バレー

日本体育大・折立湖雪 高校時代の相棒に再戦で雪辱、貫いた「1点1点を喜ぶ」バレー

東日本インカレ決勝で躍動した日体大の折立(すべて撮影・井上翔太)

第43回 東日本バレーボール大学選手権大会(女子花巻大会)決勝

6月22日@花巻市総合体育館(岩手)
日本体育大学 3-0 青山学院大学
(25-21.25-22.25-22)

2セットを連取して迎えた第3セット、24-22。あと1点で日本体育大学の優勝が決まる。セッターの岩本沙希(2年、就実)は、左サイドの折立湖雪(3年、東九州龍谷)にボールを託した。思い切りたたきつけたボールは相手コートのど真ん中に落ち、次の瞬間、歓喜の輪ができた。

岩手県花巻市で開催された第43回東日本バレーボール大学選手権大会(東日本インカレ)の女子大会で、日本体育大が連覇を達成。試合直後「実感がないです」と率直な感想を口にした折立は、「自分のバレー人生の中で、大舞台での優勝を決める一打を打てたことはありませんでした。今回はチャンスが回ってきたと思って、打ち切ることだけを考えていました」と〝最後の1点〟を振り返った。

セッター岩本(左)とのコンビネーションもさえた

自主練で増やした「スパイクの引き出し」

高校時代はパワフルなスパイクを武器にするアウトサイドヒッターだったが、大学では周囲のレベルの高さを肌で感じ、「ワンパターンでは通用しない」と総合力を向上させた。

「クロスが得意なんですけど、大学ではずっと得意なコースに打っていても相手のリベロに拾われてしまう。『スパイクの引き出しを増やす』ことをテーマにたくさん自主練をしてきました」

その言葉通り、決勝では要所でキレのあるクロススパイクを決めた一方、フェイント攻撃やバックアタック、ブロックポイントなどあらゆる形で得点を生み出した。「必ずBパス以上は返す。できて当たり前にする」との思いで磨いてきたレシーブでも貢献。第1セットから第3セットまで終始、攻守で存在感を光らせた。

決勝でバックアタックを打ち込む折立

尊敬する前主将から受け継いだ「笑顔」絶やさぬプレー

大学1、2年時はピンチサーバーとしての出場が主で、3年生になった今年からスタメンに定着した。昨年の東日本インカレは、大会前に教育実習がありフィジカル面に不安のあった前主将・石倉沙姫(現・デンソーエアリービーズ)に代わって1回戦から準決勝までスタメン出場。しかし、優勝のかかる決勝は石倉にスタメンの座を譲った。

決勝は石倉が中心となって戦い、筑波大学とフルセットまでもつれた激闘を制し頂点に立った。折立は「自分が(スタメンに)入って優勝できればベストだったんですけど、自分が入って勝てる確証は持てなかった。個人的には悔しい思いをした優勝でした」と1年前を回顧する。今大会は「自分が入った上で、絶対に勝ちたい」と意気込んで臨んだ。

日体大・石倉沙姫 土壇場からチームを救った主将、足がつりベンチで迎えた歓喜の瞬間

同じポジションの石倉からは技術面はもちろん、プレー中の「振る舞い方」も教わった。「(昨年の)4年生が1人で大変だったはずなのに、大変さを見せずに常に笑顔でコートに立っていた。ライバルという関係ではありましたけど、『この人のために』と思わせてくれる選手で、尊敬していました」

試合中は笑顔でプレーしたり、仲間に声をかけたりする場面が目立った

昨年は東日本インカレの決勝と秋季リーグの東海大学戦で、足をつった石倉に代わって出場する時間帯があった。先輩の思いを背負って戦った経験は今に生きており、石倉同様、笑顔を絶やさずにプレーすることを心がけている。「周りの人を巻き込んで、1点1点を喜ぶ」がモットー。自身が得点を決めたときだけでなく、チームメートの好プレーが飛び出した際も全力で喜ぶ姿が印象的だ。チームの雰囲気をもり立てる姿勢を今大会も貫いた。

決勝の舞台で「めちゃくちゃ意識」した再戦が実現

決勝にはもう一つ、特別な感情を抱いて臨んだ。対戦相手である青山学院大学のコートに、旧友の佐村真唯(3年、東九州龍谷)がいたのだ。「めちゃくちゃ意識しました」。2人は中学3年時にJOCジュニアオリンピックカップで福岡県選抜のダブルエースとして活躍。東九州龍谷でも二枚看板を張り、1年時は全日本バレーボール高校選手権大会(春高バレー)優勝に貢献した。

決勝の前日、対戦が決まった直後に折立がLINEで「よろしく」と送ると、佐村から「こちらこそ、相棒」と返信が来た。

青山学院大の佐村は相棒であり、ライバルでもある

高校時代はプレースタイルが似通ってしまうほど多くの時間を共有し、ともに汗を流したまさに〝相棒〟。大学で別々になってからも頻繁に連絡を取り合っているといい、折立は「対戦するときはバチバチですけど、今でも仲が良いです」と話す。そして佐村に対し「周りの選手を引っ張れる選手で、人に信頼される人間性がある。現に今大会も青学を決勝まで連れてきた」と敬意を表す。

今春のリーグ戦で青山学院大と対戦した際は佐村が得点を量産した一方、折立は「『負けたくない』と力が入りすぎて、何もできなかった」。チームもフルセットの末、敗戦。今大会の決勝でも佐村のスパイクが脅威になった。折立は「絶対に青学に1点を取らせたくない場面で(佐村が)取ってくるので、イライラしますね」と笑いつつ、ライバル心を燃やして対峙(たいじ)。巡ってきた再戦の舞台でリーグ戦の雪辱を果たした。2人の切磋琢磨(せっさたくま)はこれからも続く。

スターティングメンバーとして名前を呼ばれると、主将の中野とハイタッチ

「守備でも攻撃でも」引っ張れる選手を目指して

日本体育大の次なる目標は秋季リーグ戦制覇。またその先には、昨年は3回戦敗退に終わった全日本バレーボール大学女子選手権大会(全日本インカレ)で日本一になるという目標がある。

春季リーグ戦は石倉が抜けた後のポジションに入ったことで、「自分がやらないと」とプレッシャーを感じすぎたという折立。「今大会の結果で満足せずに、今回できなかったことをリーグ戦でできるよう練習する。オールラウンダーとして活躍して、守備でも攻撃でももっと引っ張っていけるような選手になりたい」。殻を破り、1年前と一味違う優勝を成し遂げた経験を、秋につなげる。

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