トップ通過の関西大、「DATOKAN」で伊勢路へ “亀田さん頼り”から卒業し成長
第56回全日本大学駅伝対校選手権大会 関西地区選考会
6月23日@ヤンマーフィールド長居(大阪)
1位 関西大学 4時間09分06秒88
2位 京都産業大学 4時間09分08秒47
3位 大阪経済大学 4時間10分30秒08
4位 立命館大学 4時間11分17秒20
----------ここまで本戦出場------------
5位 関西学院大学 4時間11分23秒04
6位 龍谷大学 4時間19分24秒03
7位 同志社大学 4時間21分49秒73
8位 びわこ学院大学 4時間23分41秒80
9位 摂南大学 4時間25分40秒66
10位 神戸大学 4時間28分56秒33
11位 大阪大学 4時間29分27秒96
12位 佛教大学 4時間31分20秒52
6月23日に開催された第56回全日本大学駅伝の関西地区選考会で、関西大学が2大会連続の本戦出場を決めた。絶対的エースだった亀田仁一路(現・旭化成)に引っ張られて力をつけた中間層が成長を重ね、選手層が厚くなった。本戦では「打倒関東(DATOKAN)」をスローガンに、伊勢路に乗り込む。
2組で井手蒼人・大槻涼人・平野圭人がトップ3独占
2大会連続14回目の本戦出場を決めた関大。昨シーズン、チームを牽引(けんいん)してきたのが、10000mで関西学生記録の28分25秒80の自己ベストを持ち、2022年日本インカレ男子10000mで日本人最高位の4位に入るなど、“関西の雄”として活躍した亀田だった。
亀田が卒業した今シーズン。絶対的エースが抜けた穴をどう埋めるのか。
大会前、そんな心配が頭をかすめていたが、杞憂(きゆう)だった。チームは見事に走りで応えてみせた。
小雨の中で1組がスタート。関大の嶋田匠海(3年、東海大付属大阪仰星)は組3着に入ったものの、「31分半以上かかってしまった。もう少し余裕を持ったタイムで後半の組の選手を安心させたかった」と、悔しさをにじませた。
チームに流れを引き寄せたのは2組。井手蒼人(東海大付属大阪仰星)、大槻涼人(関大北陽)、平野圭人(尼崎稲園)の2年生トリオだ。
後半に入り、京都産業大学の武内里賢(3年、京都外大西)と竹村明人 (1年、比叡山)が引っ張る先頭集団の中で、3人は仕掛けるタイミングをはかっていた。
残り2000mで、3人はそろって集団から飛び出した。「大経大さんが先に行ってくれ、みたいな感じの合図を出したんで、もうこれはバッと行くしかないと思った」と井手。大槻がリードする形で集団を引き離した。残り600mで井手が逆転し、2着に大槻、3着に平野が入り、関大がトップ3を独占した。
ダブルピースでゴールした井手は「作戦どおり」とにやり。5000mの持ちタイムは15分台だが本番で強さを発揮し、「今日の走りは103点です」と満足げだった。
大槻は「(坂東壮琉)主将からは『2組がキーマン』と言われていて、ここは外すわけにはいかないと思っていた。レース前から1、2、3着を2年生でとろうと言っていて、ラスト2kmから出たけど、練習どおり(最後は)井手に抜かされました」と笑いを誘った。平野も「3、4組にいい流れをつくれるレースになったと思います」と続けた。
2組終了時点で関大がトップに躍り出た。
エース谷村恒晟が組3着と健闘、前半の貯金も生かす
雨が強くなった3組はスローペースでスタートした。各校が牽制(けんせい)し合い、なかなかタイムが上がらない。5000mの通過タイムは2組よりも約30秒遅い16分9秒。終盤まで集団走が続いた。
残り1000mでようやく、大阪経済大学の岩坂蓮太(1年、報徳学園)と関西学院大学の大井廉(1年、報徳学園)がラストスパート。関大の坂本亘生(4年、滝川)は組4着でゴールし、2組のいい流れを維持した。「前半からスローなレース展開で落ち着いていこうと心に決めていたので、レース後半まで余裕を持って走れた。残り1500mできつくなってしまったが、ラストはしっかり切り替えることができました」
組6着に入った岡村和真(2年、東播磨)は、2組の3人と同期で切磋琢磨(せっさたくま)してきた。「同じ学年の3人が勝ってくれて励みになりました。僕も頑張らないといけないという気持ちになりました」と、悪天候の中を走り切った。
実力者がそろう4組は、チームのエース谷村恒晟(3年、愛知)、秋山翔太朗 (3年、東海大付属大阪仰星)、芝秀介 (3年、関大北陽)が出走した。
土砂降りの雨の中、10000m28分45秒04のタイムを持つ京産大の小嶋郁依斗(かいと、4年、滋賀学園)が後半に入って抜け出した。谷村は一人旅を続ける小嶋を追わず、後続の集団で自分のペースを保った。ラストスパートをかけ、組3着の30分18秒04でフィニッシュした。
「天候がかなり荒れると試合前にわかっていたが、自分はこういう展開は得意なので、最後までためてラストで出し切れば上位に食い込めるとわかっていた。プランどおりの走りができてよかったです」
秋山が組11着、芝も組17着に入り、上位8人の合計タイムは4時間09分06秒88。3組がタイムを稼ぎにくかった分、関大は前半1、2組の貯金が生きた。2位の京産大に1秒59差で競り勝ち、全体トップで伊勢路への切符を手にした。
今回、出走がかなわなかった長距離パート長の坂東壮琉(4年、岸和田)は、「世界一の幸せ者です」と満面の笑み。「半年前からキャプテンをさせていただいて、毎回のミーティングで、この予選会で1位通過しようと言ってきたんですけど、1カ月前にその気合が少し空回りしてしまった部分もあって。今回は故障して出走できなかったんですけど、チームに対して働きかけてきたことには自信がありました」と、振り返った。
「一人ひとりがエースになる」と意識
昨年の選考会では全体3位だった。今年はトップ通過を果たし、チームの成長を見せた。
昨シーズンは谷村、坂東、坂本が中心となって中間層を引っ張り、亀田を入れて大人数で練習することでチームの底上げを図った。亀田自身もその3人に対し、「僕が卒業した後もチームを任せられる」と、自信を持っていた。
今年4月の関西ディスタンスチャレンジ5000mで谷村が13分56秒12をマークし、チームの意識はさらに高まった。
岡村は、「亀田さんが抜けた分、全員が『エースがいない』という自覚を持ちながらやってきた。谷村さんが13分台を出したのがきっかけになって、『一人ひとりがエースになる』という意識を持てたから強くなれた。亀田さんに頼っているチームから成長できた」と語る。
絶対的エースが後輩たちに託した思いは確かに引き継がれていた。
坂東は、「関西1位というタイトルを取ったので、次は関東に挑戦していくことを目標に掲げたいと思います」と力強い。
「打倒関東」、略して「DATOKAN」。チームのSNSではハッシュタグ「#DATOKAN」をつけて盛り上げている。「DATOKANを実現させられるように、この夏もう1回しっかり走り込んで、秋の駅伝シーズンで暴れ回りたいと思います」
選手層が厚くなった関大。関西地区トップ通過の看板をひっさげ、伊勢路に乗り込む。