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特集:2024年 大学球界のドラフト候補たち

立正大学・飯山志夢 東都2部から大学ジャパンへ選出 尊敬する父を追いプロめざす

俊足を飛ばし三塁をもぎ取る。足は大きなアピールポイントだ(父の写真を除きすべて撮影・西田哲)

実力伯仲の東都リーグは、1部だけではなく2部校にも能力の高い選手が多く、今春のリーグ戦にもNPBのスカウトが多数、視察に訪れた。俊足・好打・強肩・好守の外野手として注目される立正大学の飯山志夢(もとむ、4年、中央学院)も、複数球団がリストアップするドラフト候補の1人だ。元プロ野球選手である父の背中を追いかけ、秋のドラフトでのプロ入りを目指す。

日本ハムで現役20年「父のような選手に」

物心つく前から、プロの世界で活躍する父の姿を見続けてきた。「お父さんみたいなプロ野球選手になりたい」。その思いから自身もボールとグラブを手にし、野球を始めた。

東都リーグの大事な入れ替え戦の初戦。先頭打者として初球を中前にはじき返した

飯山の父・裕志さんは、鹿児島・れいめい高から1997年ドラフト4位で日本ハムファイターズに入団。NPBで20年間プレーし、通算911試合に出場。高い守備能力を誇る遊撃手として活躍、『守備職人』などと称され、いぶし銀的プレーでファンに愛された。5度のリーグ優勝、2度の日本シリーズ優勝に貢献し、2017年シーズンを最後に引退。内野守備コーチなどを経て、今年からスカウトを務めている。

飯山にとって裕志さんは、尊敬する父であり、憧れの存在であり、目標でもある。

「野球を始めた頃、父から『一球一球に集中しなさい』と言われたのを覚えていて、今も強く意識しています。父はすごく真面目で、黙々と、常に野球に集中している人でした。ずっと父を見てやってきました。自分も父みたいな選手になりたいです」と飯山は言葉に力を込める。

飯山の父・裕志さん。2012年の日本シリーズ第4戦でサヨナラ二塁打を放った(撮影・伊藤進之介)

東都2部で首位打者・ベストナイン

プロの世界で活躍する父に憧れ、飯山も小学校1年生から学童野球・金町ジャイアンツに入部した。父と同じショートを希望したが、肩の強さを買われてキャッチャーを任された。中学時代は荒川尾久ボーイズでショートを守った。中央学院高では2年の春までショートを守ったが、ここでも肩の強さを買われて2年の夏からは外野へコンバート。以降は外野手としてプレーしている。

進塁を阻むため素早く内野へ返球

高校からプロ入りしたいという気持ちも強かったが、高校の指導者や両親と話し合いを重ねた結果、4年後のプロ入りを目指し東都リーグの強豪・立正大学への進学を決めた。

「父には『プロはまだまだレベルが届かないところだから大学進学を勧めるよ』と言われたんです。最初は納得いかなかったんですけど、立正大学で力をつけることができたので、今ではよかったかなと思っています」

大学では1年春からリーグ戦デビューを果たしたが、チームはそのシーズン、最下位に沈み、入れ替え戦にも敗れ2部降格を喫した。1年秋以降はチームの中心選手として活躍し、3年春には打率.365をマーク、2部首位打者とベストナインを獲得。今春も打率.327(リーグ8位)の成績を残し、2度目の2部ベストナインを受賞した。

センター前ヒットに素早くチャージする

走攻守をアピール、大学ジャパンに初選出

6月22日~24日、バッティングパレス相石スタジアムひらつかで侍ジャパン大学日本代表選考合宿が行われた。飯山がこの選考合宿に参加するのは昨年に続いて2度目。昨年は残念ながら大学日本代表には選ばれなかった。

合宿初日に行われた紅白戦2試合では6度打席に立ち、5打数1安打1四球3盗塁。初戦の第2打席では帝京大学の左腕・栄龍騰(さかえ・りゅうと、4年、津田学園)から中前安打を放つと、二盗、三盗を成功させ、走力をアピールした。

高く上がったフライがポトリと落ちる間に、俊足を飛ばして二塁を陥れた

「ベンチにいるときから、相手投手のことを観察するようにしています。あのときは、観察していた中で相手投手のクセが分かったので、思い切ってスタートを切りました」と胸を張る。今春のリーグ戦でも7盗塁を成功させている。観察力の高さも飯山の長所の一つだ。

この日は、12年から21年までファイターズを率い、23年WBCで侍ジャパンを世界一に導いた栗山英樹氏(現・北海道日本ハムファイターズチーフ・ベースボール・オフィサー)も視察に訪れていた。栗山氏も「長く一緒にやってきたユウジの息子が素晴らしいものを見せてくれた」と飯山の活躍を喜んだ。

裕志さんもスタンドから見守る中、飯山は走・攻・守に持ち味を十分に発揮。侍ジャパン大学日本代表の一員に選出され、7月6日~7月9日のプラハベースボールウィーク(チェコ)、7月12日~19日のハーレムベースボールウィーク(オランダ)へ出場することになった。

「与えられた役割で最大限できるプレーを出したい。チームを勝利に導ける存在になりたいです」と飯山は国際試合への意気込みを語った。

スキあらば次の塁を狙う。出塁すれば大きくリードを取る

父と同じ背番号4を背負い、世界の舞台へ

父の背中を追い続け、大学日本代表にまで成長を遂げた。その飯山の背中を、3人の弟が追いかける。双子の弟・成夢(なるむ)、大夢(ひろむ)は現在高校3年生。成夢は千葉・中央学院の捕手として今春センバツに出場し4強進出を果たした。大夢は東東京・修徳の投手として甲子園出場を目指す。さらには小学校2年の弟・志汰(ここた)も学童野球チームで左打ちの捕手として白球を追いかけている。「弟たちの存在も自分にとっていい刺激になっています。自分は幸せな環境でできていると思います」と飯山は笑顔で話す。

立正大学での背番号は4。大学日本代表での背番号も4に決まった。裕志さんの現役時代の背番号も4番だった。父と同じ背番号4を背負い、最高峰の世界を目指す。

父・裕志さんと同じ背番号「4」を背負い、疾走する

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