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特集:第73回全日本大学野球選手権

青山学院大学・中田達也 首位打者獲得、全4試合で打点を挙げた恐怖の8番打者

決勝で同点二塁打を放ち、派手にガッツポーズ。ムードメーカーとして欠かせない存在だ(すべて撮影・西田哲)

第73回全日本大学野球選手権決勝は、青山学院大学が早稲田大学を2-1で破り、2年連続6回目の優勝を果たした。8番・レフトで全4試合にフル出場した中田達也(3年、星稜)が、15打数7安打、打率.467で首位打者を獲得。決勝でも同点の適時二塁打を放った。西川史礁(4年、龍谷大平安)、佐々木泰(4年、県岐阜商)らが中軸に並ぶ強力打線の中、恐怖の8番打者が全4試合で打点を挙げ、連覇に大きく貢献した。

決勝では殊勲の同点打

表彰式後、チームメートから胴上げされ、ひときわ高く宙を舞った

表彰式後、チームメートから胴上げされ、177cm、80kgの身体が3度宙を舞った。「すごく高く上がったのでびっくり。ジェットコースターに乗ってるみたいでした」と中田は満面の笑みを見せた。

早稲田大との決勝、1点ビハインドの五回1死三塁のチャンス。「最低でも犠牲フライで1点取りたい。絶対に外野まで飛ばす」という思いを持って打席に入った。1ボールからの2球目、128キロの変化球をとらえると、打球はライトの頭を越え、右翼フェンス直撃の同点二塁打に。

「変化球が抜けて高めに浮いてきたので、上から潰しにいった感じです。ライトに捕られるかと思ったんですけど、意外に伸びてくれてよかったです」と中田は同点打の場面を振り返る。続く山本英錬(4年、今治西)のショートゴロの間に三塁へ進み、2死三塁から藤原夏暉(3年、大阪桐蔭)の中前打で中田は勝ち越しのホームを踏んだ。

福井工業大学との初戦は初回の右前適時打を含む2安打1打点。中京大学との準々決勝では八回の適時内野安打を含む3安打1打点。天理大学との準決勝では七回に右前打、九回には1死満塁から放ったセカンドゴロが相手のフィルダースチョイスを誘い1打点。早稲田大学との決勝では五回に同点に追いつく右越え適時二塁打。計15打数7安打で打率.467。全試合で打点を挙げる活躍だった。

四球となり一塁に歩く際、ベンチと身ぶりで細かく確認

春のリーグ戦では打率最下位

春のリーグ戦では全12試合にスタメン出場したが、規定打席到達者36人中最下位の打率.119に終わった。フルスイングが中田の持ち味だが、打率1割台と苦しんだことから、リーグ戦後に意識を変えた。フルスイングを封印、バットを拳半分ほど短く持ち、コンパクトに、ミート率を上げることを強く意識して打撃練習に取り組んだ。その取り組みが全日本大学選手権での好成績につながった。

練習でも試合でも率先して声を出してチームの雰囲気を盛り上げ、ムードメーカーとしてもチームに欠かせない存在だ。佐々木泰主将も「自分と同じように、中田もリーグ戦で苦しんでいた。全日本では中田が打ったことでベンチがすごく盛り上がった。主将としても心強いです」と中田の存在を認める。

2年生だった昨春、リーグ戦デビューを果たした。力強いバッティングに安藤寧則監督も期待を寄せていたが、中島大輔(現・東北楽天ゴールデンイーグルス)、中野波来(現・ホンダ鈴鹿)、西川ら層の厚い外野陣の中、レギュラーを取り切れなかった。「青学は守備を重視するチーム。自分は打撃は得意だったので、冬の練習と春のキャンプでは守備範囲を広げること、送球の安定感などをテーマに守備練習に力を入れました」と守備力アップに取り組み、今春レギュラーをつかんだ。

青山学院大・佐々木泰 前の世代が唯一やり残した大学四冠に向け、「巻き込む主将」に
青山学院大学・中島大輔 野球人生で初の主将、「自分らしさ」貫き昨秋のリベンジ狙う
青学大・西川史礁 兄の背を追って輝いた長距離砲、大学ジャパンの4番へと成長
サードフライのバックアップに入る中田。守備力アップに重点的に取り組んでいる

高3夏の悔しさがあるから今がある

星稜高時代は1年の夏、2学年先輩の奥川恭伸(現・東京ヤクルトスワローズ)、山瀬慎之助(現・読売ジャイアンツ)らを擁したチームが夏の甲子園で準優勝を果たした。先輩たちの活躍をアルプススタンドから応援し、「自分もここでプレーし、先輩たちが果たしえなかった全国制覇を達成したい」との思いを強くした。

1年秋からレギュラーをつかみ、5番・レフトで秋の石川大会優勝、北信越大会優勝に貢献。明治神宮大会にも出場し、翌春にはセンバツ出場校に選ばれた。しかし、コロナ禍の影響で大会は中止に。夏の甲子園も中止となった。2年の秋は石川大会を制したが、北信越大会4強に終わり、翌春のセンバツ出場を逃す。最後のチャンスとなった3年の夏は石川大会8強まで進んだが、チーム内にコロナ感染者が出たため、準々決勝を出場辞退。目標にしていた『日本一』への挑戦機会を、コロナ禍に3度奪われた。卒業後は青山学院大学へ進み、高校時代果たしえなかった『日本一』の座を、ついに勝ち取った。

「高3夏の悔しさがあったからこそ今があると自分は思っています。星稜の同級生はみんな今、いろんなところで活躍しているんです」

決勝は九回先頭打者だったが、三振に倒れ悔しそうな表情を見せる

星稜の同期と刺激し合いレベルアップ

「大学へ進んでも、また頑張ろう」

そう誓い合って同期はそれぞれの道へ歩みを進めた。日本大学へ進んだ内野手・谷端将伍(3年)、駒澤大学へ進んだ外野手・出村夢太(3年)らとは同じ東都1部リーグで顔を合わせるようになった。中でも最も刺激になっているのは、今春のリーグ戦で首位打者とベストナインを獲得した谷端の存在だ。

「星稜の同期は仲がよくて、谷端とはリーグ戦のあと一緒に食事に行ってバッティングのことなどをいろいろ聞けて刺激になりました。谷端に負けないようにと思って頑張って、今回は自分も首位打者を取りました。これで谷端に並ぶことが……いやいや、まだ並んでいないですね(苦笑)。秋、勝負できるように頑張りたいです」とライバルとの勝負に燃える。

目標にしている選手は大学の先輩である吉田正尚(現・レッドソックス)だ。「フルスイングから、しっかりとらえていくスタイルがすごいと思います。自分も吉田さんのような打者を目指していきたい。秋は自分の持ち味であるフルスイングをしつつ、コンタクト率を上げられるよう、夏の練習に取り組みます」。すでに視線は秋に向けている。

表彰式で、笑顔で首位打者賞を受け取る中田

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