=ダイハツ=はフィニッシュ地点で待っていた山中美和子監督の腕の中で言った。

 「よく頑張った。よく頑張ったよ」

 優しく言葉を返され、涙を我慢できなかった。

 10日の名古屋ウィメンズマラソンで、加世田は2時間22分11秒の4位。パリ五輪代表になるための条件となる2時間18分59秒を切ることはできなかった。

 「今はまだ何も受け止められない感じ。でも、最後まであきらめず、今の力は出し切れたとは思う」

 そう振り返るレースは鈴木亜由子(32)、安藤友香(29)と共に先頭集団についた。

 10キロ過ぎの給水地点では加世田の人柄がにじみ出た。ドリンクを取り損ねた鈴木に、自ら水が入ったペットボトルを手渡した。

 「一緒に頑張りたい、一緒にパリをめざす1人の仲間として頑張ろうという思いで渡しました」

 パリ五輪の切符だけを見据えて足を進めていたが、26キロ付近で先頭の海外選手から離れ、安藤と並走する形になった。この時点で設定記録からは20秒ほど遅れており、「少し先頭のペースが速いと思ってしまい、守りに入ってしまった」。

 その後、33キロ付近で安藤に離され、39キロ手前では鈴木に逆転を許した。

 「目標には届かなかったですけど、本当に濃い経験ができました」

 今季は加世田にとって挑戦だった。約7カ月間で3本のフルマラソンを走った。

 昨年8月の世界選手権ブダペスト大会に出場。約2カ月という短い間隔で同10月のマラソングランドチャンピオンシップ(MGC)を走り、4位に入った。

 「今までにないハードスケジュールの中でも全部走りたいと思ってやってきた。今回も30キロ、35キロからが課題とわかったので、そこを強化していきたい」

 マラソンはまだ5回目。伸びしろは十分にあるはずだ。

(辻隆徳)

=朝日新聞デジタル2024年03月10日掲載

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