大経大・林翔大 阪神に入団した津田淳哉に続く存在として「投げる試合、すべて勝つ」
関西六大学野球春季リーグ戦 第7節1回戦
5月19日@マイネットスタジアム皇子山(滋賀)
大阪経済大 1-0 大阪商業大(延長11回)
今春の関西六大学野球リーグ戦、最終第7節1回戦の大阪商業大学戦。すでに前節で優勝を決めていた王者を相手に、大阪経済大学の林翔大(4年、乙訓)は11イニングを投げ切り、完封勝利を挙げた。無敗だった相手に土をつけた価値ある勝利だったが、投球内容について尋ねると、林の表情は少し曇った。「四球が多かったので、そのあたりはまだまだでした」
許した安打はわずか4本。一方で4四球を与えた。うち二つは0-0の七回に与え、中盤以降はピンチを背負う場面が目についた。11イニングで145球に達した球数は、やはり多かったと振り返る。「渡部(聖弥、4年、広陵)選手らいいバッターには力が入ってしまって……。それでカウントを悪くすることが多かったです」と、反省の言葉しか出てこなかった。
大商大との直接対決を前に優勝が決まり……
その6日前に先発した京都産業大学との3回戦後も、同じように四球に関する反省を口にしていた。「立ち上がりからボールが荒れていたので、修正しようとは思っていたんですけれど、四回までなかなかできなくて……」
ただ、この試合は、2日前の1回戦に10回128球を投げ切っていたため、疲労が抜けきっていなかったのだろう。マウンドでは「上半身に力が入りがちだったので」と、うまく力を抜きながら投げることを心掛けた。自然と体が反っていると感じ、余計な力を落としながら何とか修正しようとしたが「マウンドに立った時のバランスも悪かったですね」と本人。7回107球、無失点で降板した。チームはその後、サヨナラ負けを喫し「(後を受けた)谷口(天城、2年、福知山成美)に申し訳なかったです。自分が投げ切らないといけない試合でした」と唇をかんだ。
試合後、いつも以上に悔しさをにじませたのは、勝ち点を落としただけでなく、この時点で大商大の優勝が決まってしまったからだった。
大商大とは毎シーズン、最終節で対戦している。その勝敗によって優勝が決まるシーズンがほとんどだったが、今春は直接対決の前に決まってしまった。「それに、去年は春も秋も直接対決で負けているので、今年こそ勝とうというつもりでやってきたので。一番悔しかったですね」
高代延博監督に説かれてきた厳しさ
近年の大経大は、優勝争いを繰り広げながら、あと1歩のところで大商大に勝ち切れないシーズンが続いている。一昨年の秋から3季連続で2位だった。
昨年までは阪神タイガースに6巡目で指名された津田淳哉という大黒柱がいて、林は津田に続く存在だった。最上級生となった今年、林は最速150キロの速球を武器とするドラフト候補右腕としても注目を集め、エースとしての責任も大きい。
「自分は1回戦で9回を投げて、3戦目があることも想定し、2戦目の時間は疲れを取るようにしています。成長していけば、プロの道は開けると思ってやっています」
ただ、プロへの道は甘くないという覚悟もある。阪神や中日ドラゴンズなどでコーチを務め、ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)では三塁コーチとして2009年の世界一に貢献した高代延博監督に、その厳しさを説かれてきた。
「自分にはスピードがもっと必要だし、コントロールも大事。そのあたりを『意識しながら投げないといけない』と思いながら、ずっと練習してきました」
だからこそ、制球には人一倍こだわったつもりだった。でも、打者を前にすると「抑えなければならない」という責任感が力みにつながったのかもしれない。改めて自分は未熟だと思い知らされた。「反省すべき点を挙げて、つぶしていかないといけない。ゼロに抑えられるピッチャーになりたいです」と懸命に前を向いた。
四球をゼロにし、要所をギアを上げられる投手に
この春は4勝を挙げた。ただ最後の春季リーグ戦を振り返ると、それまで分厚い壁として立ちはだかった大商大から完封勝利を挙げたことを忘れてしまうほど、自身を戒める言葉しか出てこなかった。
「リーグ戦では、全体的に納得のいくピッチングができませんでした。自分の中では去年より四球は少なくしようと思いながら投げてきましたけれど、そこまで少なく、とはいかなかったです。それでも最後の最後に、ずっと勝てなかった相手に勝てたことは収穫にはなります。そこは秋に向けて自信にしていきたいです。秋は、自分が投げる試合、すべてで勝つつもりで投げます。そのためにはフォアボールはゼロにすること。そして要所でギアを上げられるようにしたいです」
大商大から勝ち点を奪い、チームとしては〝有終の美〟となった春。でも、個人としてはまだまだ物足りない。理想の形を追い求めながら、大学ラストシーズンの秋は、優勝を目指す。その中心に、背番号16がいる。